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王家の謎
31. 禁忌の発現 〜リーゼロッテ〜
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全身黒づくめの衣服に身を包み、夕闇の中を城壁に沿って駆ける。生まれて初めての経験に緊張しつつも、何だか変に興奮してしまう。
アンナの誘導で無事に誰にも見つかることなく、辿り着くことができた。
国内外のあらゆる記録を保管している国立書庫。クレマチス以外の書庫に、それも無断で入るなんてことはこれが初めてだ。
「王室に関する棚はあっちです」
息を押し殺し、アンナの手引きで高く聳え立つ本棚の間を抜けて行く。
「これでよし」
先程まで三人で読んでいた文献をすべて棚に戻し終え、アンナはほっと一息ついた。
「後は……姫様が読みたいのは魔力に関するやつですよね」
黙って頷くと、一番奥です、とアンナが静かに駆け出し、私も慌ててそれに続いた。
奥に行くにつれて、古い紙の湿り気を帯びた匂いが鼻につく。手で軽く口元を押さえながら突き進んで行くと、ある一角でアンナが立ち止まった。
「この辺りですね……どうします? 片っ端から見て行きますか? この時間だからもう誰も入ってこないだろうし、ゆっくり探しても大丈夫です」
「そうね、とりあえず魔力に関する記述があれば読んでみるわ」
アンナが見繕ってくれる書物に順番に目を通していく。
(なるほどね……)
何となくだけれど、理解できた。
魔力とは、自然の力を借りて何かを生み出すこと、自然と一体化することと言っても良い。
(天空の人が風の流れを読んで乗るっていうのは、多分そういうことなのね)
強い魔力を持っていると、その自然の作用を自ら生み出すことができる。何もないところで火や水を出したり、風を起こしたりといったように。
「魔力って悪いものじゃないんですね」
「そうね」
何冊か読んでみても、大体似たようなことが書かれていた。自然の力を自分達の生活にうまく取り入れる手段として、魔力はリングエラの人々にとって必要不可欠なものであり、だからこそ、最も魔力が大きく自在に使いこなせる人が王として選ばれる。この天空の楽園を存続させるために。
「理に適った仕組みなわけですね」
ふむふむ、とアンナも見繕ってきた書物をぱらぱらとめくっては頷いている。
ひととおり目を通し終えたところで、積み上げた書物の山の一番下にある、黒い表紙のものが目についた。
(これは……?)
山を崩さないように引っ張り出して、手に取ってみる。
古い書物にしては綺麗すぎるような、黒い皮の表紙。鍵がかけられる作りになっているのに、鍵自体は見当たらず誰でも読めるようになっている。
はて、と不思議に思いながら表紙をめくった時、アンナの小さな叫び声がした。
「姫様!」
瞬間、何者かに口を塞がれ腕を掴まれた。驚きと恐怖がごちゃ混ぜになって、反射的に体が動く。
掴まれた腕を捻り、ほんの一瞬、相手の拘束が緩んだところで思いっきり体当たりし、すぐに距離を取る。
アンナから教わった、私が唯一使える護身術。それが見事に決まり、私を捕まえようとした誰かは本棚に強く頭を打ち付けて、その場に倒れ込んだ。
「姫様、大丈夫ですか?!」
「ええ、アンナの教えのおかげね」
「姫様の背後を取るとは不届き者め。何奴だ」
私を庇うように立ったアンナの背中から、暗がりに突っ伏した何者かに目を凝らした。
「え……貴方……ディルク?」
のっそりと起き上がった人物は、よく見知った長身の男で、私はびっくりしてアンナの肩を強く掴んだ。
「こんなところで何してるの?」
