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第65話 嵐が遮った宿命の一戦
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「6–6、7ポイント先取のタイブレークに入ります!」
審判の宣言が響いた瞬間、会場の空気が変わった。
数千人の観客が一斉に息を止める。
水を打ったような静寂の中、二人の少女がコートの両端に立っている。
片や全身に炎を宿すような眼差しをした三浦紗菜、片や氷のように冷静で崩れない姿勢のエマ・ローレンス。
二人の存在がまるで光と影の対比のように、コートを支配していた。
ベースラインに立つ紗菜は汗ばんだラケットをぎゅっと握り直し、胸の奥で大きく息を吸った。
心臓は爆音のように高鳴っているのに、不思議と恐怖はなかった。
むしろ、待ちきれない。
こんな相手と打ち合えることが嬉しくて仕方がなかった。
(ここからは一点ずつ……絶対に取る! 絶対に譲らない!)
エマがボールを弾ませ、サーブの構えに入る。
彼女の動きには一片の揺らぎもない。
高く上げられたトスが一瞬風に揺れたが、そのまま迷いなく振り抜かれた。
鋭い弾道が紗菜の身体をえぐる。
ラケットを合わせるより早く、ボールはフェンスに突き刺さった。
「ポイント、ローレンス! 1–0!」
観客席から歓声が爆発する。
紗菜は奥歯を食いしばったが、すぐに目を燃やした。
(一本なんてどうってことない! ここからだ!)
次は自分の番だ。
デュースサイドに立ち、トスを上げる瞬間に吹いた風を感じてほんの少し角度を変える。
ボールはワイドに大きく逃げるように曲がり、エマのリターンはネットに突き刺さった。
「ポイント、三浦! 1–1!」
観客が一斉に立ち上がり、拍手と声援が渦を巻く。紗菜は小さく拳を握りしめ、胸を張った。
(風も、私の味方にしてみせる!)
再びトスを上げる。
アドサイド、センターを狙ったサーブが走る。
エマが読み切って強烈なリターンを叩いた瞬間、紗菜は全身をひねり、逆クロスへラケットを振り抜いた。
弾丸のようなボールがサイドライン際に突き刺さる。審判の即座のコール、「イン!」が響き渡り、観客席は割れんばかりの歓声で揺れた。
「ポイント、三浦! 2–1!」
「やった!」
「逆転だ!」
という声援が会場に飛び交う。
紗菜の胸は熱く燃えていた。
これが戦い。
これが自分が望んでいた舞台。
たとえどんな強敵でも、自分は退かない。
だが、エマもただでは終わらない。
冷徹な視線をこちらに送り、テンポをさらに速めてくる。次のラリーは激烈だった。
ボールが左右に走り、砂を巻き上げる。
紗菜は全身を投げ出すように食らいつくが、一瞬の隙を突かれる。
浅く浮いたボールに、エマはためらいなく飛び込み、スマッシュを突き刺した。
「ポイント、ローレンス! 2–2!」
観客がどよめき、歓声とため息が入り混じる。
誰もが立ち上がったまま、座る余裕すらない。
まるで二人のために世界が縮まったような空気が、会場全体を包み込んでいた。
紗菜は肩で息をしながらも、唇に笑みを浮かべた。
(やっぱり強い……! でも、それでいい! これがライバル。これが――本当の勝負!)
