もう我慢しなくて良いですか? 【連載中】

青緑 ネトロア

文字の大きさ
78 / 114
第一部

77

しおりを挟む

押し寄せる魔物の群れを聖騎士と神官で倒していく光景を眼下に留め、ネリは身体を縮めながら天幕へと戻っていく。

「お疲れ様、ネリ。」

『メリシャ様、ありがとうございます』

天幕で出迎えたメリシャに抱えられ、見守られながらネリは眠りにつく。

その離れた先では、魔物と聖騎士たちの喧騒が鳴り響いている。
傍らでルーは魔物や周りを警戒して、じっと戦場の様子を見つめる。

喧騒が収まっていくと、次第に歓喜へと変わって周りの雰囲気を塗り替えていった。

天幕へ戻ってきた聖騎士と神官を招き、疲れを癒す場を設けた。

遠くからも見えた魔物の死体はおびただしい数となっていた。

入れ替わるように天幕の中で控えていた聖騎士が討伐し終えた魔物を一箇所にまとめていく。
他の魔物を寄り付かせないためであり、二次被害を起こさないために、聖魔法で燃やすためだ。

枢機卿は神官を二つのグループに分ける。

一つのグループはメリシャが受け持っていた、魔物との戦いを終えた聖騎士と神官の治療へ着手する。
治療を終えた人から休憩用に設置した簡易ベッドへ案内している。

もう一つのグループは魔物を燃やす係となった。
事前に集めた山を囲み、結界を構築した時と同様に聖魔法を行使していく。


その光景を遠く離れた砦で多くの兵士が静かに眺めていた。

始めは原因究明に奔走していた兵士たちだったが、あのほとばしった光を見た兵士の言伝は直ぐに広まり、駆け付けた兵士もただ見上げることしかできなかった。

光が収まる頃には砦の見張り台を中心に、砦に常駐する兵士のほとんどが佇んでいた。

同時に騒がしかった地鳴りも落ち着きを取り戻し、ある一点が浮き彫りになっていく。

一人が気付けば、その周りにいた兵士も気付き、その場に居合わせた兵士たちが動揺した。

教会の一行が寝泊まりしている天幕の近くに、魔物の死体が数え切れないほど、多く倒されていたからだ。

その晩、状況を整理し終えた幹部が全員、会議室で頭を悩ませたのは言うまでもない。

何故なら砦から一兵すら加勢に行かなかったためだ。

彼らは教会の一行から非難されないかという保身のみに囚われ、数日間一睡もできなかったという。


--------------------

※お知らせ※

次回更新日程:2025年1月4日 17:00・予定
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

乙女ゲームのヒロインが純潔を重んじる聖女とか終わってません?

ララ
恋愛
私は侯爵令嬢のフレイヤ。 前世の記憶を持っている。 その記憶によるとどうやら私の生きるこの世界は乙女ゲームの世界らしい。 乙女ゲームのヒロインは聖女でさまざまな困難を乗り越えながら攻略対象と絆を深め愛し合っていくらしい。 最後には大勢から祝福を受けて結婚するハッピーエンドが待っている。 子宝にも恵まれて平民出身のヒロインが王子と身分差の恋に落ち、その恋がみのるシンデレラストーリーだ。 そして私はそんな2人を邪魔する悪役令嬢。 途中でヒロインに嫉妬に狂い危害を加えようとした罪により断罪される。 今日は断罪の日。 けれど私はヒロインに危害を加えようとしたことなんてない。 それなのに断罪は始まった。 まあそれは別にいいとして‥‥。 現実を見ましょう? 聖女たる資格は純潔無垢。 つまり恋愛はもちろん結婚なんてできないのよ? むしろそんなことしたら資格は失われる。 ただの容姿のいい平民になるのよ? 誰も気づいていないみたいだけど‥‥。 うん、よく考えたらこの乙女ゲームの設定終わってません??