「それは私の台詞です。リーゼロッテ様が何故こちらにおられるのですか。ここは関係者以外立ち入り禁止のはず……」
そう言いながらディルクはアンナの顔を一瞥した。
「なるほど。思った通りかなり優秀な間諜ですが、私の気配に気づかないのはいただけませんね」
「ディルクはもう少し鍛えた方が良いわね。私なんかにやられてちゃ駄目よ」
ディルクは恥じ入るようにうっすら赤くなりながら目を逸らした。こんな可愛い表情もするのか、と感心したのは一瞬のこと、すぐにまた元の真面目な顔に戻る。
「何を調べてるのか知りませんが、もうすぐ見回りの者が来ます」
「やや、それは大変。姫様逃げましょう」
「出口まで案内しましょう。さあ早くこちらへ」
ディルクの言った通り、少し離れたところに警備の者が持っているだろう明かりがうっすらと見えた。それを避けるように、ディルクが抜け道を教えてくれるらしい。
私は咄嗟に黒皮の書物を小脇に隠し持ち、ディルクとアンナの後について行った。
無事に書庫の裏手に広がる中庭に出たところで、私とアンナはふうっと一息ついた。
「ありがとうディルク。助かったわ」
「このような危険な真似は二度としないでいただきたい。リーゼロッテ様と言えども、書庫に無断で侵入したとなれば処罰の対象となり得ます」
「覚えておくわ」
にっこりと微笑めば、ディルクは顔を顰めて盛大な溜息をついた。
「貴方はよりにもよってこんな時に……」
「こんな時って?」
鋭い視線を投げ掛けると、ディルクは諦めたようにぽつりぽつりと話し始めた。
「近いうちに、陛下の退位式が執り行われます。次王の即位式が行われるまで、リングエラの王座は一時的に空席となります」
「え、そんなことが……」
アンナの方を見ると、アンナも驚いて口をあんぐりと大きく開けたまま固まっている。
「リーゼロッテ様でしたらもう、我が国のおおよそのシステムはご存知でしょう。不穏な動きがあるかもしれません。貴方も狙われる立場にいらっしゃいます。充分お気を付けください」
私の返事を聞く前に、ディルクはアンナの方に向き直った。
「決してリーゼロッテ様のおそばを離れぬように、よろしく頼む」
「言われずとも」
二人は一瞬だけ視線を交わし、それからディルクは書庫の方へ戻って行った。
「姫様、我々も誰かに見られないうちに退却です」
「そうね」
夜が深まった頃、アンナとユリウスが自室に下がるのを見届けて、私も寝室に下がった。
ベッド脇のローテーブルには、書庫から持ち帰った黒皮の書物が置いてある。結局アンナにもこの書物のことは話していない。
(まあ良いか。いったん私が読んでから、内容を要約して明日話しましょう)
ベッド脇に座り、ざらりと冷たい手触りのそれを膝の上に置いた。月明かりを頼りに、ページを開く。
書庫の奥にあったにしては紙が白くて新しく、折り目もあまりない。ほとんど誰にも読まれていないみたいだった。
そこに記されていたのは、闇魔術……魔力を増幅させる方法の存在だった。
(どういうこと? 魔力は生まれ持ったもので変えられないんじゃなかったの?)
生まれながらに備わった魔力量を変えることはできない、と一般的には言われている。けれど、ある一定以上の魔力を持つ者であれば、相応の訓練を積むことで闇魔術を習得し、自らの魔力を極限まで増大させることが可能だという。
ただし、その闇魔術を体現するには厳しい訓練の他に、ある代償を支払わなければならない。
生命力、つまりは魔力を得る代わりに寿命が縮まるということ。この闇魔術を会得した者は、もれなく巨大な魔力を手にした後に短命で亡くなっている、と記録されている。
(この闇魔術を使えば、もしかして国王になることも……?)