その時、遠くから低い雷鳴がごろりと響いた。
観客がざわつき、誰かが空を見上げる。
暗い雲がゆっくりと広がり始め、コートに吹き込む風は先ほどよりも冷たく強い。
それでもコートに立つ二人は微動だにしなかった。
炎と氷――二つの光がただまっすぐにぶつかり合うために、ラケットを握りしめていた。
タイブレークはさらに激しさを増していた。
次のポイント、紗菜は全身を投げ出すように拾い続け、信じられない粘りから逆クロスにカウンターを叩き込んだ。
歓声が爆発し、スコアは3–2。
観客席からは
「まだ走るのか!」
「すごすぎる!」
と悲鳴にも似た声が飛ぶ。
だがエマは微動だにしない。
返球を受け取るとすぐに次の構えに入り、冷たい視線を紗菜に向けた。
直後のラリーではテンポを二段も三段も上げ、怒涛の強打で畳みかけてきた。
紗菜も必死に反応するが、押し切られる形で3–3。
観客席が大きく揺れ、拍手とため息が入り混じった。
次のポイント、紗菜はふらつきながらも足を止めなかった。
風で揺れるボールを読み、全身の力を込めてクロスへ打ち抜く。
サイドラインぎりぎり。誰もが一瞬息を呑んだ。
審判の旗が静かに上がる。
「イン!」
その声が響いた瞬間、観客席が爆発した
。立ち上がる人々、飛び交う歓声、コートが震えるほどの熱気。
スコアは4–3。
紗菜は握った拳を胸元で強く突き上げた。
しかしその時だった。
突風がコートを駆け抜け、ネットのバナーが大きくはためいた。
砂が舞い上がり、観客席から悲鳴が上がる。
さらに重たそうな雲が空一面を覆い始め、光を奪っていった。
照明が点灯し、コートは異様な雰囲気に包まれる。
紗菜は汗で濡れた前髪を払いながら天を仰いだ。
頬に冷たいものが触れる。雨粒だ。
ぽつり、ぽつりとコートに濡れ跡が広がる。
観客席ではあちこちで傘が開かれ、ざわめきが広がっていた。
次のサーブを構えようとした瞬間、雷鳴が腹の底に響いた。
重低音が観客の胸を震わせ、悲鳴混じりの声が飛び交う。
審判がマイクを握り、緊張した声でアナウンスした。
「「残念ですが、
天候悪化のため、試合を中断します」」
会場に一斉に落胆の声が広がる。
けれど、やがて観客の多くが拍手を送った。
安全のための決断、それを理解しているからだ。
紗菜は肩で大きく息をしながら、ぎゅっとラケットを握り直した。
(あと少しだったのに……!
中断なんて……。 ううん!まだ終わってない。
この続きはいつか必ず……!)
視線の先にはエマ。
彼女もまたラケットを下ろし、ほんのわずかに目を細めていた。
その瞳の奥には、次を待ち望む確かな光。
言葉を交わさなくても分かる。
これは途中の中断でしかない、再戦の時は来る……と。
嵐がコートを呑み込む中、二人の姿は強烈に観客の瞳に焼きついた。
炎と氷、真逆の光を持つ二人の戦いは、嵐の向こうで再び始まることを、誰もが疑わなかった。
審判の宣言が響いた瞬間、会場の空気が変わった。
数千人の観客が一斉に息を止める。
水を打ったような静寂の中、二人の少女がコートの両端に立っている。
片や全身に炎を宿すような眼差しをした三浦紗菜、片や氷のように冷静で崩れない姿勢のエマ・ローレンス。
二人の存在がまるで光と影の対比のように、コートを支配していた。
ベースラインに立つ紗菜は汗ばんだラケットをぎゅっと握り直し、胸の奥で大きく息を吸った。
心臓は爆音のように高鳴っているのに、不思議と恐怖はなかった。
むしろ、待ちきれない。
こんな相手と打ち合えることが嬉しくて仕方がなかった。
(ここからは一点ずつ……絶対に取る! 絶対に譲らない!)
エマがボールを弾ませ、サーブの構えに入る。
彼女の動きには一片の揺らぎもない。
高く上げられたトスが一瞬風に揺れたが、そのまま迷いなく振り抜かれた。
鋭い弾道が紗菜の身体をえぐる。
ラケットを合わせるより早く、ボールはフェンスに突き刺さった。
「ポイント、ローレンス! 1–0!」
観客席から歓声が爆発する。
紗菜は奥歯を食いしばったが、すぐに目を燃やした。
(一本なんてどうってことない! ここからだ!)
次は自分の番だ。
デュースサイドに立ち、トスを上げる瞬間に吹いた風を感じてほんの少し角度を変える。
ボールはワイドに大きく逃げるように曲がり、エマのリターンはネットに突き刺さった。
「ポイント、三浦! 1–1!」
観客が一斉に立ち上がり、拍手と声援が渦を巻く。紗菜は小さく拳を握りしめ、胸を張った。
(風も、私の味方にしてみせる!)
