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ミツハナ脱退編
誕生日会(友巴1)
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3月5日の朝9時、友巴ちゃんの性格を表すような春うららかな空気が頬を包む。
「おはよう。シュウゴくん」
制服姿の友巴ちゃんが駆け寄ってくる。
「おはよう、友巴ちゃん。お誕生日おめでとう」
「ありがとう。今年もよろしくね」
「はは、新年の挨拶みたいだね」
「たしかに。言うなら、こんな私ですが、ずっとよろしくね、だね」
そう言い、友巴ちゃんが俺の腕に掴まってくる。俺を見上げる友巴ちゃんの笑顔がズキューンと胸を撃つ。
俺がすでに胸キュンなんですけど。
「ずっとずーっとすごく楽しみにしてたんだよ。シュウゴくんとの二人きりデート」
「俺も。ずっとずっとずーっと楽しみだったよ。でも正直、友巴ちゃんを胸キュンさせてあげられるか不安もあるかな」
「大丈夫。こうやってるだけで胸キュンだよ。二人きりデート、楽しもうね」
「なんだ。少し安心した。でもいくつか考えてきたから」
「えー、なんだろ」
「まずはこれ」
俺は友巴ちゃんの右手を取った。
その時、体全体に電気が走った。修学旅行で友巴ちゃんの肩にそっと触れた時と同じだ。
「うわ。私、今ビビッときた」
「友巴ちゃんもきた? 俺もきた」
「そうなの? さすが初恋同士。惹かれあってる証拠だね」
「そうだね。初恋の人とデートできて嬉しいよ。で、今日は初恋の友巴ちゃんとこうします」
友巴ちゃんの右手と俺の左手をつなぎ、指を絡ませた。恋人つなぎだ。
「これ、ずっとしたかった。シュウゴくん、胸キュンポイント1、ゲットだね」
「はは、なにそれ?」
「10ポイントたまったらいいことしようね」
「なんだろ? いいことを楽しみに頑張るよ」
「うん」
「では、まずは公園に行きます」
「公園? いいね。高校のデートっぽい」
「俺も友巴ちゃんも制服だからあやしいところに行けないからね」
「制服じゃなかったら、あやしいところ行くの?」
「行くかも。人気のない森の中とか」
「うわ。本当にあやしかった」
そんな話をしながらバスに乗る。
二人で並んで座ったが手はつなぎっぱなしだ。
「友巴ちゃん。昨日のスイーツはどうだった?」
昨日は帆乃花ちゃんが友巴ちゃんをお祝いしている。二人でスイーツブッフェに行ったはずだ。
「何もかもが美味しすぎて、めちゃくちゃたくさん食べちゃった。ほらこんなに」
そう言い友巴ちゃんはつないだ手を自分のお腹あたりに持っていった。
またしても俺が胸キュンなんです。
「全然ふくれてないよ。可愛いお腹」
「はは、お腹が可愛い?」
「うん。お腹も顔も性格もうなじも膝や肘も足の裏も全部可愛い」
「足の裏って。胸キュンポイントマイナス1点にしようかな」
「いやいや、友巴ちゃんの全てが可愛いってこと」
「まあ褒めてくれているっぽいのでギリギリセーフにしとくね」
「ふう。助かったぜ」
俺は大袈裟に右手で、ひたいの汗を拭く仕草をした。
「楽しいね、シュウゴくん」
「うん」
「シュウゴくんって、「ああ」とか「おお」って返事しないよね」
「俺って、俺様キャラでも王子様キャラでもないし」
「そうだよね。ねえ、シュウゴ様。公園でバトミントンいたしまするの?」
変な言葉で友巴ちゃんが尋ねてくるが、バトミントンのラケットが俺のスポーツバッグからはみ出しているので、誰が見ても丸わかりだ。
「ああ、そうだぜ」
ぷっと友巴ちゃんが吹き出した。
「シュウゴくん、似合わない」
「はは、だよね。普通にしとく」
こんな二人を乗せ、バスは、目的地の大型総合公園前に定刻より少し遅れて到着した。
ここには広い芝生広場や運動場、子供向け遊具のほか、図書館や美術館、フードコートまである。
「じゃあ図書館に行こうか」
「ん? バトミントンじゃなくて? 読みたい本があるの?」
「内緒」
さすがに図書館の中では手はつなげず、普通に並んで歩く。
「友巴ちゃん、ここに座って」
俺はカウンター席の椅子を引き、友巴ちゃんを座らせ、俺は椅子を友巴ちゃんよりに寄せて座った。
窓越しに、芝生広場で遊ぶ親子たちが見える。春ののどかで平和な風景だ。
「もう休憩?」
「そうだね」
俺はサッとポケットからスマホを取り出し、有線イヤホンをつけた。
「良い曲見つけたから聴いてくれる?」
「うん。聴く」
俺はイヤホンの片側を左耳につけ、もう片側を友巴ちゃんに渡した。
コードが短いため、友巴ちゃんが右耳を近づける。