この闇魔術によってどれくらいの間、魔力を大きくすることができるんだろう。寿命を差し出すことで王座が手に入るなら、と考える人がいないとも限らない。
(途轍もない……禁忌の魔術……)
表紙をめくって最初の頁に『上』と大きく書かれている。これはつまり、今手元にある書物とは別に、下巻が存在するということ。
(下巻の内容はきっと、闇魔術の会得方法ね)
下巻は今どこにあるんだろう。うっかり私のような部外者がこの上巻を読めてしまうくらいだから、とても危険だ。
ディルクが言っていた不穏な動きとは反国王派の勢力のことで間違いない。もしあちら側に、この下巻があるとしたら。
体の震えが止まらない。
夜の静けさに紛れて小さな羽音がした。
やがて窓辺に姿を見せたのは、白いカラスだった。
アンナの誘導で無事に誰にも見つかることなく、辿り着くことができた。
国内外のあらゆる記録を保管している国立書庫。クレマチス以外の書庫に、それも無断で入るなんてことはこれが初めてだ。
「王室に関する棚はあっちです」
息を押し殺し、アンナの手引きで高く聳え立つ本棚の間を抜けて行く。
「これでよし」
先程まで三人で読んでいた文献をすべて棚に戻し終え、アンナはほっと一息ついた。
「後は……姫様が読みたいのは魔力に関するやつですよね」
黙って頷くと、一番奥です、とアンナが静かに駆け出し、私も慌ててそれに続いた。
奥に行くにつれて、古い紙の湿り気を帯びた匂いが鼻につく。手で軽く口元を押さえながら突き進んで行くと、ある一角でアンナが立ち止まった。
「この辺りですね……どうします? 片っ端から見て行きますか? この時間だからもう誰も入ってこないだろうし、ゆっくり探しても大丈夫です」
「そうね、とりあえず魔力に関する記述があれば読んでみるわ」
アンナが見繕ってくれる書物に順番に目を通していく。
(なるほどね……)
何となくだけれど、理解できた。
魔力とは、自然の力を借りて何かを生み出すこと、自然と一体化することと言っても良い。
(天空の人が風の流れを読んで乗るっていうのは、多分そういうことなのね)
強い魔力を持っていると、その自然の作用を自ら生み出すことができる。何もないところで火や水を出したり、風を起こしたりといったように。
「魔力って悪いものじゃないんですね」
「そうね」
何冊か読んでみても、大体似たようなことが書かれていた。自然の力を自分達の生活にうまく取り入れる手段として、魔力はリングエラの人々にとって必要不可欠なものであり、だからこそ、最も魔力が大きく自在に使いこなせる人が王として選ばれる。この天空の楽園を存続させるために。
「理に適った仕組みなわけですね」
ふむふむ、とアンナも見繕ってきた書物をぱらぱらとめくっては頷いている。
ひととおり目を通し終えたところで、積み上げた書物の山の一番下にある、黒い表紙のものが目についた。
(これは……?)
山を崩さないように引っ張り出して、手に取ってみる。
古い書物にしては綺麗すぎるような、黒い皮の表紙。鍵がかけられる作りになっているのに、鍵自体は見当たらず誰でも読めるようになっている。
はて、と不思議に思いながら表紙をめくった時、アンナの小さな叫び声がした。
「姫様!」
瞬間、何者かに口を塞がれ腕を掴まれた。驚きと恐怖がごちゃ混ぜになって、反射的に体が動く。
掴まれた腕を捻り、ほんの一瞬、相手の拘束が緩んだところで思いっきり体当たりし、すぐに距離を取る。
アンナから教わった、私が唯一使える護身術。それが見事に決まり、私を捕まえようとした誰かは本棚に強く頭を打ち付けて、その場に倒れ込んだ。
「姫様、大丈夫ですか?!」
「ええ、アンナの教えのおかげね」
「姫様の背後を取るとは不届き者め。何奴だ」
私を庇うように立ったアンナの背中から、暗がりに突っ伏した何者かに目を凝らした。
「え……貴方……ディルク?」
のっそりと起き上がった人物は、よく見知った長身の男で、私はびっくりしてアンナの肩を強く掴んだ。
「こんなところで何してるの?」
「それは私の台詞です。リーゼロッテ様が何故こちらにおられるのですか。ここは関係者以外立ち入り禁止のはず……」
そう言いながらディルクはアンナの顔を一瞥した。
「なるほど。思った通りかなり優秀な間諜ですが、私の気配に気づかないのはいただけませんね」