再びトスを上げる。
アドサイド、センターを狙ったサーブが走る。
エマが読み切って強烈なリターンを叩いた瞬間、紗菜は全身をひねり、逆クロスへラケットを振り抜いた。
弾丸のようなボールがサイドライン際に突き刺さる。審判の即座のコール、「イン!」が響き渡り、観客席は割れんばかりの歓声で揺れた。
「ポイント、三浦! 2–1!」
「やった!」
「逆転だ!」
という声援が会場に飛び交う。
紗菜の胸は熱く燃えていた。
これが戦い。
これが自分が望んでいた舞台。
たとえどんな強敵でも、自分は退かない。
だが、エマもただでは終わらない。
冷徹な視線をこちらに送り、テンポをさらに速めてくる。次のラリーは激烈だった。
ボールが左右に走り、砂を巻き上げる。
紗菜は全身を投げ出すように食らいつくが、一瞬の隙を突かれる。
浅く浮いたボールに、エマはためらいなく飛び込み、スマッシュを突き刺した。
「ポイント、ローレンス! 2–2!」
観客がどよめき、歓声とため息が入り混じる。
誰もが立ち上がったまま、座る余裕すらない。
まるで二人のために世界が縮まったような空気が、会場全体を包み込んでいた。
紗菜は肩で息をしながらも、唇に笑みを浮かべた。
(やっぱり強い……! でも、それでいい! これがライバル。これが――本当の勝負!)
その時、遠くから低い雷鳴がごろりと響いた。
観客がざわつき、誰かが空を見上げる。
暗い雲がゆっくりと広がり始め、コートに吹き込む風は先ほどよりも冷たく強い。
それでもコートに立つ二人は微動だにしなかった。
炎と氷――二つの光がただまっすぐにぶつかり合うために、ラケットを握りしめていた。
タイブレークはさらに激しさを増していた。
次のポイント、紗菜は全身を投げ出すように拾い続け、信じられない粘りから逆クロスにカウンターを叩き込んだ。
歓声が爆発し、スコアは3–2。
観客席からは
「まだ走るのか!」
「すごすぎる!」
と悲鳴にも似た声が飛ぶ。
だがエマは微動だにしない。
返球を受け取るとすぐに次の構えに入り、冷たい視線を紗菜に向けた。
直後のラリーではテンポを二段も三段も上げ、怒涛の強打で畳みかけてきた。
紗菜も必死に反応するが、押し切られる形で3–3。
観客席が大きく揺れ、拍手とため息が入り混じった。
次のポイント、紗菜はふらつきながらも足を止めなかった。
風で揺れるボールを読み、全身の力を込めてクロスへ打ち抜く。
サイドラインぎりぎり。誰もが一瞬息を呑んだ。
審判の旗が静かに上がる。
「イン!」
その声が響いた瞬間、観客席が爆発した
。立ち上がる人々、飛び交う歓声、コートが震えるほどの熱気。
スコアは4–3。
紗菜は握った拳を胸元で強く突き上げた。
しかしその時だった。
突風がコートを駆け抜け、ネットのバナーが大きくはためいた。
砂が舞い上がり、観客席から悲鳴が上がる。
さらに重たそうな雲が空一面を覆い始め、光を奪っていった。
照明が点灯し、コートは異様な雰囲気に包まれる。
紗菜は汗で濡れた前髪を払いながら天を仰いだ。
頬に冷たいものが触れる。雨粒だ。
ぽつり、ぽつりとコートに濡れ跡が広がる。
観客席ではあちこちで傘が開かれ、ざわめきが広がっていた。
次のサーブを構えようとした瞬間、雷鳴が腹の底に響いた。
重低音が観客の胸を震わせ、悲鳴混じりの声が飛び交う。
審判がマイクを握り、緊張した声でアナウンスした。
「「残念ですが、
天候悪化のため、試合を中断します」」
会場に一斉に落胆の声が広がる。
けれど、やがて観客の多くが拍手を送った。
安全のための決断、それを理解しているからだ。
紗菜は肩で大きく息をしながら、ぎゅっとラケットを握り直した。
(あと少しだったのに……!
中断なんて……。 ううん!まだ終わってない。
この続きはいつか必ず……!)
視線の先にはエマ。
彼女もまたラケットを下ろし、ほんのわずかに目を細めていた。
その瞳の奥には、次を待ち望む確かな光。
言葉を交わさなくても分かる。
これは途中の中断でしかない、再戦の時は来る……と。
嵐がコートを呑み込む中、二人の姿は強烈に観客の瞳に焼きついた。
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