運命に勝てない当て馬令嬢の幕引き。

ぽんぽこ狸
恋愛
 気高き公爵家令嬢オリヴィアの護衛騎士であるテオは、ある日、主に天啓を受けたと打ち明けられた。  その内容は運命の女神の聖女として召喚されたマイという少女と、オリヴィアの婚約者であるカルステンをめぐって死闘を繰り広げ命を失うというものだったらしい。  だからこそ、オリヴィアはもう何も望まない。テオは立場を失うオリヴィアの事は忘れて、自らの道を歩むようにと言われてしまう。  しかし、そんなことは出来るはずもなく、テオも将来の王妃をめぐる運命の争いの中に巻き込まれていくのだった。  五万文字いかない程度のお話です。さくっと終わりますので読者様の暇つぶしになればと思います。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

石塔に幽閉って、私、石の聖女ですけど

ハツカ
恋愛
私はある日、王子から役立たずだからと、石塔に閉じ込められた。 でも私は石の聖女。 石でできた塔に閉じ込められても何も困らない。 幼馴染の従者も一緒だし。

【完結】「俺は2番目に好きな女と結婚するんだ」と言っていた婚約者と婚約破棄したいだけだったのに、なぜか契約聖女になってしまいました

As-me.com
恋愛
完結しました。 番外編(編集済み)と、外伝(新作)アップしました。  とある日、偶然にも婚約者が「俺は2番目に好きな女と結婚するんだ」とお友達に楽しそうに宣言するのを聞いてしまいました。  例え2番目でもちゃんと愛しているから結婚にはなんの問題も無いとおっしゃっていますが……そんな婚約者様がとんでもない問題児だと発覚します。  なんてことでしょう。愛も無い、信頼も無い、領地にメリットも無い。そんな無い無い尽くしの婚約者様と結婚しても幸せになれる気がしません。  ねぇ、婚約者様。私はあなたと結婚なんてしたくありませんわ。絶対婚約破棄しますから!  あなたはあなたで、1番好きな人と結婚してくださいな。 ※この作品は『「俺は2番目に好きな女と結婚するんだ」と婚約者が言っていたので、1番好きな女性と結婚させてあげることにしました。 』を書き直しています。内容はほぼ一緒ですが、細かい設定や登場人物の性格などを書き直す予定です。

聖女は魔女の濡れ衣を被せられ、魔女裁判に掛けられる。が、しかし──

naturalsoft
ファンタジー
聖女シオンはヒーリング聖王国に遥か昔から仕えて、聖女を輩出しているセイント伯爵家の当代の聖女である。 昔から政治には関与せず、国の結界を張り、周辺地域へ祈りの巡礼を日々行っていた。 そんな中、聖女を擁護するはずの教会から魔女裁判を宣告されたのだった。 そこには教会が腐敗し、邪魔になった聖女を退けて、教会の用意した従順な女を聖女にさせようと画策したのがきっかけだった。

婚約破棄が私を笑顔にした

夜月翠雨
恋愛
「カトリーヌ・シャロン! 本日をもって婚約を破棄する!」 学園の教室で婚約者であるフランシスの滑稽な姿にカトリーヌは笑いをこらえるので必死だった。 そこに聖女であるアメリアがやってくる。 フランシスの瞳は彼女に釘付けだった。 彼女と出会ったことでカトリーヌの運命は大きく変わってしまう。 短編を小分けにして投稿しています。よろしくお願いします。

女神に頼まれましたけど

実川えむ
ファンタジー
雷が光る中、催される、卒業パーティー。 その主役の一人である王太子が、肩までのストレートの金髪をかきあげながら、鼻を鳴らして見下ろす。 「リザベーテ、私、オーガスタス・グリフィン・ロウセルは、貴様との婚約を破棄すっ……!?」 ドンガラガッシャーン! 「ひぃぃっ!?」 情けない叫びとともに、婚約破棄劇場は始まった。 ※王道の『婚約破棄』モノが書きたかった…… ※ざまぁ要素は後日談にする予定……

処理中です...