「これ、シュウゴくんとやってみたかったやつだ」
そう言い友巴ちゃんはイヤホンをつけた。
流したのは穏やかでポップなメロディーの曲だ。
細かいことを言うと左右で音が違うため、聴いている音楽は同じではない。だが、流れる歌詞は同じだ。
「良い歌詞だね。これ、初恋の歌かな?」
曲が終了してところで友巴ちゃんが聞いてきた。
「そうだよ。『ずっと寄り添いたいと告げる勇気。そっと君の横顔照らす夕陽。消えゆく前に踏み出そう』ってところが好きなんだ」
なぜこの詩が好きかと言うと、実際に夕陽に照らされる友巴ちゃんの横顔を見ていると胸が今でもつまるからだ。
「へー。私が1年生の時に聴いてたら、シュウゴくんに告白する勇気をもらえたかも」
「マジで? もっと早くリリースしてくれたら良かったのにな」
「まあ今はこうしてシュウゴくんとデートできてるから幸せだよ」
友巴ちゃんはイヤホンを取って、俺の顔を下から覗き込んできた。
うわー、今すぐキスしたい。
でもここは図書館。そんなことは当然できない。
ではヒデキが藤木さんとしているこれだ。
「そう言えば友巴ちゃんとツーショットの写真、撮ってないよね」
「そう言えばそうだね。ホノカちゃんとのスリーショットはあるけど」
「一緒に撮ろうか」
俺はスマホのカメラをインカメにし、腕を伸ばす。
そして、友巴ちゃんの頬に俺の頬を寄せた。
カシャ
「見せて見せて」
スマホの画面を二人で覗き込む。
「シュウゴくん、顔赤いよ」
「友巴ちゃんだって」
「お二人さん。仲がいいのはいいけど、ここ図書館だからお静かにね」
緑色のエプロンをつけた図書館スタッフのお姉さんが、指を唇に当て注意してきた。
「す、すみません」
お姉さんは、うんとうなずき去っていった。
「ごめん、怒られちゃったね」
ささやき声で友巴ちゃんに謝る。
「シュウゴくんと一緒に怒られるのも新鮮だね。イヤホンとツーショット写真で胸キュン5ポイントかな。特に頬と頬寄せて写真はすっごいドキドキしたよ」
友巴ちゃんのささやき声も胸に響くよ。
「じゃあ図書館出て芝生広場に行こうか。そこなら大きな声出せるし」
「いいね。大きな声出したい」
芝生広場は結構広い。バトミントンをしても、小さい子にぶつかることはない。
「友巴ちゃん、バトミントン得意?」
「得意もなにもしたことないよ。初体験」
「そうなの? じゃあまず握り方から教えてあげるね」
俺は友巴ちゃんの後ろに立ち、密着とまでいかない微妙な距離を保ちつつ、友巴ちゃんの手を握り、グリップの握り方からラケットの振り方、シャトルの当て方までを教えた。
「手取り足取りありがとう。もういけそうだよ」
10メートルほど距離をとり、シャトルを軽く上げた。
友巴ちゃんは初めてだし、空振りするかなと思ったら、きれいにオーバーヘッドで打ち返してきた。俺はそれをなんとか拾って返す。
「やあ!」
友巴ちゃんは今度はバシッとスマッシュ気味に打ち返してきた。
オーバーとも言える動きで、おそらく後ろから見たら、スカートから下着が見えているだろう。
驚いた俺はシャトルを拾えず、落としてしまった。
「ちょっと、友巴ちゃんうそついたでしょ」
友巴ちゃんは絶対にバトミントン経験者だ。
「うそじゃないよ。芝生でするの初めてだもん」
「こら。普通には経験してるんじゃん」
「人並みにはね。よしシュウゴくん、勝負だ!」
「おいおい、剣道部をなめてもらっちゃあ困るぜ」
その後は和気あいあい、というよりも、バシバシとラリーを続けた。二人ともジャケットはすでに脱いでいる。
「ふう。3月になったばっかりなのに暑いから、美味しいね」
バトミントンを終え、レジャーシートに二人で並んで座った。
キッチンカーで買ったジンジャーエールを友巴ちゃんが飲む。俺も腕まくりをし、ネクタイを緩めゴクゴクと飲んだ。
「そうだね。うん、こっちもジューシーで美味しい」
キッチンカーで合わせて買ったハンバーガーにガブっとかじりつく。
「なんか私たち、今、青春してるね」
「青春かあ。二人でずっとこうしてたいね」
「そうだね。でも現実はもう受験まっしぐらだし、来月は……」
クラスが分かれてしまうと言いかけたのだろう。友巴ちゃんはうつむいてしまった。
「ココアで一緒に頑張ろうね」
「そうそう、昨日ホノカちゃんが言ってたよ。今までのココアはスイートだったけど、これからはビターにするって」
「ビター?」
「うん。ご褒美もそれぞれ月1回までかなだって」
「えーっ、まじか」
それぞれ1回ということは友巴ちゃんと1回、帆乃花ちゃんと1回ということか?
