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第29話 頑張り過ぎた故に
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ヴィヴィアンヌお姉様に初めて勉強を教わったあの日から1ヶ月が経ちました。
「よし!今日はここまでにしよう!」
「ありがとうございました!」
わたしは指南して下さったフェリクスお兄様に一礼をします。普段なら学園に通っている日ですが、先週から夏休みに入ったことにより、こうしてお兄様に鍛えてもらえる機会が増えました。
「基礎は大分上達してきたな!」
「はい、フェリクスお兄様とコリー先生のお陰です」
それに昨日も、雨で訓練がありませんでしたが自主練習は欠かさずやりました。そのお陰でもあるかもしれません。
「うん、これで漸く身体に合った戦い方の訓練が出来るな!」
「身体に合った?」
首を傾げるわたしにフェリクスお兄様が説明を始めました。
「ああ、人間には体躯に個人差がある!シエル、俺を見てどう思う?」
「え、えーと、とても大きくて、ガッシリしていると言いますか……」
「そうだ!俺は背が高くて、ガタイも良い!だがシエル、お前はどうだ?俺のように背が高くてガタイが良いか?」
フェリクスお兄様からの問いに、わたしは自分の身体を眺めて言いました。
「いいえ、背も低く弱そうに見えます」
「そうだな。だが騎士団の中にはそういう特徴を持った騎士が何人もいる。そうなれば、全員同じ戦い方をしていると思うか?」
「いいえ、思いません」
「そうだ!自分の身体に合った戦闘スタイル!明日からそれを中心に鍛えていこうと思う!もちろん、コリー先生にも協力してもらう!夏休みとはいえ、いつもお前の側にいれるわけじゃないからな!実際、俺はもうそろそろ殿下の元へ向かわなければならない!」
そうですよね、お兄様はシモン殿下の護衛騎士の一人です。伯爵家に帰ってきているとはいえ、いつもいるわけではありません。
「はい、態々わたしの為にお時間を使ってくださりありがとうございます」
「なに、気にするな!シエルは俺の妹だからな!これからも、共に強くなろう!」
「はい!」
お兄様はわたしの返事を聞くと、走って修練場を後にした。相当時間が差し迫って
いたようですね、少し申し訳なく思います。
それからしばらくして、学問の時間になりました。敷地内の図書館でわたしに勉強を教えて下さるのは……
「——次に、スクレット王国と北の隣国エルツ帝国の歴史についてですわ」
歴史書を片手にそう言ったのはヴィヴィアンヌお姉様。あの日から伯爵家の仕事の合間を縫って、時々わたしに授業をしてくださるようになりました。その時以外は変わらずタバサ先生に教わっているのですが……
「あの学ぶことにしか興味がなかったヴィヴィアンヌお嬢様が……!このタバサ、感激で涙が止まりません!」
そのことを知ったタバサ先生が嬉し涙を流していました。一体お姉様の過去に何があったのでしょうか……兎に角、今わたしはヴィヴィアンヌお姉様に学問を教わっているのです!しっかりと身につけなくては!
「さて、この前のテストの結果なのだけれど……」
「は、はい……」
授業の最後に昨日行われたテストの返却が行われました。緊張しながら答案用紙を受け取ると……
「85点!?」
「ええ、貴女にしてはいい点数でしたわ」
「こんなに高い点数初めてです!」
「ええ、でもそれで満足されては困りますわ」
ヴィヴィアンヌお姉様のピリッとした雰囲気にわたしの体が強ばりました。
「私の妹なのですから、如何なるテストでも100点でなければ困りますわ。よって、このテストを明日もう一度行いますわ。そこで100点を取れなければ、私はもう貴女に教えることはありませんわ」
「!」
ヴィヴィアンヌお姉様に教わることが出来なくなるなんて……そんなの嫌です!折角こうして知性の才があるお姉様に習うことが出来るのです!絶対に続けたいです!
