薮一蔵の体験教室

riktan

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春日 秀紀

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 やぶさんの家の次はもう少し山奥にある介護施設。
 仕事を終えて施設を出たら、車に寄りかかってこっちを見てる雪矢ゆきやくんがいた。

 あれ?幻を見るほどまで怖がってたかな?
 しかも高校生なんだから車の運転なんてできないはず。
 あ、運転席に人がいる。寄りかかってるだけで雪矢ゆきやくんの物に見えるんだから美形ってフシギ。

 雪矢ゆきやくんが警察手帳みたいに俺のスマホを見せた。
「駐車場に落ちてましたよ」
「え!?ありがとう。って、どこの?」

 仕事中は車に置きっぱなしにしてて、最後に見たのはやぶさんの家の駐車場。でもそれだとどうして雪矢ゆきやくんが持ってるのか分からない。

やぶさんのですよ。
 俺と雷打らいだは数日前からそこの下宿人です」
 そんな偶然ある!?
 でもなるほど。らいちゃんの癒しオーラはやぶさんの笑顔まで引き出せるんだね。

「すごい偶然だね」
 俺の言葉にも変わらず笑顔のままの雪矢ゆきやくん。
春日かすがさんもどうですか?」
 どういうつもりかも、なんて答えるのが正解かも分からなくて言葉が出ない。

 雪矢ゆきやくんが続ける。
「下宿できる部屋は4つあって、俺と雷打らいだで一つ、」
 言葉に続きがありそうなのに運転席のドアをノックした。運転手が静かに出てくる。

 二人とも二月らしい服装。なんだけど。
 ほわほわ暖かそうな服装の雪矢ゆきや君と並んで立つと空気の重さが際立つ。

やぶさんの従弟いとこと」
 すでに運転手さんにされている従弟いとこさんは雪矢ゆきやくんのタイミングに合わせて挨拶をした。
「はじめまして」
 声も言い方も意外と優しい。

 免許持ってるってことは確実に雪矢ゆきやくんより年上ってこと。俺と同じでこのオーラにやられたのかな。
 分かるよその気持ちって親近感が湧く。
「どうも、はじめまして」

 雪矢ゆきやくんはさらに続ける。
「あとはやぶさんの高校の先輩が4月から入ることが決まってます。
 やぶさんのお母さんが勝手に入居者を連れて来てしまう前に部屋を埋めたいんです」

「それで、俺?」
 雪矢ゆきやくんが可愛く頷く。
やぶさんとも知り合いなんですよね。さっき知ってびっくりしました。
 それで春日さんがいいなって思って」
 拝むように両手を合わせてほんの少しだけ首を傾けた。普段の完成されたオーラからのギャップでかわいさが際立つ。

やぶさんがそう言ったの?」
 雪矢ゆきやくんが一回首を振った。
「早く満室にしようっていうのはやぶさんの先輩が。春日さんがいいなっていうのは俺が勝手に言ってるだけです。
 いろんな事情でご飯を作るのは雷打らいだって決まってて、知らない人だと雷打らいだも気を使うだろうから心配で」
 雪矢ゆきや君が珍しく目を伏せた。

 きっと家を広く使えるように家を出て、家事手伝いで家賃をゼロにしてるんだ。
 雪矢ゆきや君だってここから学校に通うのは大変だろうに、らいちゃんのために入居したんだろうな。

 優しいらいちゃんも、これでいて本当に弟想いなだけの雪矢ゆきやくんも守りたいと思った。
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