異世界転生?いや面倒だから異世界の方がこっちに来い

川崎俊介

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異世界帰りの傭兵

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 そんなことを言っていると、巨大な影が行く手を阻んだ。見上げると、全長50mはあろうかというドラゴンであった。

「チッ、またしても邪魔が入ったわね」

そう言って春香は車を止める。

「私がどうにかします」

そう言ってエラールは車の天井をすり抜け、ドラゴンのもとへと羽ばたく。ドラゴンの方は今まさに、進たちに向けて炎を吐こうとしているところだった。

「天上魔法【精神操作】」

エラールがそう唱えると、黄金色の触手が現れ、ドラゴンの頭を貫いた。だがドラゴンにダメージはないようだ。
一体何をしたんだ?

すると、ドラゴンは炎を吐くのを突然止め、進たちの車の上空を旋回し始めた。

「これは……」

「私たちに懐いているんですよ。そうなるように精神操作しました」

「そ、そんなことまでできるのか」

「はい、天使ですから」

そうして、上空にドラゴンを従え、一行は先を急いだ。道中モンスターは何度も現れたが、ドラゴンに恐れをなしてか、襲っては来なかった。

ところが、巨大な岩が行く手を阻んだ。辺りを見回してみると、岩に潰された家屋が散見された。

「どうやら異世界の岩山がここに召喚されてしまったみたいですね」

 エラールはそう言う。

「そうね。岩の形状からしておそらく、オルティアスのレケスト地方のものね」

 春香がそう言う。

「なっ、あなた、異世界オルティアスについて詳しいのですか?」

 どうやら進が召喚してしまった異世界はオルティアスというらしい。

「詳しいも何も、私はオルティアスで5年間冒険者として研鑽を積んできたのよ」

 詳しく話を聞いてみると、春香はどうやら18歳の頃から傭兵で、20歳の時に異世界総合商社AWF社(Another World Frontier)に傭兵として入社。

異世界オルティアスの市場調査のため派遣され、冒険者として活動していたらしい。

あの魔法やら気練やらはその時身に着けたそうだ。二年で精鋭軍人の仲間入りを果たし、異世界に行ってからは一年で魔術学院を卒業したらしい。

つまり相当優秀だということだ。通りであんなめちゃくちゃな強さを発揮できるわけだ。

「くそ、車は使えないか」

春香はそう言うと、素早く助手席のスクリーンケースを手に取り、筒状に巻かれたカーペットのようなものを取り出した。

「な、何だそれ」

「魔法の絨毯よ。とりあえずはこれで移動するわ」
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