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エピソード3・ワガママ姫の失恋
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ルビアとサフィーは、それからすぐに仲良くなった。何度も何度も会う約束をしては、お茶をしたり、一緒にボートに乗ったりと
楽しい時間を過ごしていた。
「ねえサフィー、あたし達……前にどこかで会わなかった?」
川のほとりを歩いている時、ルビアはサフィーにそう尋ねた。サフィーは少し考えた後、手帳に言葉を書いた後、ルビアに見せる。手帳には、初めて会った時よりも丁寧な字で、こう書かれていた。
『ごめんなさい、わからないわ。でも、ルビアはとても可愛い顔をしているから、一度会ったら忘れないと思うの』
それを見たルビアは、少し残念そうに「そう……」と答えた。
__やはり、彼女は自分と会ったことを覚えていないのか。いや、彼女は自分が人魚であることを隠してるフシがあるから、知らないフリをしているのかもしれない。
ルビアは少し、チクリと胸が傷んだ。
(……いいの。彼女とこうして一緒にいられるだけで、あたしは幸せだもの)
ルビアは心の中で、自分にそう言い聞かせた。そして、いつかサフィーは本当のことを話してくれる……。そんな希望を、ほんの少し抱いていた。
__しかし、そんなルビアの幸せも希望も、サフィーの一言によって、打ち砕かれてしまうことになる。
「……結婚、する……?」
ルビアは震える声で、サフィーの手帳に書き記された字を読み上げた。
サフィーは少し照れくさそうに微笑んで頷けば、手帳にこのように書き込む。
『お世話になってる彼が、プロポーズをしてくれたの。といっても、彼は特殊な事情があって、正式な婚約や結婚は先になりそうだけど……。せめて言葉だけでも伝えたかったんですって』
楽しそうな笑みを浮かべるサフィーを他所に、ルビアはいきなり崖の下へ突き落とされたかのような感覚に陥っていた。
実は、私も彼のことをお慕いしていたの。というような文章を見た時は、そこに更に矢を打ち込まれてとどめをさされたようだった。
「……よかったじゃない、サフィー。お幸せに」
ルビアは顔に笑顔を貼り付けながら、サフィーにそう告げた。
けれど、小屋に帰った後も、ルビアの心の奥はズキズキと痛んでいた。
(……あたしの方が……サフィーを幸せにできるのに。あの子の良さは、誰よりもこのあたしが知っているのに……!!)
悔しさのあまり、ルビアは歯を食いしばり、涙を流す。そして、その悔しさをぶつけるように何度も何度も枕に打ち付けた後、そのままベッドにうつ伏せになった。
(……そうだ。いっそのこと、サフィーにあたしの想いを伝えましょう。そして、彼よりあたしを選ぶようにお願いするの。あの子は優しいから、きっとあたしの想いを受け入れてくれるはず……!!)
そんな考えが浮かび上がった時、窓の外から、男の声が聞こえた。どこかで聞いたことのある声だと思い、ルビアは立ち上がり、外の様子を見るために窓に近づいた。
「……あの人は、この間倒れていた……」
そう、そこで見えたのは、ルビアが以前介抱した男だった。彼は、誰かと楽しそうに談笑しながら、浜辺を散歩していた。
「……!」
目を凝らして見た時、ルビアは目を見開き、息を飲んだ。彼の隣にいたのは、サフィーだったからだ。もしかすると、彼がサフィーの結婚相手なのかだろうか?
