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バカじゃないのか、とずっと思って来た。正直、今も思ってる。
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天涯孤独の兄妹。
それに該当する兄妹は、世界中を探せば何組もいるだろう。
かくいう私と兄もその1つだ。
とは言っても、厳密に私と兄が兄妹である証拠はない。
同じ日に、ちょうど同じように同じ場所で捨てられた他人かもしれないし、捨てた人は同じだが血の繋がりなんてなかったりもしくは片方でしか繋がってなかったり。
可能性は無数にある。
DNA鑑定をわざわざしたりしていないので真実はわからないし、ここまで兄妹として扱われてきたのだからもう兄妹でいい気もする。
だが、おそらく兄妹だろう。
同じ日、同じ場所、同じ時間に赤の他人が偶然それぞれの子供を捨てにくる可能性は日本という国において、そうあることではないと思うし、信じたいからだ。
ではなぜ、これほどまでに血の繋がりがない可能性を強調するのかと問われれば、以下のことが挙げられる。
1、容姿が似ていない。
兄は日本人の色彩つまり黒髪黒目をもっているが、妙やかなる月も可憐なる花も恥じらって、優美な捨て台詞を吐きながら逃げていくほどの美貌である。
ちなみに私の容姿は十人並み。見苦しくない程度。オシャレとかする余裕もないけど、それでも見苦しくない程度。
かろうじて似ているのは真っ直ぐな髪くらい。そこだけ。天使のリングはあっちに軍配が上がる。
2、能力スペックが似ていない。
兄は信じられないくらい優秀な脳みそをもっている。一度見たもの聞いたものは二度と忘れずむしろ知らないことまで再現するわ、一を聞いて百を理解しプラス20を作り出すわ、思ってもみない視点から鋭い意見を投げつける。
中学を卒業したら妹を養いつつ、自分もそのうち大検を受けて大学に通えるくらいお金を貯めるために働く。と言っていたのを教職員全員が引き止めて、小学生の妹まで引っ張り出して説得させてのすえに受験準備一切なしで有名私立高校の学費全額免除特待生枠に合格。
そのまま常に満点で首席独走。ついでに片道20キロもの学校への道を約1時間で汗もかかずに走破していた。
私は兄の教えかたがうまいので小中とトップクラスの成績だったが、それでも秀才の部類でしかない。
長距離走は無理をすると脇腹の激痛が尋常じゃないものになって嘔吐して倒れるほどに苦手だった。苦手とかいうレベルでなく天敵だったかもしれない。
でもそれ以来、先生達には別に喘息の発作があると言うわけでもないのに長距離関係の体育は免除してもらえるようになった。毎年申し送りもされているようだった。
新任の先生の中には走れという人もいたけど、走っては道の途中で吐いて倒れているという結果が積み重なってもう何も言われなくなった。
3、中身が似ていない。
兄は困った人を放っておけない人だ。他人のために働く労を厭わない。聖人君子を地でいく人だ。反面、奇人変人のレッテルも丁寧に貼られている。
総合すると仙才鬼才が一番近いかと思うが、一般にはあまり知られていない四字熟語だ。仙人のようによく分からんが凄い人で、人間とは思えない才能がある。という意味で良い。
私は内心「バケモノじゃねぇのかこいつ」と思っている。なけなしの身内としての情で口にはしない。
私は逆に、他人のために働くのなんて真っ平御免な利己主義者だが、常識ある一般人の認識を受けている。平々凡々な秀才、がいいトコだ。
平凡と言うには少し周囲環境が特殊ではあることは自覚しながら無視しているのであしからず。
兄は優先順位のてっぺんに私を据えているらしく、何よりも私を優先する。
何でそんなに優先すんのかってくらい一番に私のことを考える。
私が長距離走でぶっ倒れたときは、先生達が施設や兄に連絡する前に嫌な予感がすると言ってテストを投げ打って中学から小学校に駆けつけてくる。
病気のときはつきっきりで看病し、テストの前は兄が受けるとき以上に真剣に対策して(むしろ、兄は自分のテストを蔑ろにしている。というより、興味がないようだ)私に教え込み、出来ないことは出来るようになるまで付き合ってくれる。
“溺愛”というのだろう。“過保護”といってもいい。
でも正直、鬱陶しい。・・・・・・一応、言わないけど。
4、私は断じて電波ではないっっ!!
私が兄妹なのかと一番疑う理由はこれだ。
兄は異世界へ行ったときのための準備をしているのだ!
最初に兄の異変に気づいたのは8歳のときだった。
兄は当時13歳。地元の平凡な公立中学に入学し、神童の名を欲しいままにしながらあることに熱中していた。
私は兄の足の間に座らされ、黙々と口を動かしていた。施設の先生の恐い視線に気づいて、仕方なく兄に声をかける。
「お兄ちゃん、ごはんのときくらい本読むのやめたら?あと、『水道の歴史』って読んでておもしろいの?」
「大部分は考えればわかることだから面白くはないよ。でも、細かい工夫は興味深い」
読書をやめる気はないようだ。
読書の際、兄は必ずこの態勢になるので否応なく本の内容は私の目に入ってくる。
「なんで、お兄ちゃんにはわかりきってることを読んでるの?」
「イセカイに行った時に、知らなかったり、間違えたら困るからだよ」
(・・・・・・?)