「ディルクはもう少し鍛えた方が良いわね。私なんかにやられてちゃ駄目よ」
ディルクは恥じ入るようにうっすら赤くなりながら目を逸らした。こんな可愛い表情もするのか、と感心したのは一瞬のこと、すぐにまた元の真面目な顔に戻る。
「何を調べてるのか知りませんが、もうすぐ見回りの者が来ます」
「やや、それは大変。姫様逃げましょう」
「出口まで案内しましょう。さあ早くこちらへ」
ディルクの言った通り、少し離れたところに警備の者が持っているだろう明かりがうっすらと見えた。それを避けるように、ディルクが抜け道を教えてくれるらしい。
私は咄嗟に黒皮の書物を小脇に隠し持ち、ディルクとアンナの後について行った。
無事に書庫の裏手に広がる中庭に出たところで、私とアンナはふうっと一息ついた。
「ありがとうディルク。助かったわ」
「このような危険な真似は二度としないでいただきたい。リーゼロッテ様と言えども、書庫に無断で侵入したとなれば処罰の対象となり得ます」
「覚えておくわ」
にっこりと微笑めば、ディルクは顔を顰めて盛大な溜息をついた。
「貴方はよりにもよってこんな時に……」
「こんな時って?」
鋭い視線を投げ掛けると、ディルクは諦めたようにぽつりぽつりと話し始めた。
「近いうちに、陛下の退位式が執り行われます。次王の即位式が行われるまで、リングエラの王座は一時的に空席となります」
「え、そんなことが……」
アンナの方を見ると、アンナも驚いて口をあんぐりと大きく開けたまま固まっている。
「リーゼロッテ様でしたらもう、我が国のおおよそのシステムはご存知でしょう。不穏な動きがあるかもしれません。貴方も狙われる立場にいらっしゃいます。充分お気を付けください」
私の返事を聞く前に、ディルクはアンナの方に向き直った。
「決してリーゼロッテ様のおそばを離れぬように、よろしく頼む」
「言われずとも」
二人は一瞬だけ視線を交わし、それからディルクは書庫の方へ戻って行った。
「姫様、我々も誰かに見られないうちに退却です」
「そうね」
夜が深まった頃、アンナとユリウスが自室に下がるのを見届けて、私も寝室に下がった。
ベッド脇のローテーブルには、書庫から持ち帰った黒皮の書物が置いてある。結局アンナにもこの書物のことは話していない。
(まあ良いか。いったん私が読んでから、内容を要約して明日話しましょう)
ベッド脇に座り、ざらりと冷たい手触りのそれを膝の上に置いた。月明かりを頼りに、ページを開く。
書庫の奥にあったにしては紙が白くて新しく、折り目もあまりない。ほとんど誰にも読まれていないみたいだった。
そこに記されていたのは、闇魔術……魔力を増幅させる方法の存在だった。
(どういうこと? 魔力は生まれ持ったもので変えられないんじゃなかったの?)
生まれながらに備わった魔力量を変えることはできない、と一般的には言われている。けれど、ある一定以上の魔力を持つ者であれば、相応の訓練を積むことで闇魔術を習得し、自らの魔力を極限まで増大させることが可能だという。
ただし、その闇魔術を体現するには厳しい訓練の他に、ある代償を支払わなければならない。
生命力、つまりは魔力を得る代わりに寿命が縮まるということ。この闇魔術を会得した者は、もれなく巨大な魔力を手にした後に短命で亡くなっている、と記録されている。
(この闇魔術を使えば、もしかして国王になることも……?)
この闇魔術によってどれくらいの間、魔力を大きくすることができるんだろう。寿命を差し出すことで王座が手に入るなら、と考える人がいないとも限らない。
(途轍もない……禁忌の魔術……)
表紙をめくって最初の頁に『上』と大きく書かれている。これはつまり、今手元にある書物とは別に、下巻が存在するということ。
(下巻の内容はきっと、闇魔術の会得方法ね)
下巻は今どこにあるんだろう。うっかり私のような部外者がこの上巻を読めてしまうくらいだから、とても危険だ。
ディルクが言っていた不穏な動きとは反国王派の勢力のことで間違いない。もしあちら側に、この下巻があるとしたら。
体の震えが止まらない。
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