5 / 12
第2話 遊園地で仲良し作戦!
1
しおりを挟む
「うーん……」
今日もいつものように学校から帰ってきて夕食を済ませたぼくは、自室のベッドに寝っ転がりつつ、スマホとにらめっこしていた。
……突然ですが、ぼく櫻木 碧は今、すんごく悩んでいます。
大神 怜央先輩が友沢 幸人先輩に告白していた場面を目撃してから一週間。てっきりあの2人はめでたく付き合い始めたとばかり思っていたのだけれど、それらしい素振りは全くない。
それどころか……。
『櫻木くん!今日のお昼は一緒にどうかな?』
『櫻木ちゃんって甘いもの好き?購買のホイップいちごサンド、おすすめだぜ!奢るから一回食べてみなって!』
お昼休みになると、2人揃ってぼくのところへお昼ご飯のお誘いに来るし……。
『櫻木くん、この後一緒に勉強しない?わからないところがあったら教えるよ』
『お前なぁ、学生は遊んでなんぼだろ!クレープ買いに行こうぜ、櫻木ちゃん!』
放課後になると、2人揃ってぼくのところへ寄り道のお誘いに来るし……。
……と、まあこんな感じで、先輩たちは何故かお互いのことはそっちのけでぼくにばかり構っている。一体何故……?
もしかして、ぼくが2人のことを言いふらしたりして邪魔しないように、警戒してる?あの時、『先輩たちの仲を邪魔するつもりはない』って言ったのになー……。
それとも、案外2人ともウブだったりして。まだ素直になれないから、ぼくでワンクッション置いているとか……。
いや、それならぼくじゃなくてもいいだろうし、さすがに考えすぎかなー……。
何にせよ、このままの状態では先輩たちの関係が進むのかどうか心配になってくる。何よりも、推したちの間に挟まるのは、見守る側としてはタブー行為……。
「どうにかして、先輩たちの興味をぼくからお互いの方に移す方法ないかなー……」
うんうん悩みながら、ぼくはスマホの画面をスワイプする。すると、とあるネット記事の見出しが、ぼくの目に飛び込んできた。
戸棚のお菓子を見つけた子供の如く、心の底からワクワクが湧き上がってくる。
「これだ!!」
_______
「レーブ・パラダイス?」
「はい!」
翌日のお昼休み、一緒にお昼ご飯を食べていた友沢先輩は、僕の口から出たワードを聞いて目を瞬かせる。
首を傾げてしばらく思案していたようだったが、ハッとした様子で『ああ!』と声を上げた。
「たしか、今話題の遊園地だっけ?名前だけならぼくも聞いたことあるよ。それで、そのレーブ・パラダイスがどうかした?」
「実はですね、昨日面白いサイトを見つけたんですよ!」
ぼくはスマホを取りだし、お目当てのネット記事のサイトを画面に写して、友沢先輩に見せた。
そのネット記事には、『隠れラーピッドちゃんで永遠の愛を』という見出しがついていた。
ラーピッドちゃんとは、レーブ・パラダイスのマスコットキャラクターだ。天使の羽が生えて、弓矢を持ったうさぎ……つまり、キューピッドのうさぎ。だから名前も、うさぎのラビットとキューピッドを組みあわせて、ラーピッドということらしい。
で、レーブ・パラダイスには、各所に隠れラーピッドちゃんと呼ばれる、ラーピッドちゃんのマークが隠されているらしい。それを見つけたカップルは、ずっと仲良しでいられるのだとか……。
まあ、よくある恋愛のジンクスってやつだ。
「へぇ、たしかに面白い話だね。宝探しみたいで、ちょっと楽しそうかも」
ぼくの話を聞いた友沢先輩は顔をほころばせる。落ち着いた大人っぽい人だと思っていたけど、無邪気な子供っぽいところもあるんだと、ぼくは思わずにやけてしまった。
それを誤魔化すように、ぼくは話を続ける。
「他にも、月末にはペアでダンスを踊るイベントがあったり、フードエリアにはカップル向けのお菓子やご飯があったり……レーブ・パラダイスは今、恋人の聖地として人気らしいんですよ!」
ふんす、と鼻をならし、ちょっとだけ得意げになりながら、ぼくは友沢先輩にレーブ・パラダイスをアピールした。
……そう、これはぼくの作戦だ。カップルにおすすめのスポットを、世間話を装いながら友沢先輩にすすめ、『怜央と一緒に行きたいな』と大神先輩とのデートを意識させる。そして大神先輩をデートに誘うように仕向ければ、2人はデートを通して仲を深められるってわけ!
