薮一蔵の体験教室

riktan

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春日 秀紀

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 あれから一週間。雪矢ゆきやくんからの電話はない。これも作戦で楽しんでるんじゃないかってくらい俺はビクビクしながら過ごしてる。

 今日はやぶさんの家と介護施設に訪問美容。

 やぶさんはガラス工芸家で、パラメータポイントのほとんどを美術センスに割り振っちゃったんだなって人。大きな賞を取った時にスタイリストをしてから気に入ってもらってる。
 街に出るのが苦手な人で、偶然にも俺は近所の介護施設に訪問美容をしていたから、その時ついでにやぶさんの家に寄ってカットしましょうかって申し出た。

 工房用のお風呂でカットの支度を始めて気付いた。なんだか家の空気が違う。
 カットをしてる今もやぶさんの空気が明るい。

「何かいいことありました?」
「……たぶん」

 『少し』とか言われたらもう一回広げてみるつもりだった。これは静かにカットを続けた方がいいかな。
「やっぱり。いつもより明るいなって思いましたもん」
 それだけ言って作業に集中する。

 だいぶ経ってからやぶさんが静寂を破った。
「二階を……下宿にしたんです」

 どうしちゃったの!?
 やぶさんから世間話を始めた!
 やぶさんが人と同居!?

「それは…………思いきりましたね。
 でも楽しそうってことは、いい人が入居されたんですね」
「……はい」
 やぶさんが笑った!
 俺といる時の警戒してないってレベルじゃなくて、ちゃんと笑顔になった!

 落ち着け俺。さりげなく。これが特別なことだとやぶさんが思わないように。

 様子を見ながらもう少しだけ会話をしてカットを終えた。
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