消えない記憶は、心に刺さった棘のようで

糖愛ネム太郎

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僕が、はじめて涙を流す君を見たのは、君が最も大切にした音をなくしたときだったね。
聞こえなくなったそれを君は体をうずめて泣きながら求めていたね。
ただただ、虚しさにあえぐ君の背をなでることしかできなかった。役立たずの僕。
君が心無い言葉に晒され、身を削っていた時。
僕は、息苦しさから解放されたくて逃げ出すことしかできなかった。
僕がやっと向き合う勇気を持てたとき、君はすでに限界だったね。
一人で頑張っていてくれた時、気づいていれば。弱虫の僕の心は、助けを求める君の手に気づかず輝きを失った瞳に気づかなかったね。
どうしたらよかったかのかな、幼子のように二人で泣けばよかったのかな。君に寄り添っていたらよかったのかな。
そうしていたら、今も花のように笑う。僕の最愛は、隣に居たのだろうか。
僕の愛した最愛。小さなつぼみが大輪の花を咲かせるまで、ずっと隣で見てきた。
そして人知れず枯れた君を僕は無視した。
僕が抱えた虚無感も後悔も、君はきっともっと感じていたのだろう。
僕にできたことは、なんだったのかな。
君と一緒に乗り越えていたなら、君は、甘い香りの優しい君は、まだ満開の花のように微笑んでくれたんのだろうか
今日も虚しい心に問いかける。
君に心無い言葉をかけた人は、親切だといった、心配だったからと、それは時に誰かを傷つける凶器だと知らなかったと言った。
僕が言えたことではないことは、よくわかっている。でも悔しくて、僕にはもう何もない。
僕の言葉は、君にとって鋭利な刃物で、底なし沼に君を押しやり、這い上がる力を奪ったのかな。
君がいればそれでよかった。ほんとだよ。
君さえいれば幸せだった。ほんとだよ。
記憶の中の君に幾つ問おうが、答えなど帰ってこない。
記憶の中の美しい微笑が、あの日の君に変わる度、全て諦めた君の黒い瞳が忘れられないんだ。
輝きをなくした瞳から流れたしずくは、後悔か懺悔か
何時間も何日も何年も考えた。
声を上げずに蹲り涙する君。僕は晴れの日も雨の日も寄り添っていたかった。傘をハンカチをなんだって君にあげたかった。
僕の記憶に残る君は、今もどこかを見つめていて、君への思いは重い碇ののように深い深い深淵へ僕を誘う。
でも君には会えない気がするんだ。ほんとだよ。
だって君はあの遠い遠い深淵の青の彼方へ羽ばたいたのだから。
君のために僕は沈む。僕の愛は最愛にとってきっと幸福ではないから。
君が幸福に出会うために、僕は君を探さない。
それが、僕にできる最後の.....。
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