「…………そうだね」
相槌をうちながらぼくの話を聞いてくれた友沢先輩は、顎に手を当てて何かを考え込む仕草を見せた。
すると、しばらく間を開けたあと、ふ、と爽やかに微笑んで言った。
「それじゃあ、今度の休みに2人で行こうか」
「!はい!ぜひ2人で!」
ぼくは食い気味に頷いた。やった、作戦が成功したんだと胸を踊らせる。
「ぼくと櫻木くんで」
「友沢先輩と大神先輩で!」
「「……えっ?」」
……同時に出たお互いの異なる答えを聞いて、ぼくたちはお互いを見つめたまま、ぽかんと口を開けて固まっていた。
__キーンコーンカーンコーン。
そんなぼくたちをほったらかしにするように、昼休み終了を告げるチャイムが鳴った。
今日もいつものように学校から帰ってきて夕食を済ませたぼくは、自室のベッドに寝っ転がりつつ、スマホとにらめっこしていた。
……突然ですが、ぼく櫻木 碧は今、すんごく悩んでいます。
大神 怜央先輩が友沢 幸人先輩に告白していた場面を目撃してから一週間。てっきりあの2人はめでたく付き合い始めたとばかり思っていたのだけれど、それらしい素振りは全くない。
それどころか……。
『櫻木くん!今日のお昼は一緒にどうかな?』
『櫻木ちゃんって甘いもの好き?購買のホイップいちごサンド、おすすめだぜ!奢るから一回食べてみなって!』
お昼休みになると、2人揃ってぼくのところへお昼ご飯のお誘いに来るし……。
『櫻木くん、この後一緒に勉強しない?わからないところがあったら教えるよ』
『お前なぁ、学生は遊んでなんぼだろ!クレープ買いに行こうぜ、櫻木ちゃん!』
放課後になると、2人揃ってぼくのところへ寄り道のお誘いに来るし……。
……と、まあこんな感じで、先輩たちは何故かお互いのことはそっちのけでぼくにばかり構っている。一体何故……?
もしかして、ぼくが2人のことを言いふらしたりして邪魔しないように、警戒してる?あの時、『先輩たちの仲を邪魔するつもりはない』って言ったのになー……。
それとも、案外2人ともウブだったりして。まだ素直になれないから、ぼくでワンクッション置いているとか……。
いや、それならぼくじゃなくてもいいだろうし、さすがに考えすぎかなー……。
何にせよ、このままの状態では先輩たちの関係が進むのかどうか心配になってくる。何よりも、推したちの間に挟まるのは、見守る側としてはタブー行為……。
「どうにかして、先輩たちの興味をぼくからお互いの方に移す方法ないかなー……」
うんうん悩みながら、ぼくはスマホの画面をスワイプする。すると、とあるネット記事の見出しが、ぼくの目に飛び込んできた。
戸棚のお菓子を見つけた子供の如く、心の底からワクワクが湧き上がってくる。
「これだ!!」
_______
「レーブ・パラダイス?」
「はい!」
翌日のお昼休み、一緒にお昼ご飯を食べていた友沢先輩は、僕の口から出たワードを聞いて目を瞬かせる。
首を傾げてしばらく思案していたようだったが、ハッとした様子で『ああ!』と声を上げた。
「たしか、今話題の遊園地だっけ?名前だけならぼくも聞いたことあるよ。それで、そのレーブ・パラダイスがどうかした?」
「実はですね、昨日面白いサイトを見つけたんですよ!」
ぼくはスマホを取りだし、お目当てのネット記事のサイトを画面に写して、友沢先輩に見せた。
そのネット記事には、『隠れラーピッドちゃんで永遠の愛を』という見出しがついていた。
ラーピッドちゃんとは、レーブ・パラダイスのマスコットキャラクターだ。天使の羽が生えて、弓矢を持ったうさぎ……つまり、キューピッドのうさぎ。だから名前も、うさぎのラビットとキューピッドを組みあわせて、ラーピッドということらしい。
