薮一蔵の体験教室

riktan

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薮 一蔵

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 社会科見学の延長で、こういう仕事ですよって模造紙に書いて終わり。実際にそこに就職するつもりの人ってそんなにいないと思ってた。

 実際にガラスを吹くのは明日のつもりでいたけど、雷打らいだ君がやりたそうだったし危ないこともしなさそうだったからトンボ玉を作ってみることにした。

 雷打らいだくんは驚くくらいセンスが良かった。芸術的なセンスっていうよりガラスの扱いが上手い。

 小さい時から時々挑戦しては「やっぱり俺には無理みたい。カズにいすごい」って笑う従弟いとこよりずっと上手い。
 俺としては植物と会話できてるんじゃないかっていう従弟いとこの方がよっぽど凄いと思うけど。

 って思ってたらその従弟いとこがやって来た。細い割に肩幅はあって、それに合わせたサイズのコートが足の細さを際立たせている。背中にカゴをしょっていて、胴体と左腕で挟むように持っている小さなカゴには里芋とかの野菜と新聞紙で包まれた何か。

 従弟いとこは俺じゃなく先輩に話し掛けた。
「高速で事故です。通行止めで降りてきた車で大渋滞、全然動いてません。帰れませんよ」

 それから両手で持ち直したカゴを俺に見せる。
「解消されるまでの差し入れ。育ち盛りがいるのにカップ麺ってわけにもいかないでしょ」
 新聞紙の中身は豚肉だった。

 今日は職業体験の子が来るって言っておいて良かった。歩いて行ける距離にはスーパーや八百屋どころかお店が一つも無い。

 備蓄と言いつつほぼそれをローテーションさせてるような食生活に中学生を付き合わせるのは良くないもんな。助かった。

「ありがとう」
「じゃあ、風邪ひかないように気を付けてあげてね」
「え、食べて行かないの?」
「公民館で炊き出しするって言うからそっちに持ってく」
 少し体を捻ってカゴを見せる。

「あ、えっと」
 俺も手伝いに行った方がいいかな。料理できないし初対面の人に配るなんてこともできないから邪魔なだけかな。先輩と雷打らいだくんも俺に行かれたら困るよな。

 従弟いとこが掌を胸の高さに上げて、俺が言葉を探すのを止める。
「俺も野菜届けたら帰るから。料理できないし、俺にいきなり車の窓をノックされても絶対開けないでしょ」

 従弟いとこは接してみれば良い人以外の何者でもないんだけど、母さんが言うには『ボクシングが趣味のマッドサイエンティスト』に見えるらしい。

 胸の高さの手をそのままひらひらと振った従弟いとこを引き止めた。
「待って。うちからも何か」
 といっても何を出せばいいのか。炊いてあるご飯のパックを少しストックしているだけでお米すら無い。

 困って先輩を見たらすぐに答えてくれた。
「ラップとアルミホイルは?
 配るのに結構使うんじゃないか?」
 防災用に置いていた2こずつを従弟いとこに渡した。
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