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第22話 過酷な訓練
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コリー先生から一人前の騎士にするつもりで鍛えると宣言されてから、剣術の時間は想像以上に過酷となりました。
「遅い!そんな速度で勝てると思いますか!」
まるで雨のように絶え間ない斬撃に、わたしはひたすら木刀で防ぐしかありませんでした。コリー先生の授業は今まで身体をならしてから、素振りと練習台に向けての打ち込みがメインでしたが、今ではコリー先生を相手に実戦形式の稽古へ変わりました。
コリー先生は過去に敵対勢力との戦いで右腕を失い、現役を引退したと聞きましたが、それでもわたしに対して半分以上も実力を出してはいませんでした。
「相手の剣ばかり見るな!」
そう言った時にはコリー先生に足を払われ地面に倒されていました。稽古は本当に実戦向けで、このように足払いをしたり、拳が飛んできたりと、剣以外の攻撃や目潰し等が襲い掛かってきます。
「この程度のことで倒れていては、上から斬られますよ!」
「!」
普通の訓練なら言葉だけの指摘で済むかもしれません。ですが、コリー先生は本当に振り下ろしてきます。一切容赦なく。それを理解してから、わたしは一撃を食らわないように全力で避けることをこの1ヶ月の内に身につけました。当たったら頭から血が出るので。本当に痛いです。
「はぁ!!」
避けたところで剣を振るいますが、余裕で受け止められてしまうので、少し腹が立ってきます。対抗心が生まれているいい証拠だと言いますが、稽古の後に罪悪感が生まれるのでなるべく避けたいところです。
「遅い遅い遅い!相手を、私を斬る気があるのですか!」
そう言ってわたしの木刀を弾き飛ばし、そのまま胴を斬ろうとします。わたしは咄嗟に後ろへ下がり、木刀まで前回りで飛び込みます。服も髪も土で汚れますが、そんなことを気にしていたら攻撃が出来ません。
木刀をとり、振り向き様に木刀を振りました。剣先は接近していたコリー先生の腹部に向けて伸びていました。
「………負け、ですね」
わたしは首に添えられた木刀を感じながら言います。もし本当の戦いなら、わたしが剣を振るったと同時に首を切り落とされていました。
「ひとまずここまでにしましょう」
コリー先生が木刀を納め、稽古が中断したと理解した途端、わたしは大きく咳き込みました。肺の中に空気がないと気づいた身体が空気を取り込もうと過剰に呼吸を始めました。
「お嬢様!」
待機していたパメラがわたしの介抱を始めます。剣術の時間ではこうなることが多いので、パメラには迷惑を掛けています。
「再開は30分後とします。それまでしっかり休んでください」
コリー先生はそう言って立ち去り、しばらくしてわたしはパメラの肩を借りて近くのベンチに座り、水が入ったバケツに直接口をつけて飲みます。本来ならとても行儀が悪いですが、毎回ティーカップに入れて飲むより効率的でした。
「大丈夫ですかシエルお嬢様?」
「はぁ……はぁ……う、うん……いつものことながら、やはりキツイですけど……成長出来てる気がします……」
そうです。以前よりも遥かに成長出来ている気がします。体力もさらに増えましたし、筋力も瞬発力も、段違いに増しています。毎回死にそうなくらい苦しいですが——
「わたしは挫けません」
「シエルお嬢様……」
「——そうか、励んでいるようだな!」
「っ!?」
不意に飛んできた声に驚いて振り向くと、そこには1人の男性が立っていた。燃えるようは赤い髪にチョコレート色の目、この特徴を持つ人はこの国でも1人だけです。
「フェリクスお兄様!?」
突然の訪問に、わたしは疲れが吹き飛ぶほど驚きました。
「遅い!そんな速度で勝てると思いますか!」
まるで雨のように絶え間ない斬撃に、わたしはひたすら木刀で防ぐしかありませんでした。コリー先生の授業は今まで身体をならしてから、素振りと練習台に向けての打ち込みがメインでしたが、今ではコリー先生を相手に実戦形式の稽古へ変わりました。
コリー先生は過去に敵対勢力との戦いで右腕を失い、現役を引退したと聞きましたが、それでもわたしに対して半分以上も実力を出してはいませんでした。
「相手の剣ばかり見るな!」
そう言った時にはコリー先生に足を払われ地面に倒されていました。稽古は本当に実戦向けで、このように足払いをしたり、拳が飛んできたりと、剣以外の攻撃や目潰し等が襲い掛かってきます。
「この程度のことで倒れていては、上から斬られますよ!」
「!」
普通の訓練なら言葉だけの指摘で済むかもしれません。ですが、コリー先生は本当に振り下ろしてきます。一切容赦なく。それを理解してから、わたしは一撃を食らわないように全力で避けることをこの1ヶ月の内に身につけました。当たったら頭から血が出るので。本当に痛いです。
「はぁ!!」
避けたところで剣を振るいますが、余裕で受け止められてしまうので、少し腹が立ってきます。対抗心が生まれているいい証拠だと言いますが、稽古の後に罪悪感が生まれるのでなるべく避けたいところです。
「遅い遅い遅い!相手を、私を斬る気があるのですか!」
そう言ってわたしの木刀を弾き飛ばし、そのまま胴を斬ろうとします。わたしは咄嗟に後ろへ下がり、木刀まで前回りで飛び込みます。服も髪も土で汚れますが、そんなことを気にしていたら攻撃が出来ません。
木刀をとり、振り向き様に木刀を振りました。剣先は接近していたコリー先生の腹部に向けて伸びていました。
「………負け、ですね」
わたしは首に添えられた木刀を感じながら言います。もし本当の戦いなら、わたしが剣を振るったと同時に首を切り落とされていました。
「ひとまずここまでにしましょう」
コリー先生が木刀を納め、稽古が中断したと理解した途端、わたしは大きく咳き込みました。肺の中に空気がないと気づいた身体が空気を取り込もうと過剰に呼吸を始めました。
「お嬢様!」
待機していたパメラがわたしの介抱を始めます。剣術の時間ではこうなることが多いので、パメラには迷惑を掛けています。
「再開は30分後とします。それまでしっかり休んでください」
コリー先生はそう言って立ち去り、しばらくしてわたしはパメラの肩を借りて近くのベンチに座り、水が入ったバケツに直接口をつけて飲みます。本来ならとても行儀が悪いですが、毎回ティーカップに入れて飲むより効率的でした。
「大丈夫ですかシエルお嬢様?」
「はぁ……はぁ……う、うん……いつものことながら、やはりキツイですけど……成長出来てる気がします……」
そうです。以前よりも遥かに成長出来ている気がします。体力もさらに増えましたし、筋力も瞬発力も、段違いに増しています。毎回死にそうなくらい苦しいですが——
「わたしは挫けません」
「シエルお嬢様……」
「——そうか、励んでいるようだな!」
「っ!?」
不意に飛んできた声に驚いて振り向くと、そこには1人の男性が立っていた。燃えるようは赤い髪にチョコレート色の目、この特徴を持つ人はこの国でも1人だけです。
「フェリクスお兄様!?」
突然の訪問に、わたしは疲れが吹き飛ぶほど驚きました。
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