夜待鳥の神子は夜の帳の下でなく

まぁまぁ

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宵の明星

蜜夜

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輝く満天の星空を天井にして、モザイクが施された浴場の周りを幻想的にランプが照らしている。ランプの空気に溶け出すような光と共にどこからか漂う香は異国情緒を感じさせた。お湯がなみなみと湛えられた絢爛な浴場はそれだけで、砂漠の国では最高の贅沢だろう。
そしてアルは私と二人まだ服を着たままということにも頓着せず、そのまま湯気が立ち上る湯の中へ入っていく。ざぶざぶっとお湯をかき分ける音と共にお風呂の中に造られた階段を下りて段々と体がお湯につかっていく。私の黒いアラビアン衣装も肌につき、透けて・・・そこで私は透けた服はいっそ裸より恥ずかしいのだと知った。アルスの鍛えられた体も服の上から透けて、抱き寄せられたまま自分も同じように彼に肌と体のラインを晒す。
「マコ・・・」
囁かれて、お湯の中で抱き上げられていた手がふわりっと放されるや、その手は私の服を脱がす動きに変わった。夜会で切り裂かれた服を彼が丁寧に脱がしていく。水音と共に切れていた帯が解かれた。途端、服はほどけ、より心許なくなるばかりかお湯の動きに合わせて勝手に私の元を離れてしまう。
羞恥で顔が赤くなってしまう私を良いことにアルスラーンも上着を脱いだ。
パシャンッという音と共に偽りの衛士の服がなくなり、下から黒い羽織のような衣に彼の鍛え上げられた体が視界一杯に広がって目のやり場に困る。
「アルまって」
「なぜ?」
理由などなくて、自分のキャパシティが一杯いっぱいだから、なんて言えない。けれどそんな私などアルにはお見通しのようで艶やかに一つ微笑まれただけだった。
「そろそろ観念してくれ」
そして彼はお湯の中、濡れた布を体に纏わせたままの姿で口付けを仕掛けてきた。
「マコ」
囁かれながら両手で頬をとられて、チュッチュッと音を響かせながら唇に触れられたかと思うと、とろりっと蜂蜜色の瞳を蕩けさせて、
「舌を出して」
 さぁ と欲をさらけ出すことを求められる。自分から好きな人の前に舌を出すだなんてと思ったのに・・・はしたないと思ったのに。舌を出した私に嫣然と彼は笑う。
「可愛い」
そのまま舌を吸われてチュッと放される。
「ぁっ」
「足りない?」
また舌をもう少し強く吸われ放される。
「んぅっ」
「俺が欲しい?」
「アルがほしいよ」
きっと私にその言葉を言わせたかったのかもしれない。次の瞬間、アルは息すら喰らうような噛みつくようなキスを仕掛けてきた。
「ぁぁっぅっ」
「はぁっマコッんっ」
クチュクチュッチュバッと頭の中に水音が響く。彼の舌が私の舌を捕らえて歯列をなぞり、唾液をからめて上顎もどこもかしこも愛撫され、とろとろに気持ちがいい。
銀糸で二人が繋がるぐらい口付けて、やがて口づけを止めると私は上気した顔のままでアルを見詰めて頬をすりっと擦り合わせた。
ちゅちゅっと彼が頬にキスをくれるのを受けながら甘えていると、私の太ももを撫ぜるアルの力強い手を感じて体が震えた。
「あっぁぁっ」
ぐっと今度は彼の太ももに乗り上げる様に両手でお尻を掴まれる。そのままやわやわと揉まれた。その度にアルの太ももに私の恥ずかしいところを擦り付けることになってしまって、ますます顔に熱が集まるのを彼は笑う。チャプッとお湯を揺らしながら、鍛えられたアルの太ももにあられもないところを擦り付け、お尻を揉まれて制止しようと口を開こうとして言葉は口づけで封じられた。
クチュッ チュッ チャプッ
お風呂の音なのか何だか分からない頭がふわふわする。そんななかアルの手がずれて私の秘部に触れる。
「大丈夫、慣らすだけだから」
その言葉通り、びくりっと震える私をなだめる様に何度か擦られて、ゆっくりと中にアルの指が入ってくる。彼はその長い指を曲げて一番感じる奥を愛撫してそれだけで鮮烈な快楽が私をやいた。お湯の中でも私の体が蜜で濡れているのが分かる。
「ぁんっぁぁっ やぁっらぁぁアルッ アルッ」
「んっマコッ ほらイってごらん」
容赦なく、甘美に快楽を与えられて、やがて今まで触れてなかったクリストスも一緒に擦られたらもう耐えきれなかった。
「だめぇっあああっんっぅぅはぁっぁぁっ」
私はアルスラーンに縋りながら、体を震わせてイっていた。

そしてアルスはイッた私を労うように、こめかみに一つ口付けるとまた横抱きに抱き上げて今度はお湯から上がる。ザァーッと湯が落ちて、残っていた服が体にぴったりと張り付くさまはいやらしいのに彼の鍛えられた肉体の美しさに目が離せなかった。
彼の後ろには満天の星空が広がっている。なんていう光景なんだろう。見惚れる私の視線に気づいたのかアルスラーンは笑みを一つ零し、何故か私の後ろへと視線を投げて、
「用意はできているな?」
「はいつつがなく」
会話をした。か、会話・・・そこでハッとして首を巡らせば、浴場の端に控えている侍女の姿に震える。
「なんでっ人がいるの?」
「?身の回りを世話するものは必要だろう」
くらくらする。アルスラーンは好きだけれど、ここにきて皇子である彼との価値観の違いを明確に感じた。今までのどこからどこまで見られていたのか。おののく私に頓着することなく彼は浴場の隅にいつの間にか用意されていた絨毯やクッションが敷き詰められた簡易的な寝所へ私を運んだ。