「わかりました!明日のテスト、絶対に100点を取ります!」
「ふふっ、期待していますわ!さて、そろそろ移動しないと魔法の授業に間に合いませんわね」
「そうですね。それでは行ってきます!」
わたしは椅子から立ち上がり、図書館の出口に向けて歩きましたが……
「———っ」
「シエル!?」
その途中で、わたしの意識がピタリと途絶えました。
「よし!今日はここまでにしよう!」
「ありがとうございました!」
わたしは指南して下さったフェリクスお兄様に一礼をします。普段なら学園に通っている日ですが、先週から夏休みに入ったことにより、こうしてお兄様に鍛えてもらえる機会が増えました。
「基礎は大分上達してきたな!」
「はい、フェリクスお兄様とコリー先生のお陰です」
それに昨日も、雨で訓練がありませんでしたが自主練習は欠かさずやりました。そのお陰でもあるかもしれません。
「うん、これで漸く身体に合った戦い方の訓練が出来るな!」
「身体に合った?」
首を傾げるわたしにフェリクスお兄様が説明を始めました。
「ああ、人間には体躯に個人差がある!シエル、俺を見てどう思う?」
「え、えーと、とても大きくて、ガッシリしていると言いますか……」
「そうだ!俺は背が高くて、ガタイも良い!だがシエル、お前はどうだ?俺のように背が高くてガタイが良いか?」
フェリクスお兄様からの問いに、わたしは自分の身体を眺めて言いました。
「いいえ、背も低く弱そうに見えます」
「そうだな。だが騎士団の中にはそういう特徴を持った騎士が何人もいる。そうなれば、全員同じ戦い方をしていると思うか?」
「いいえ、思いません」
「そうだ!自分の身体に合った戦闘スタイル!明日からそれを中心に鍛えていこうと思う!もちろん、コリー先生にも協力してもらう!夏休みとはいえ、いつもお前の側にいれるわけじゃないからな!実際、俺はもうそろそろ殿下の元へ向かわなければならない!」
そうですよね、お兄様はシモン殿下の護衛騎士の一人です。伯爵家に帰ってきているとはいえ、いつもいるわけではありません。
「はい、態々わたしの為にお時間を使ってくださりありがとうございます」
「なに、気にするな!シエルは俺の妹だからな!これからも、共に強くなろう!」
「はい!」
お兄様はわたしの返事を聞くと、走って修練場を後にした。相当時間が差し迫って
いたようですね、少し申し訳なく思います。
それからしばらくして、学問の時間になりました。敷地内の図書館でわたしに勉強を教えて下さるのは……
「——次に、スクレット王国と北の隣国エルツ帝国の歴史についてですわ」
歴史書を片手にそう言ったのはヴィヴィアンヌお姉様。あの日から伯爵家の仕事の合間を縫って、時々わたしに授業をしてくださるようになりました。その時以外は変わらずタバサ先生に教わっているのですが……
「あの学ぶことにしか興味がなかったヴィヴィアンヌお嬢様が……!このタバサ、感激で涙が止まりません!」
そのことを知ったタバサ先生が嬉し涙を流していました。一体お姉様の過去に何があったのでしょうか……兎に角、今わたしはヴィヴィアンヌお姉様に学問を教わっているのです!しっかりと身につけなくては!
「さて、この前のテストの結果なのだけれど……」
「は、はい……」
授業の最後に昨日行われたテストの返却が行われました。緊張しながら答案用紙を受け取ると……
「85点!?」
「ええ、貴女にしてはいい点数でしたわ」
「こんなに高い点数初めてです!」
「ええ、でもそれで満足されては困りますわ」
ヴィヴィアンヌお姉様のピリッとした雰囲気にわたしの体が強ばりました。
「私の妹なのですから、如何なるテストでも100点でなければ困りますわ。よって、このテストを明日もう一度行いますわ。そこで100点を取れなければ、私はもう貴女に教えることはありませんわ」
「!」
ヴィヴィアンヌお姉様に教わることが出来なくなるなんて……そんなの嫌です!折角こうして知性の才があるお姉様に習うことが出来るのです!絶対に続けたいです!
「わかりました!明日のテスト、絶対に100点を取ります!」
「ふふっ、期待していますわ!さて、そろそろ移動しないと魔法の授業に間に合いませんわね」
「そうですね。それでは行ってきます!」
わたしは椅子から立ち上がり、図書館の出口に向けて歩きましたが……
「———っ」
「シエル!?」
その途中で、わたしの意識がピタリと途絶えました。
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