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VOL16 「地上10mを舞うアーティスト」

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ー転生のアメリカ編 VOL16ー
「地上10mを舞うアーティスト」
ラスベガス 1990年3月

「サーカスサーカス」というホテルが
なかなか楽しい。
表にあるピエロのカンバンは世界一の
大きさでギネスブックに載っている。
映画「007」などに登場。
夜中にこのホテルのとてつもなく広い
敷地内を歩いていて、空中に長く続く
派手な電球で飾られた通路を見上げて
それが何なのかわからなかった。
直後、何かが近づいてくる音がして
頭の上をモノレールが人を乗せて
当たり前のように通過していくのを
見て驚いた!
このホテルは3、4棟から成る
建物同士を空中を走るモノレールで
つないでいるのだった。
ぜ、ぜいたくう!!

宿泊料金もビュッフェ
(バイキング料理)も
すごく安いだけでなく、
このホテルにはいくつか特徴がある。
屋上には密閉されて空調された
ドームの中にミニ遊園地があり、
暑い砂漠気候の中でも
ジェットコースターなどが楽しめる。
(その後外気に体をさらして
きらびやかな夜景を見ながらする
フリーフォールを屋上に設置している
ホテルなどもできた。
さらにテーマパークのようなものまで
ドンドコ登場。)

サーカスのテントを型取った建物に
入ると1階のカジノから
直径40~50mの吹き抜けがあり、
その2階部分にはサーカスの
ステージがある。
1時間ごとに15分ほどのショーが
無料で行われる。
ナイフ投げ、空中ブランコ、
綱渡りなどが2~4人のチーム
によって披露される。
白髪のじいさんのドラムや
おばちゃんのエレキピアノの生演奏が
臨場感を盛り上げてくれる。
アメリカではとにかく生演奏によく出会う。

ナイフ投げはとにかくハラハラする。
もし失敗したら一体どおーなるんよ?
失敗したことないのお?
アブナイことがけっこう好きとはいえ
先端恐怖症の俺にはあのナイフを
投げつけられる役は絶対できなーい!

一番のお気に入りはなんたって
空中ブランコだ。
まえに器械体操をしていた俺には
ちょっと身近に感じる世界でもある。
10mほどもある高さの塔に立って
大きく揺れるブランコを見つめ、
飛びつくタイミングを計る
男の真剣な眼差し。
じいさんのドラムロールが
控えめの音量で
タララララララララララ、、、、、
と緊張感を醸し出す。
行ったっ!
ブランコに飛びつく。
落下した時のために防護ネットが
用意されているとはいえ、
大きく振られたブランコから
飛び出して後方伸身宙返り2回ひねり
をバッチリきめて、
向かいのブランコに逆さ吊りに
なっているパートナーの腕を
ガシッと掴むのを目の前で見るのは
すごい迫力だ。
生演奏がボリュームを上げて、
お客さんの歓声と拍手が巻き起こる。
高い塔の上に立ち、誇らしげな表情で
大きく腕を広げ観客の声援に応える
演者たち。
華やかな照明によってセクシーな女の
スパンコールの衣装や、彼らが
滑り止めに手につける白い粉
(炭酸マグネシウム)が
空中をゆっくり舞い落ちながら
キラキラ輝くのを眺めていると
わくわくするのだ。
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