兄は今なんと言った?
『イセカイ』ってなんだ?
イセカイ、いせかい、伊勢会、医世界、射世界、異世界。
(伊勢は三重県、医者の世界は衛生面では関係あるかも、でも弓道界はないとおもう、異世界はつまり外国のことかな)
「外国の、水道事情がどうかしたの?」
「外国?なんで?」
「だって、『イセカイ』って」
「『イセカイ』は、地球ではない世界だよ。異なる世界、で『異世界』」
「・・・・・・」
施設の子として、兄という盾のある自分への風当たりはそうひどくはない。
けれど、どんな風が吹いているのかは知っている。
そのせいか、私は8歳にして人よりも早熟だったという自負がある。
赤子だった私と違って、ずっと神童ともてはやされている兄には施設に来る前の記憶だってあるだろう。
これは兄の、現実逃避なのかもしれない。
空想に逃げることで、兄は自分を保っているのかもしれない。
そう思ってた、純粋な時期もありました。
「誰がっ!私まで異世界に連れて行かれると思うかっ!?」
見知らぬ森の中。
全く動じていない兄はニコニコと人を穏やかにさせる笑みを浮かべて(私には通用しないがなっ)私の気がすむまで叫ばせてくれた。
(誰のせいだっ!?誰のっ!!)
叫び疲れて振り乱した髪の隙間から、ギンッ、と施設の仲間には人を怯ませると断言された視線を兄に向けるが、
「もう、向こうには帰れないから。でも、安心して。魔王は何もしなくても兄ちゃんが倒してやるから。水道設備もない世界だし、最初は不便かもしれないけど、ちゃんと日本みたいに便利にしてやるから」
「っこの事態をわかっていたなら、ここへ来ない努力をしろっ!このバカ兄貴っ!!」
『異世界』発言をした兄を私は正直バカだと思って来た。
正直、異世界に来た今でも一回まわってバカだと思ってる。
だって多分、理論セオリー通りなら呼ばれるのは兄だけのはずだ。兄が呼ばれることしか私は認めない。
つまり、だ。私は巻き込まれた、ということになる。
「ふざけんなっ!シスコンもたいがいにしろっ、このアホ兄貴っ!!」
世界をも越えるこの愛すべき妹バカの愛を、私はどうすれば良いのだろうか。
「あきらめて受け入れれば良いんだよ」
「良い笑顔で言ってんじゃねぇ!!」
それに該当する兄妹は、世界中を探せば何組もいるだろう。
かくいう私と兄もその1つだ。
とは言っても、厳密に私と兄が兄妹である証拠はない。
同じ日に、ちょうど同じように同じ場所で捨てられた他人かもしれないし、捨てた人は同じだが血の繋がりなんてなかったりもしくは片方でしか繋がってなかったり。
可能性は無数にある。
DNA鑑定をわざわざしたりしていないので真実はわからないし、ここまで兄妹として扱われてきたのだからもう兄妹でいい気もする。
だが、おそらく兄妹だろう。
同じ日、同じ場所、同じ時間に赤の他人が偶然それぞれの子供を捨てにくる可能性は日本という国において、そうあることではないと思うし、信じたいからだ。
ではなぜ、これほどまでに血の繋がりがない可能性を強調するのかと問われれば、以下のことが挙げられる。
1、容姿が似ていない。
兄は日本人の色彩つまり黒髪黒目をもっているが、妙やかなる月も可憐なる花も恥じらって、優美な捨て台詞を吐きながら逃げていくほどの美貌である。
ちなみに私の容姿は十人並み。見苦しくない程度。オシャレとかする余裕もないけど、それでも見苦しくない程度。
かろうじて似ているのは真っ直ぐな髪くらい。そこだけ。天使のリングはあっちに軍配が上がる。
2、能力スペックが似ていない。
兄は信じられないくらい優秀な脳みそをもっている。一度見たもの聞いたものは二度と忘れずむしろ知らないことまで再現するわ、一を聞いて百を理解しプラス20を作り出すわ、思ってもみない視点から鋭い意見を投げつける。
中学を卒業したら妹を養いつつ、自分もそのうち大検を受けて大学に通えるくらいお金を貯めるために働く。と言っていたのを教職員全員が引き止めて、小学生の妹まで引っ張り出して説得させてのすえに受験準備一切なしで有名私立高校の学費全額免除特待生枠に合格。
そのまま常に満点で首席独走。ついでに片道20キロもの学校への道を約1時間で汗もかかずに走破していた。
私は兄の教えかたがうまいので小中とトップクラスの成績だったが、それでも秀才の部類でしかない。
長距離走は無理をすると脇腹の激痛が尋常じゃないものになって嘔吐して倒れるほどに苦手だった。苦手とかいうレベルでなく天敵だったかもしれない。
でもそれ以来、先生達には別に喘息の発作があると言うわけでもないのに長距離関係の体育は免除してもらえるようになった。毎年申し送りもされているようだった。