で、レーブ・パラダイスには、各所に隠れラーピッドちゃんと呼ばれる、ラーピッドちゃんのマークが隠されているらしい。それを見つけたカップルは、ずっと仲良しでいられるのだとか……。
まあ、よくある恋愛のジンクスってやつだ。
「へぇ、たしかに面白い話だね。宝探しみたいで、ちょっと楽しそうかも」
ぼくの話を聞いた友沢先輩は顔をほころばせる。落ち着いた大人っぽい人だと思っていたけど、無邪気な子供っぽいところもあるんだと、ぼくは思わずにやけてしまった。
それを誤魔化すように、ぼくは話を続ける。
「他にも、月末にはペアでダンスを踊るイベントがあったり、フードエリアにはカップル向けのお菓子やご飯があったり……レーブ・パラダイスは今、恋人の聖地として人気らしいんですよ!」
ふんす、と鼻をならし、ちょっとだけ得意げになりながら、ぼくは友沢先輩にレーブ・パラダイスをアピールした。
……そう、これはぼくの作戦だ。カップルにおすすめのスポットを、世間話を装いながら友沢先輩にすすめ、『怜央と一緒に行きたいな』と大神先輩とのデートを意識させる。そして大神先輩をデートに誘うように仕向ければ、2人はデートを通して仲を深められるってわけ!
「…………そうだね」
相槌をうちながらぼくの話を聞いてくれた友沢先輩は、顎に手を当てて何かを考え込む仕草を見せた。
すると、しばらく間を開けたあと、ふ、と爽やかに微笑んで言った。
「それじゃあ、今度の休みに2人で行こうか」
「!はい!ぜひ2人で!」
ぼくは食い気味に頷いた。やった、作戦が成功したんだと胸を踊らせる。
「ぼくと櫻木くんで」
「友沢先輩と大神先輩で!」
「「……えっ?」」
……同時に出たお互いの異なる答えを聞いて、ぼくたちはお互いを見つめたまま、ぽかんと口を開けて固まっていた。
__キーンコーンカーンコーン。
そんなぼくたちをほったらかしにするように、昼休み終了を告げるチャイムが鳴った。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】ハーレムラブコメの主人公が最後に選んだのは友人キャラのオレだった。
或波夏
BL
ハーレムラブコメが大好きな男子高校生、有真 瑛。
自分は、主人公の背中を押す友人キャラになって、特等席で恋模様を見たい!
そんな瑛には、様々なラブコメテンプレ展開に巻き込まれている酒神 昴という友人がいる。
瑛は昴に《友人》として、自分を取り巻く恋愛事情について相談を持ちかけられる。
圧倒的主人公感を持つ昴からの提案に、『友人キャラになれるチャンス』を見出した瑛は、二つ返事で承諾するが、昴には別の思惑があって……
̶ラ̶ブ̶コ̶メ̶の̶主̶人̶公̶×̶友̶人̶キ̶ャ̶ラ̶
【一途な不器用オタク×ラブコメ大好き陽キャ】が織り成す勘違いすれ違いラブ
番外編、牛歩更新です🙇♀️
※物語の特性上、女性キャラクターが数人出てきますが、主CPに挟まることはありません。
少しですが百合要素があります。
☆第1回 青春BLカップ30位、応援ありがとうございました!
第13回BL大賞にエントリーさせていただいています!もし良ければ投票していただけると大変嬉しいです!
アイドルくん、俺の前では生活能力ゼロの甘えん坊でした。~俺の住み込みバイト先は後輩の高校生アイドルくんでした。
天音ねる(旧:えんとっぷ)
BL
家計を助けるため、住み込み家政婦バイトを始めた高校生・桜井智也。豪邸の家主は、寝癖頭によれよれTシャツの青年…と思いきや、その正体は学校の後輩でキラキラ王子様アイドル・橘圭吾だった!?