「私、絶対に特進コースに上がるから、シュウゴくんは普通コースに落ちないでね」
うっ、その可能性もあることをこれまで考えてこなかった。いくら顔も背丈も性格も全部普通でも特進コースに留まっていたい。
「俺もココアで頑張るよ」
「うん。でも今日はあま~いデートにしようね」
友巴ちゃんが頭を俺の肩にペタッと乗せてきた。友巴ちゃんは背が低いので正確には、俺の腕にだが。
ここがベッドなら押し倒していたところだが、子どももたくさんいる広場だ。俺はしばらくそのままにしておいた。
「知ってる? 男の人の腕まくりに女の人ってキュンってするんだって」
友巴ちゃんがつぶやく。
「そうなんだ。友巴ちゃんは?」
「私もシュウゴの腕まくりにキュンときたよ。早くシュウゴくんの腕に抱かれたい」
「俺も早く友巴ちゃんを包み込みたい」
「ねえ、このあとはどうするの?」
高校生らしいデートならば、ショッピング、カラオケ、映画といったところだが……。
俺は友巴ちゃんの頭を優しく元に戻し、キスをした。
「もう。ちびっ子が見てるよ」
そう友巴ちゃんが照れ笑いの表情で言う。
「誰にも邪魔されずに友巴ちゃんを胸キュンさせたい」
俺は友巴ちゃんを見つめ真顔で言った。
「私もシュウゴくんと二人きりの空間でドキドキしたい」
今度は友巴ちゃんも俺の目を見て真顔で言った。
「おはよう。シュウゴくん」
制服姿の友巴ちゃんが駆け寄ってくる。
「おはよう、友巴ちゃん。お誕生日おめでとう」
「ありがとう。今年もよろしくね」
「はは、新年の挨拶みたいだね」
「たしかに。言うなら、こんな私ですが、ずっとよろしくね、だね」
そう言い、友巴ちゃんが俺の腕に掴まってくる。俺を見上げる友巴ちゃんの笑顔がズキューンと胸を撃つ。
俺がすでに胸キュンなんですけど。
「ずっとずーっとすごく楽しみにしてたんだよ。シュウゴくんとの二人きりデート」
「俺も。ずっとずっとずーっと楽しみだったよ。でも正直、友巴ちゃんを胸キュンさせてあげられるか不安もあるかな」
「大丈夫。こうやってるだけで胸キュンだよ。二人きりデート、楽しもうね」
「なんだ。少し安心した。でもいくつか考えてきたから」
「えー、なんだろ」
「まずはこれ」
俺は友巴ちゃんの右手を取った。
その時、体全体に電気が走った。修学旅行で友巴ちゃんの肩にそっと触れた時と同じだ。
「うわ。私、今ビビッときた」
「友巴ちゃんもきた? 俺もきた」
「そうなの? さすが初恋同士。惹かれあってる証拠だね」
「そうだね。初恋の人とデートできて嬉しいよ。で、今日は初恋の友巴ちゃんとこうします」
友巴ちゃんの右手と俺の左手をつなぎ、指を絡ませた。恋人つなぎだ。
「これ、ずっとしたかった。シュウゴくん、胸キュンポイント1、ゲットだね」
「はは、なにそれ?」
「10ポイントたまったらいいことしようね」
「なんだろ? いいことを楽しみに頑張るよ」
「うん」
「では、まずは公園に行きます」
「公園? いいね。高校のデートっぽい」
「俺も友巴ちゃんも制服だからあやしいところに行けないからね」
「制服じゃなかったら、あやしいところ行くの?」
「行くかも。人気のない森の中とか」
「うわ。本当にあやしかった」
そんな話をしながらバスに乗る。
二人で並んで座ったが手はつなぎっぱなしだ。
「友巴ちゃん。昨日のスイーツはどうだった?」
昨日は帆乃花ちゃんが友巴ちゃんをお祝いしている。二人でスイーツブッフェに行ったはずだ。
「何もかもが美味しすぎて、めちゃくちゃたくさん食べちゃった。ほらこんなに」
そう言い友巴ちゃんはつないだ手を自分のお腹あたりに持っていった。
またしても俺が胸キュンなんです。
「全然ふくれてないよ。可愛いお腹」
「はは、お腹が可愛い?」
「うん。お腹も顔も性格もうなじも膝や肘も足の裏も全部可愛い」
「足の裏って。胸キュンポイントマイナス1点にしようかな」
「いやいや、友巴ちゃんの全てが可愛いってこと」
「まあ褒めてくれているっぽいのでギリギリセーフにしとくね」
「ふう。助かったぜ」
俺は大袈裟に右手で、ひたいの汗を拭く仕草をした。
「楽しいね、シュウゴくん」
「うん」
「シュウゴくんって、「ああ」とか「おお」って返事しないよね」
「俺って、俺様キャラでも王子様キャラでもないし」
「そうだよね。ねえ、シュウゴ様。公園でバトミントンいたしまするの?」
変な言葉で友巴ちゃんが尋ねてくるが、バトミントンのラケットが俺のスポーツバッグからはみ出しているので、誰が見ても丸わかりだ。
「ああ、そうだぜ」
ぷっと友巴ちゃんが吹き出した。
「シュウゴくん、似合わない」
「はは、だよね。普通にしとく」
こんな二人を乗せ、バスは、目的地の大型総合公園前に定刻より少し遅れて到着した。
ここには広い芝生広場や運動場、子供向け遊具のほか、図書館や美術館、フードコートまである。
「じゃあ図書館に行こうか」
「ん? バトミントンじゃなくて? 読みたい本があるの?」
「内緒」
さすがに図書館の中では手はつなげず、普通に並んで歩く。
「友巴ちゃん、ここに座って」
俺はカウンター席の椅子を引き、友巴ちゃんを座らせ、俺は椅子を友巴ちゃんよりに寄せて座った。
窓越しに、芝生広場で遊ぶ親子たちが見える。春ののどかで平和な風景だ。
「もう休憩?」
「そうだね」
俺はサッとポケットからスマホを取り出し、有線イヤホンをつけた。
「良い曲見つけたから聴いてくれる?」
「うん。聴く」
俺はイヤホンの片側を左耳につけ、もう片側を友巴ちゃんに渡した。
コードが短いため、友巴ちゃんが右耳を近づける。
「これ、シュウゴくんとやってみたかったやつだ」
そう言い友巴ちゃんはイヤホンをつけた。
流したのは穏やかでポップなメロディーの曲だ。
細かいことを言うと左右で音が違うため、聴いている音楽は同じではない。だが、流れる歌詞は同じだ。
「良い歌詞だね。これ、初恋の歌かな?」
曲が終了してところで友巴ちゃんが聞いてきた。
「そうだよ。『ずっと寄り添いたいと告げる勇気。そっと君の横顔照らす夕陽。消えゆく前に踏み出そう』ってところが好きなんだ」
なぜこの詩が好きかと言うと、実際に夕陽に照らされる友巴ちゃんの横顔を見ていると胸が今でもつまるからだ。
「へー。私が1年生の時に聴いてたら、シュウゴくんに告白する勇気をもらえたかも」
「マジで? もっと早くリリースしてくれたら良かったのにな」
「まあ今はこうしてシュウゴくんとデートできてるから幸せだよ」
友巴ちゃんはイヤホンを取って、俺の顔を下から覗き込んできた。
うわー、今すぐキスしたい。
でもここは図書館。そんなことは当然できない。
ではヒデキが藤木さんとしているこれだ。
「そう言えば友巴ちゃんとツーショットの写真、撮ってないよね」
「そう言えばそうだね。ホノカちゃんとのスリーショットはあるけど」
「一緒に撮ろうか」
俺はスマホのカメラをインカメにし、腕を伸ばす。
そして、友巴ちゃんの頬に俺の頬を寄せた。
カシャ
「見せて見せて」
スマホの画面を二人で覗き込む。
「シュウゴくん、顔赤いよ」
「友巴ちゃんだって」
「お二人さん。仲がいいのはいいけど、ここ図書館だからお静かにね」
緑色のエプロンをつけた図書館スタッフのお姉さんが、指を唇に当て注意してきた。
「す、すみません」
お姉さんは、うんとうなずき去っていった。
「ごめん、怒られちゃったね」
ささやき声で友巴ちゃんに謝る。
「シュウゴくんと一緒に怒られるのも新鮮だね。イヤホンとツーショット写真で胸キュン5ポイントかな。特に頬と頬寄せて写真はすっごいドキドキしたよ」
友巴ちゃんのささやき声も胸に響くよ。
「じゃあ図書館出て芝生広場に行こうか。そこなら大きな声出せるし」
「いいね。大きな声出したい」
芝生広場は結構広い。バトミントンをしても、小さい子にぶつかることはない。
「友巴ちゃん、バトミントン得意?」
「得意もなにもしたことないよ。初体験」
「そうなの? じゃあまず握り方から教えてあげるね」
俺は友巴ちゃんの後ろに立ち、密着とまでいかない微妙な距離を保ちつつ、友巴ちゃんの手を握り、グリップの握り方からラケットの振り方、シャトルの当て方までを教えた。
「手取り足取りありがとう。もういけそうだよ」
10メートルほど距離をとり、シャトルを軽く上げた。
友巴ちゃんは初めてだし、空振りするかなと思ったら、きれいにオーバーヘッドで打ち返してきた。俺はそれをなんとか拾って返す。
「やあ!」
友巴ちゃんは今度はバシッとスマッシュ気味に打ち返してきた。
オーバーとも言える動きで、おそらく後ろから見たら、スカートから下着が見えているだろう。
驚いた俺はシャトルを拾えず、落としてしまった。
「ちょっと、友巴ちゃんうそついたでしょ」
友巴ちゃんは絶対にバトミントン経験者だ。
「うそじゃないよ。芝生でするの初めてだもん」
「こら。普通には経験してるんじゃん」
「人並みにはね。よしシュウゴくん、勝負だ!」
「おいおい、剣道部をなめてもらっちゃあ困るぜ」
その後は和気あいあい、というよりも、バシバシとラリーを続けた。二人ともジャケットはすでに脱いでいる。
「ふう。3月になったばっかりなのに暑いから、美味しいね」
バトミントンを終え、レジャーシートに二人で並んで座った。
キッチンカーで買ったジンジャーエールを友巴ちゃんが飲む。俺も腕まくりをし、ネクタイを緩めゴクゴクと飲んだ。
「そうだね。うん、こっちもジューシーで美味しい」
キッチンカーで合わせて買ったハンバーガーにガブっとかじりつく。
「なんか私たち、今、青春してるね」
「青春かあ。二人でずっとこうしてたいね」
「そうだね。でも現実はもう受験まっしぐらだし、来月は……」
クラスが分かれてしまうと言いかけたのだろう。友巴ちゃんはうつむいてしまった。
「ココアで一緒に頑張ろうね」
「そうそう、昨日ホノカちゃんが言ってたよ。今までのココアはスイートだったけど、これからはビターにするって」
「ビター?」
「うん。ご褒美もそれぞれ月1回までかなだって」
「えーっ、まじか」
それぞれ1回ということは友巴ちゃんと1回、帆乃花ちゃんと1回ということか?
「私、絶対に特進コースに上がるから、シュウゴくんは普通コースに落ちないでね」
うっ、その可能性もあることをこれまで考えてこなかった。いくら顔も背丈も性格も全部普通でも特進コースに留まっていたい。
「俺もココアで頑張るよ」
「うん。でも今日はあま~いデートにしようね」
友巴ちゃんが頭を俺の肩にペタッと乗せてきた。友巴ちゃんは背が低いので正確には、俺の腕にだが。
ここがベッドなら押し倒していたところだが、子どももたくさんいる広場だ。俺はしばらくそのままにしておいた。
「知ってる? 男の人の腕まくりに女の人ってキュンってするんだって」
友巴ちゃんがつぶやく。
「そうなんだ。友巴ちゃんは?」
「私もシュウゴの腕まくりにキュンときたよ。早くシュウゴくんの腕に抱かれたい」
「俺も早く友巴ちゃんを包み込みたい」
「ねえ、このあとはどうするの?」
高校生らしいデートならば、ショッピング、カラオケ、映画といったところだが……。
俺は友巴ちゃんの頭を優しく元に戻し、キスをした。
「もう。ちびっ子が見てるよ」
そう友巴ちゃんが照れ笑いの表情で言う。
「誰にも邪魔されずに友巴ちゃんを胸キュンさせたい」
俺は友巴ちゃんを見つめ真顔で言った。
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今度は友巴ちゃんも俺の目を見て真顔で言った。
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