新任の先生の中には走れという人もいたけど、走っては道の途中で吐いて倒れているという結果が積み重なってもう何も言われなくなった。
3、中身が似ていない。
兄は困った人を放っておけない人だ。他人のために働く労を厭わない。聖人君子を地でいく人だ。反面、奇人変人のレッテルも丁寧に貼られている。
総合すると仙才鬼才が一番近いかと思うが、一般にはあまり知られていない四字熟語だ。仙人のようによく分からんが凄い人で、人間とは思えない才能がある。という意味で良い。
私は内心「バケモノじゃねぇのかこいつ」と思っている。なけなしの身内としての情で口にはしない。
私は逆に、他人のために働くのなんて真っ平御免な利己主義者だが、常識ある一般人の認識を受けている。平々凡々な秀才、がいいトコだ。
平凡と言うには少し周囲環境が特殊ではあることは自覚しながら無視しているのであしからず。
兄は優先順位のてっぺんに私を据えているらしく、何よりも私を優先する。
何でそんなに優先すんのかってくらい一番に私のことを考える。
私が長距離走でぶっ倒れたときは、先生達が施設や兄に連絡する前に嫌な予感がすると言ってテストを投げ打って中学から小学校に駆けつけてくる。
病気のときはつきっきりで看病し、テストの前は兄が受けるとき以上に真剣に対策して(むしろ、兄は自分のテストを蔑ろにしている。というより、興味がないようだ)私に教え込み、出来ないことは出来るようになるまで付き合ってくれる。
“溺愛”というのだろう。“過保護”といってもいい。
でも正直、鬱陶しい。・・・・・・一応、言わないけど。
4、私は断じて電波ではないっっ!!
私が兄妹なのかと一番疑う理由はこれだ。
兄は異世界へ行ったときのための準備をしているのだ!
最初に兄の異変に気づいたのは8歳のときだった。
兄は当時13歳。地元の平凡な公立中学に入学し、神童の名を欲しいままにしながらあることに熱中していた。
私は兄の足の間に座らされ、黙々と口を動かしていた。施設の先生の恐い視線に気づいて、仕方なく兄に声をかける。
「お兄ちゃん、ごはんのときくらい本読むのやめたら?あと、『水道の歴史』って読んでておもしろいの?」
「大部分は考えればわかることだから面白くはないよ。でも、細かい工夫は興味深い」
読書をやめる気はないようだ。
読書の際、兄は必ずこの態勢になるので否応なく本の内容は私の目に入ってくる。
「なんで、お兄ちゃんにはわかりきってることを読んでるの?」
「イセカイに行った時に、知らなかったり、間違えたら困るからだよ」
(・・・・・・?)
兄は今なんと言った?
『イセカイ』ってなんだ?
イセカイ、いせかい、伊勢会、医世界、射世界、異世界。
(伊勢は三重県、医者の世界は衛生面では関係あるかも、でも弓道界はないとおもう、異世界はつまり外国のことかな)
「外国の、水道事情がどうかしたの?」
「外国?なんで?」
「だって、『イセカイ』って」
「『イセカイ』は、地球ではない世界だよ。異なる世界、で『異世界』」
「・・・・・・」
施設の子として、兄という盾のある自分への風当たりはそうひどくはない。
けれど、どんな風が吹いているのかは知っている。
そのせいか、私は8歳にして人よりも早熟だったという自負がある。
赤子だった私と違って、ずっと神童ともてはやされている兄には施設に来る前の記憶だってあるだろう。
これは兄の、現実逃避なのかもしれない。
空想に逃げることで、兄は自分を保っているのかもしれない。
そう思ってた、純粋な時期もありました。
「誰がっ!私まで異世界に連れて行かれると思うかっ!?」
見知らぬ森の中。
全く動じていない兄はニコニコと人を穏やかにさせる笑みを浮かべて(私には通用しないがなっ)私の気がすむまで叫ばせてくれた。
(誰のせいだっ!?誰のっ!!)
叫び疲れて振り乱した髪の隙間から、ギンッ、と施設の仲間には人を怯ませると断言された視線を兄に向けるが、
「もう、向こうには帰れないから。でも、安心して。魔王は何もしなくても兄ちゃんが倒してやるから。水道設備もない世界だし、最初は不便かもしれないけど、ちゃんと日本みたいに便利にしてやるから」
「っこの事態をわかっていたなら、ここへ来ない努力をしろっ!このバカ兄貴っ!!」
『異世界』発言をした兄を私は正直バカだと思って来た。
正直、異世界に来た今でも一回まわってバカだと思ってる。
だって多分、理論セオリー通りなら呼ばれるのは兄だけのはずだ。兄が呼ばれることしか私は認めない。
つまり、だ。私は巻き込まれた、ということになる。
「ふざけんなっ!シスコンもたいがいにしろっ、このアホ兄貴っ!!」
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