ルビアの脳内に、すぐにでも外に飛び出し、「その男よりもあたしを選んで」と言ってしまおう、という考えが過った。けれど、彼女はそうしなかった。
何故なら、彼を見つめるサフィーは、とても幸せそうな顔をしていたからだ。声を出せずとも、笑い声が聞こえそうな程に。
あのような可愛らしい笑顔を、ルビアは今までに見たことがなかった。それを心の中で認めた時、ルビアは己を恥じた。
(……あたし、馬鹿だ……。自分勝手な考えで、あの子の幸せを奪おうとして……。あたし、あの子のこと、何もわかってなかった……)
ルビアは、先ほどとは全く意味の異なる涙を流した。
__自身が今まで抱いていた、サフィーへの恋心と共に。
楽しい時間を過ごしていた。
「ねえサフィー、あたし達……前にどこかで会わなかった?」
川のほとりを歩いている時、ルビアはサフィーにそう尋ねた。サフィーは少し考えた後、手帳に言葉を書いた後、ルビアに見せる。手帳には、初めて会った時よりも丁寧な字で、こう書かれていた。
『ごめんなさい、わからないわ。でも、ルビアはとても可愛い顔をしているから、一度会ったら忘れないと思うの』
それを見たルビアは、少し残念そうに「そう……」と答えた。
__やはり、彼女は自分と会ったことを覚えていないのか。いや、彼女は自分が人魚であることを隠してるフシがあるから、知らないフリをしているのかもしれない。
ルビアは少し、チクリと胸が傷んだ。
(……いいの。彼女とこうして一緒にいられるだけで、あたしは幸せだもの)
ルビアは心の中で、自分にそう言い聞かせた。そして、いつかサフィーは本当のことを話してくれる……。そんな希望を、ほんの少し抱いていた。
__しかし、そんなルビアの幸せも希望も、サフィーの一言によって、打ち砕かれてしまうことになる。
「……結婚、する……?」
ルビアは震える声で、サフィーの手帳に書き記された字を読み上げた。
サフィーは少し照れくさそうに微笑んで頷けば、手帳にこのように書き込む。
『お世話になってる彼が、プロポーズをしてくれたの。といっても、彼は特殊な事情があって、正式な婚約や結婚は先になりそうだけど……。せめて言葉だけでも伝えたかったんですって』
楽しそうな笑みを浮かべるサフィーを他所に、ルビアはいきなり崖の下へ突き落とされたかのような感覚に陥っていた。
実は、私も彼のことをお慕いしていたの。というような文章を見た時は、そこに更に矢を打ち込まれてとどめをさされたようだった。
「……よかったじゃない、サフィー。お幸せに」
ルビアは顔に笑顔を貼り付けながら、サフィーにそう告げた。
けれど、小屋に帰った後も、ルビアの心の奥はズキズキと痛んでいた。
(……あたしの方が……サフィーを幸せにできるのに。あの子の良さは、誰よりもこのあたしが知っているのに……!!)
悔しさのあまり、ルビアは歯を食いしばり、涙を流す。そして、その悔しさをぶつけるように何度も何度も枕に打ち付けた後、そのままベッドにうつ伏せになった。
(……そうだ。いっそのこと、サフィーにあたしの想いを伝えましょう。そして、彼よりあたしを選ぶようにお願いするの。あの子は優しいから、きっとあたしの想いを受け入れてくれるはず……!!)
そんな考えが浮かび上がった時、窓の外から、男の声が聞こえた。どこかで聞いたことのある声だと思い、ルビアは立ち上がり、外の様子を見るために窓に近づいた。
「……あの人は、この間倒れていた……」
そう、そこで見えたのは、ルビアが以前介抱した男だった。彼は、誰かと楽しそうに談笑しながら、浜辺を散歩していた。
「……!」
目を凝らして見た時、ルビアは目を見開き、息を飲んだ。彼の隣にいたのは、サフィーだったからだ。もしかすると、彼がサフィーの結婚相手なのかだろうか?
ルビアの脳内に、すぐにでも外に飛び出し、「その男よりもあたしを選んで」と言ってしまおう、という考えが過った。けれど、彼女はそうしなかった。
何故なら、彼を見つめるサフィーは、とても幸せそうな顔をしていたからだ。声を出せずとも、笑い声が聞こえそうな程に。
あのような可愛らしい笑顔を、ルビアは今までに見たことがなかった。それを心の中で認めた時、ルビアは己を恥じた。
(……あたし、馬鹿だ……。自分勝手な考えで、あの子の幸せを奪おうとして……。あたし、あの子のこと、何もわかってなかった……)
ルビアは、先ほどとは全く意味の異なる涙を流した。
__自身が今まで抱いていた、サフィーへの恋心と共に。
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