そして壊れ物を扱うようにクッションが敷き詰められた柔らかい寝所に寝かされる。背景は満点の星空。すぐにアルがぎゅうぎゅうっと抱きしめてくれて口付けてくる。チュッとリップ音を響かせて離れた唇に寂しさを滲ませてアルを見上げると彼は嫣然と微笑んだ。
そして彼が顔をあげて、枕元に置かれていた何かに気づき「あいつら」と口の中だけで呻いて、
「業腹だが、乗ってやろう」
そして彼の手が枕元に置いてあった小瓶を一つ取り、とろりっと蜜色の何かが彼の手に滴る。
ふわりっと香るムスクに「それなに?」と尋ねれば、アルは「香油だ。いい薫りだろう」と言い、その手を私の肌に滑らせる。とろりっという感触と共に香るムスク。
「マコの首筋、耳も綺麗だ。頬も、瞳も。髪も。」
ひとつひとつ私の体に手を滑らせて、香油を塗りながら愛を囁かれる。
「頑張ったな。沢山頑張っていたマコを見ていた」
(そう、たった一人貴方だけが私を見ていてくれた。)
とろりっと香油をまとった指が私の秘部をクチュリッと愛撫しながら彼が帯を緩めて、立ち上がった彼自身をとり出した。それは大きくていやらしくて彼のものが私を犯そうとそこに当てられたとき、私はハッとした。
「アル 赤ちゃんができちゃう」
「俺が愛してマコが受け止めるから子供はできるものだろう?」
彼は皇子だ。不思議そうな彼の様子に、また感覚の違いを強く感じるけれど。彼はゆっくり身を進めてグチュッと私の中へ入ってきた。
「あっぁぁぁぁぁんっ」
みちみちと奥の奥までアルスラーンに貫かれて、仰け反る私の首筋を甘噛みしながらアルは労うようにチュチュッと口付けてくれる。彼の熱が私の中で一杯に埋められて、熱くてたまらない。

空には満天の星。

「すきっアル・・・好き」

「あまり俺を煽るなっ」

思わず手を伸ばして背に縋れば彼は私の両足を深く折り曲げて、逃げられない体勢で突き上げた。
「あぁぁっぁんっんっああああっっやぁぁっ!アルッ」
「くぅっマコッはぁっぁぁっいいっ」
グチュグチュヌチュグチュッと水音と香油が混じって辺りに漂うのは深いムスクの香り。
惑乱する。
星空を背負ってこんな人が私を愛してくれてるなんて奇跡みたいだと想った。
「たっぷり注いでマコに俺の子を妊娠してもらわないとな」
「アルッまってっつっ」
奥の奥をえぐられるようにペニスで突かれながらかき混ぜられれば耐えきれなくて呆気なく私はイッた。
「やあぁっぁぁっ」
「マコ、一番奥で注ぐからっつっ出すぞっクッ、ぁっ・・・」
私の体の奥の奥までアルの精がドクドクッと注がれる。
最後の最後まで私の奥に絞り出そうとクチュクチュッと水音を響かせて緩やかに突かれて堪らない。
「おくっあついっんあっああんっっ」
塗り替えられていく感覚だけが鮮烈で。私は愛されていると想った。
「まだ足りないっ」
それなのに、イッた筈のアルスラーンに腰を支えられて抱き上げられて私が彼の膝の上に抱きあがるように乗る。自重でずぶずぶと深くつながっていく。
「深いっんぅっアルッ」
「はあっマコッ・・・」
ゆるやかにチークダンスを踊るように二人でキスをしながら互いに高めあって、やがてまた奥にアルスラーンの精が注がれた。
「ぁぁ・・・」
声すら重なってくちゅくちゅっとキスで舌を吸われながら声すら口づけの中で飲み込まれていった。


あの後、信じられないことにアルは情事の片付けは侍女さんたちがするからと言った。私は反対したのに無理くり納得させられて今は身繕いをして、アルスラーンの絢爛な自室のベッドの中にいる。
垂れ下がる紗幕と淡いランプの光が綺麗だけれど少し自己嫌悪と言うか落ち込んでしまう。
体もアルスラーンを受け入れたから疼痛が少しあってクッションに体を沈ませる。あっこれフカフカです。
気だるげな私を見たからだろうか、アルスラーンは、「マコが元気になるように、いいものを見せてやる」といってベッドの脇に垂れ下がっていた金紐を引く。サァッと紗幕の一部が持ち上がる中、彼は器用に指を唇に当てると息を吹いてピィーッと甲高い指笛を鳴らして見せた。

するとバサバサッと夜の闇の中で鳥の羽音がして窓から一羽の優美な鳥が降り立つ。
枕元に降り立ったのは尾羽が長く漆黒なのに瑠璃色が浮かぶ鳥だった。

「お前の”羽根”をこの人にくれ」
アルが言うと鳥は理知的な瞳を彼に向けて、その優美な銀色の嘴でなんと一本羽根を抜いてアルスラーンに渡してみせた。

「不思議。まるで言葉がわかっているみたい」
そう私が鳥の琥珀色の瞳を覗くように言えば、
「この鳥には伝わっているよ」
とアルスが言って
「今度、この羽根で首飾りを贈るよ」
と腕枕をしてくれて私の髪をずっと撫でてくれるから、なんだか安心して瞼が落ちてきた。

アルスラーンの腕の中で包まれながら眠った。
この世界に来て、こんなに安心したことは無かった。
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