もう我慢しなくて良いですか? 【連載中】

青緑 ネトロア

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第一部

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夜が明け、雨が降りそうな曇り空の下で、聖騎士たちは魔物の討伐に勤しんでいた。

「そっちに行ったぞ!食い止めろ。」

「いや、まずは正面だ。陣形を崩すんじゃない!」

偶に小柄な魔物が足下を駆け抜ける中、背の高くて大きな魔物に対処する。
彼らは枢機卿から食用にできる個体の討伐を命じられていた。

始めは難なく討伐できた魔物も、数を相手に身体を動かす内に疲労が溜まっていく。
それを見越して、空を旋回しているネリが急降下で注意を逸らす役目を請け負っている。

メリシャから怪我人を最小限にという願いを聞いていたネリに妥協という言葉はなく、積極的に介入を試みる。


聖騎士たちが魔物の討伐に加え、食糧を調達している一方で天幕では生活基盤を整えようと画していた。

枢機卿を筆頭に神官が配置に付き、結界で広範囲を囲い、結界の範囲内の気候を変える陣を作っていく。
所々不備がある箇所は、ルーが巨大化した姿で補正に入り、刻一刻と完成に近付いている。

神官たちはルーが補正する度、手を煩わせないために奔走し合っていた。
枢機卿はこの光景を普段から見慣れてしまった影響で、落ち着いて陣の構築に専念できていた。


遠目で砦から眺めている兵士がいた。

「隊長。アレってアレですよね?」

後ろを通りかかった班のリーダー格へ咄嗟に話しかける兵士。

「ん?そうだろう、教会由来のアレだろうな。」

「上に報告しますか?」

何か問題が起これば報告が必至と心得ていたが、自分では判断が難しいと兵士は考えている。
視線の先では、この地域で強敵に分類される魔物を天幕へ運ぶ一団が見受けられる。
事前に教会所属の彼らが問題のある行動を起こした際に、報告をするように命じられていた。

だが隊長はバッサリと切り捨てる。

「——面倒だし、黙認しろ。俺たちにゃ、関係ない話だ。上も彼らの動向の一つや二つを逐一報告されては悩ませるだけだ。」

「了解です。」

兵士は隊長が屋内に戻っていく背中を眺めながら、気持ちを切り替えて監視を続行する。
こうして、この一帯の一角で生態系が崩れたことが判明する事なく、教会一行はゆるりと過ごすのだった。


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※お知らせ※

次回更新日程:2024年11月5日 17:00・予定

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