学校では完璧、家では生活能力ゼロ。そんな圭吾のギャップに振り回されながらも、世話を焼く日々にやりがいを感じる智也。
ステージの上では完璧な王子様なのに、家ではカップ麺すら作れない究極のポンコツ男子。
智也の作る温かい手料理に胃袋を掴まれた圭吾は、次第に心を許し、子犬のように懐いてくる。
「先輩、お腹すいた」「どこにも行かないで」
無防備な素顔と時折見せる寂しげな表情に、智也の心は絆されていく。
住む世界が違うはずの二人。秘密の契約から始まる、甘くて美味しい青春ラブストーリー!
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する幼少中高大院までの一貫校だ。しかし学校の規模に見合わず生徒数は一学年300人程の少人数の学院で、他とは少し違う校風の学院でもある。
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語
陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
まったり書いていきます。
2024.05.14
閲覧ありがとうございます。
午後4時に更新します。
よろしくお願いします。
栞、お気に入り嬉しいです。
いつもありがとうございます。
2024.05.29
閲覧ありがとうございます。
m(_ _)m
明日のおまけで完結します。
反応ありがとうございます。
とても嬉しいです。
明後日より新作が始まります。
良かったら覗いてみてください。
(^O^)
ビッチです!誤解しないでください!
モカ
BL
男好きのビッチと噂される主人公 西宮晃
「ほら、あいつだろ?あの例のやつ」
「あれな、頼めば誰とでも寝るってやつだろ?あんな平凡なやつによく勃つよな笑」
「大丈夫か?あんな噂気にするな」
「晃ほど清純な男はいないというのに」
「お前に嫉妬してあんな下らない噂を流すなんてな」
噂じゃなくて事実ですけど!!!??
俺がくそビッチという噂(真実)に怒るイケメン達、なぜか噂を流して俺を貶めてると勘違いされてる転校生……
魔性の男で申し訳ない笑
めちゃくちゃスロー更新になりますが、完結させたいと思っているので、気長にお待ちいただけると嬉しいです!
先輩たちの心の声に翻弄されています!
七瀬
BL
人と関わるのが少し苦手な高校1年生・綾瀬遙真(あやせとうま)。
ある日、食堂へ向かう人混みの中で先輩にぶつかった瞬間──彼は「触れた相手の心の声」が聞こえるようになった。
最初に声を拾ってしまったのは、対照的な二人の先輩。
乱暴そうな俺様ヤンキー・不破春樹(ふわはるき)と、爽やかで優しい王子様・橘司(たちばなつかさ)。
見せる顔と心の声の落差に戸惑う遙真。けれど、彼らはなぜか遙真に強い関心を示しはじめる。
****
三作目の投稿になります。三角関係の学園BLですが、なるべくみんなを幸せにして終わりますのでご安心ください。
ご感想・ご指摘など気軽にコメントいただけると嬉しいです‼️
世界を救ったあと、勇者は盗賊に逃げられました
芦田オグリ
BL
「ずっと、ずっと好きだった」
魔王討伐の祝宴の夜。
英雄の一人である《盗賊》ヒューは、一人静かに酒を飲んでいた。そこに現れた《勇者》アレックスに秘めた想いを告げられ、抱き締められてしまう。
酔いと熱に流され、彼と一夜を共にしてしまうが、盗賊の自分は勇者に相応しくないと、ヒューはその腕からそっと抜け出し、逃亡を決意した。
その体は魔族の地で浴び続けた《魔瘴》により、静かに蝕まれていた。
一方アレックスは、世界を救った栄誉を捨て、たった一人の大切な人を追い始める。
これは十年の想いを秘めた勇者パーティーの《勇者》と、病を抱えた《盗賊》の、世界を救ったあとの話。
劣等アルファは最強王子から逃げられない
東
BL
リュシアン・ティレルはアルファだが、オメガのフェロモンに気持ち悪くなる欠陥品のアルファ。そのことを周囲に隠しながら生活しているため、異母弟のオメガであるライモントに手ひどい態度をとってしまい、世間からの評判は悪い。
ある日、気分の悪さに逃げ込んだ先で、ひとりの王子につかまる・・・という話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる