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元獣人と元人間
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私は猫が好きだ。
猫になりたいという願望も抱いたことすらある。
だけどさ、波乱万丈すぎるでしょ……これは……。
ウッドデッキの一戸建て。
それが私の家だ。
その家は二階建てで、1階は窓が多く、光の入りも実に良い好物件である。
そして、とある日。
私はいつもの様に空いた時間にテレビでアニマルチャンネルを見ていた。
するとドアからカリカリとちいさく何かが一生懸命引っ掻く音が聞こえる。
不思議に思った私は扉を開けてみた。
そこにはご機嫌に尻尾をぴんと上に立てた青くつぶらな瞳の黒い子猫がちょこんと佇んでいた。近くに親もいないようである。
よくよく見てみると、足元の毛がパサパサで赤く染まっているのが見えた。
「おまえ、怪我をしているの?」
なぁー。と、子猫、かかおと名付けよう。は小さく鳴く。
おいで、手当してあげる。とその猫を扉を大きく開けて中に招き入れた。
その小さな客人は手当をし終わったあとも、物珍しいのかあっちをキョロキョロ、こっちをキョロキョロとどこか忙しない。
やがてそれにも飽きたのか私の元へちょこちょこと歩み寄ってきた。
スリスリと擦り付けるその毛並みは匂いこそ野生だが、ふさふさと良い毛並みをしていた。
そして満足したのか、扉を開けてくれと、扉の目の前で一声鳴いた。
小さな客人が帰ってしまう。
一人暮らしでどこか寂しかった私は、家の少し前にある道路を言い訳に、見送るだけだと誰にでもなくぼやきながら黒猫の後を追ったのだった。
先程まで眩しいほどの真昼であったはずが、いつの間にか暮れ落ち、黒猫さえも見失う始末。
「まって、、ここ、こんなに木が深かったっけ……。」
道路に面しているため、その仕切りに作った茂みであったので、鬱蒼としすぎているこの森にいる状況がいかに異常か、私はわかっていた。
しかし、説明のつかなすぎるこの展開に、現実逃避をしたくなる気持ちも頷けるので最早何も言えない。
つまり、私は、現状に気付かないふり。をしたのである。
「お姉さん。どうしたの?迷ったの?」
突然背後から声変わり前の少年のようなソプラノボイスが聞こえる。
ふっと振り向くとしかしそこに居たのは二足歩行のぶち猫であった。
その奇異さに現実逃避をするべく、またも気の所為と気持ちを落ち着かせ前へと進もうとしたが、
今度はもふもふに阻まれる。
「迷子になっちゃったなら、こっちに来なよ!」
にぱっと満開の笑顔を咲かせ、言い放ったそれは、明らかに猫の顔であった。
完全なるキャパシティオーバーで、停止してしまった私の手を挟んで(?)ぶち猫はある一点に歩みを進めた。
……。ちょっとまて。ここはうちの近所のはずだ
田舎が故か一軒と1軒が離れている今の自宅はちょっとした林はあれども。ほとんど道路と田んぼのはずだ。だから……
うちの近所に学校なんてある訳が無い。
しかもその面子がまた問題である。
ペリカン、ライオン、ウサギに、犬猫。
ちょっとまて。ここはどこの動物園だ。
いよいよ言い訳も効かなくなり、
逃避を失い呆然とする私を尻目にあれよあれよとクラスまで決められてしまい。その生活を強いられるはめに。
しかし、そんなある日、変化は訪れた。
だんだんと、背は縮み、牙と呼んでも過言ではないものまで生え揃っている。
私の身体が適応してきたのだ。
原理は分からないが、今の私は猫になっていた。
しかしどうだろう、猫になってみて性格も猫になり、いつしか楽しいとまで思うように。食事睡眠を一切必要としないこの世界に、猫の本能になっているのか、馴染み始めたのだ。
1人鼻歌を歌いつつ、無駄に長い廊下で尻尾を揺らしつつのんびり歩く私。
そんなときだった。
「ちょっと!」
やたら焦ったようなそんな声に引き留められる。
ご機嫌に廊下を歩いていたのに邪魔をされて怪訝になる私。
目の先には黒いもふもふと青の瞳があった。
なんでここに居るの!?
とばかりに捲し立てる彼に違和感をふと覚える。
「……きみ、どこかで会った?」
目の前の猫は硬直し、目を見開き、一瞬停止する。しかし、すぐに彼は鋭い目付きになり、焦った様子で私の手をひいた。
「帰るよ。君の元の世界に。ここは君がいていい場所じゃない」
そう言い放ち力強く私の前足をひっぱる。
「?何処に?」
「君の家だ。今の君はとても危うい。」
何を言っているんだろうかと手を振り払おうとするが、力差で負ける。
ついたよ。
その声で前を見据えるとそこはどこか歪んだ空間で、私達の足元から 1畳分程のスペース が空いていた。そしてその向こうに見慣れた風景。
「私の……家……?」
原理などはやはり分からない。けどその向こうに波紋状の歪んだ景色に私の家、ウッドハウスが映っていたのだ。
それを見るや否や、人としての記憶がいっせいに押し寄せる。
そうだ。なんでこんなこと忘れてたんだろうと慄く。
恐らくそれも理性が本能に押しつぶされていたのだろうが。
そして、半ば強引に私を引いてきた彼は、手当した証をそのままにしていたため、先日我が家に招待した黒猫だということも思い出した。
「ここから先は君一人で行って。僕は行けないから。」
すっかり隣にいる彼と共に帰るつもりだった私。
どうして?と聞く前に、ふさふさとした大きな耳を後ろに倒し、彼は俯く。
心做しか、彼の尾も元気がないように見えた。
「僕は……あちらの者ではないから……ここから先は進めないんだ……、」
きくと、この世界に何かを持ち込めば持ち込んだものが元の世界とのキーになり、渡れるが、何一つ持っていないと歪みに体を持っていかれるらしい。
前回はそちらからの迷い物を持っていたんだそうだ。
(※迷い物 :時折その世界に次元を超えて落ちているものらしい。)
あちらの世界からの持ち物と聞いて、家での事柄をふと思い出した。
そう。“元いた世界”で、手当に使った布である。
「それじゃあ、ダメなの?」
私は彼の足を指さしながらたずねた。
多分かなり前に手当したものだった。
少しばかり薄汚れていてずっと付けていたことが伺える。
気づいていなかったのか彼は目を瞬かせる。
その仕草は実に愛猫家として擽られるが、どうしても、ここで離れたくない。
そう思った私はもう一押しをかけてみた。
「私一人暮らしでさ、すごく寂しかったんだ。良かったらさ。うちに、来ない?」
動物とか飼ってなくてさ、いいかな?と苦笑いで尋ねると。
「え?」
瞬いていた青の水晶が大きく見開かれる。
いい、の?
ぽつりと、彼は呟いた。
思えば、本能に帰巣行動がなかったのも、アチラで1人きりの寂しい思いを避ける為だったのかもしれない。
猫のままでも。人間のままでも。
君となら、きっと生きていける気がするから。
「一緒に、いこう?」
もし人間に戻れなくても、この黒い少年とならやって行ける気がするから、僅かな不安を隠し手を差し伸べた。
何故か少し涙目に微笑む彼が
「仕方ないな。飼われてあげる。」
とつぶやく姿が
私にはとても愛しく思えた。
帰りたい本能のままに赤茶猫な私と黒猫のカカオはしっかり前脚をとりあい。
離さないようにぎゅっと絡めたまま、その1畳を超えた。
ふわと変な感覚の後、何かが変わる感触。何かが飲み込まれて、それを引き伸ばされる感覚。
地面に着いた頃、視線が高くなっていて、すっかり人間の姿になっていたことを悟った。
はしゃいだ私だったが、ふと、黒猫がいないことに気づいた。
カカオ?
呼びかけるも反応はない。
焦った。もしかしたら彼が言うところの歪みに引きずり込まれたのではと。
震える声で、2回目を呼びかけてみた。
「かか、」
「ちょっとまってそれ、もしかして僕の名前?」
面食らったような呆れたようなそんな声が私の後ろから聞こえた。
そう言えば、命名してから声に出して1度も呼んでいなかった。
というか決めた時くらいではないか?心の内で呼んだのは。
「毛の色が、チョコレートみたいだったから。だめかな?」
こてんと首を傾げると、
一呼吸置いたあと、カカオはいいんじゃない。と仏頂面で呟いた。
その際に少しだけ頬が赤くなったのを私は見逃してやるものか。
そして、違和感に気づいた。
「カカオ、なんで、人間になってるの……?」
「元人間の君が猫になってたからじゃない?戻す時にたまたま同じ種族の姿だった僕もいたりして、空間が誤認識、誤作動でも起こしたんでしょ。」
なんにでもなさげにカカオは呟く。
私の獣人化がまさかの原因だった。元に戻る際にカカオまで元人間としてご認識されたのか。
面食らった私だったが、
しかしまあ、と、カカオの容姿を見てみる。
黒のふわふわは男の子にしてはロングなショート。青くぱっちりした水晶のような瞳は、色はそのままにガラス玉のような瞳に。もふもふに包まれて日に焼けることをしらない肌は雪のような白い肌!!
。なんだこの美少年。
「ここはもう時期崩れる。急ぐよ。」
照れたのか彼の耳と尻尾はぶんぶんと忙しなく振られている。
しかし、彼の危うい発言に面食らった私を見て、彼はクスッと丸い瞳を3日月に歪めた。
いたずらなその表情を見て、あ、やばいと思ったが。その顔は、すでに隠しきれない程に赤くなってしまっていた。
《後日談》
「そういえばさ、カカオ、猫耳生えてない?なんで中途半端なのよ?」
「そう言われてみれば、君も同じ状況なんだけど?」
「え」
指をさされた場所、つまり頭部に掌を翳してみると、何かが指にあたって弾かれる感触。
「え、ぇええええっっ!?」
元人間の半獣、元獣の半人間。
この日を境に二人きりの秘密が出来た。
異世界のお土産は、可愛い黒猫でした。
「いやこれどうするよ。
隠すにも一苦労だよ!?」
「さぁ?見つかっても何とかなるんじゃない?」
そんなお気楽な……、と呆然とする私と、何処かご機嫌の彼は瞳を合わせ、
一周まわって面白くなったのかくすくすと2人笑いあった。
「あっみつかったとしても解剖だけは私嫌。」
「……かいぼう?なにそれ?」
きっとこの猫と共にいる限り忙しないまいにちになるんだろうな。
怪訝な顔をした猫を見て私は思うのだった。
❦ℯꫛᎴ❧
猫になりたいという願望も抱いたことすらある。
だけどさ、波乱万丈すぎるでしょ……これは……。
ウッドデッキの一戸建て。
それが私の家だ。
その家は二階建てで、1階は窓が多く、光の入りも実に良い好物件である。
そして、とある日。
私はいつもの様に空いた時間にテレビでアニマルチャンネルを見ていた。
するとドアからカリカリとちいさく何かが一生懸命引っ掻く音が聞こえる。
不思議に思った私は扉を開けてみた。
そこにはご機嫌に尻尾をぴんと上に立てた青くつぶらな瞳の黒い子猫がちょこんと佇んでいた。近くに親もいないようである。
よくよく見てみると、足元の毛がパサパサで赤く染まっているのが見えた。
「おまえ、怪我をしているの?」
なぁー。と、子猫、かかおと名付けよう。は小さく鳴く。
おいで、手当してあげる。とその猫を扉を大きく開けて中に招き入れた。
その小さな客人は手当をし終わったあとも、物珍しいのかあっちをキョロキョロ、こっちをキョロキョロとどこか忙しない。
やがてそれにも飽きたのか私の元へちょこちょこと歩み寄ってきた。
スリスリと擦り付けるその毛並みは匂いこそ野生だが、ふさふさと良い毛並みをしていた。
そして満足したのか、扉を開けてくれと、扉の目の前で一声鳴いた。
小さな客人が帰ってしまう。
一人暮らしでどこか寂しかった私は、家の少し前にある道路を言い訳に、見送るだけだと誰にでもなくぼやきながら黒猫の後を追ったのだった。
先程まで眩しいほどの真昼であったはずが、いつの間にか暮れ落ち、黒猫さえも見失う始末。
「まって、、ここ、こんなに木が深かったっけ……。」
道路に面しているため、その仕切りに作った茂みであったので、鬱蒼としすぎているこの森にいる状況がいかに異常か、私はわかっていた。
しかし、説明のつかなすぎるこの展開に、現実逃避をしたくなる気持ちも頷けるので最早何も言えない。
つまり、私は、現状に気付かないふり。をしたのである。
「お姉さん。どうしたの?迷ったの?」
突然背後から声変わり前の少年のようなソプラノボイスが聞こえる。
ふっと振り向くとしかしそこに居たのは二足歩行のぶち猫であった。
その奇異さに現実逃避をするべく、またも気の所為と気持ちを落ち着かせ前へと進もうとしたが、
今度はもふもふに阻まれる。
「迷子になっちゃったなら、こっちに来なよ!」
にぱっと満開の笑顔を咲かせ、言い放ったそれは、明らかに猫の顔であった。
完全なるキャパシティオーバーで、停止してしまった私の手を挟んで(?)ぶち猫はある一点に歩みを進めた。
……。ちょっとまて。ここはうちの近所のはずだ
田舎が故か一軒と1軒が離れている今の自宅はちょっとした林はあれども。ほとんど道路と田んぼのはずだ。だから……
うちの近所に学校なんてある訳が無い。
しかもその面子がまた問題である。
ペリカン、ライオン、ウサギに、犬猫。
ちょっとまて。ここはどこの動物園だ。
いよいよ言い訳も効かなくなり、
逃避を失い呆然とする私を尻目にあれよあれよとクラスまで決められてしまい。その生活を強いられるはめに。
しかし、そんなある日、変化は訪れた。
だんだんと、背は縮み、牙と呼んでも過言ではないものまで生え揃っている。
私の身体が適応してきたのだ。
原理は分からないが、今の私は猫になっていた。
しかしどうだろう、猫になってみて性格も猫になり、いつしか楽しいとまで思うように。食事睡眠を一切必要としないこの世界に、猫の本能になっているのか、馴染み始めたのだ。
1人鼻歌を歌いつつ、無駄に長い廊下で尻尾を揺らしつつのんびり歩く私。
そんなときだった。
「ちょっと!」
やたら焦ったようなそんな声に引き留められる。
ご機嫌に廊下を歩いていたのに邪魔をされて怪訝になる私。
目の先には黒いもふもふと青の瞳があった。
なんでここに居るの!?
とばかりに捲し立てる彼に違和感をふと覚える。
「……きみ、どこかで会った?」
目の前の猫は硬直し、目を見開き、一瞬停止する。しかし、すぐに彼は鋭い目付きになり、焦った様子で私の手をひいた。
「帰るよ。君の元の世界に。ここは君がいていい場所じゃない」
そう言い放ち力強く私の前足をひっぱる。
「?何処に?」
「君の家だ。今の君はとても危うい。」
何を言っているんだろうかと手を振り払おうとするが、力差で負ける。
ついたよ。
その声で前を見据えるとそこはどこか歪んだ空間で、私達の足元から 1畳分程のスペース が空いていた。そしてその向こうに見慣れた風景。
「私の……家……?」
原理などはやはり分からない。けどその向こうに波紋状の歪んだ景色に私の家、ウッドハウスが映っていたのだ。
それを見るや否や、人としての記憶がいっせいに押し寄せる。
そうだ。なんでこんなこと忘れてたんだろうと慄く。
恐らくそれも理性が本能に押しつぶされていたのだろうが。
そして、半ば強引に私を引いてきた彼は、手当した証をそのままにしていたため、先日我が家に招待した黒猫だということも思い出した。
「ここから先は君一人で行って。僕は行けないから。」
すっかり隣にいる彼と共に帰るつもりだった私。
どうして?と聞く前に、ふさふさとした大きな耳を後ろに倒し、彼は俯く。
心做しか、彼の尾も元気がないように見えた。
「僕は……あちらの者ではないから……ここから先は進めないんだ……、」
きくと、この世界に何かを持ち込めば持ち込んだものが元の世界とのキーになり、渡れるが、何一つ持っていないと歪みに体を持っていかれるらしい。
前回はそちらからの迷い物を持っていたんだそうだ。
(※迷い物 :時折その世界に次元を超えて落ちているものらしい。)
あちらの世界からの持ち物と聞いて、家での事柄をふと思い出した。
そう。“元いた世界”で、手当に使った布である。
「それじゃあ、ダメなの?」
私は彼の足を指さしながらたずねた。
多分かなり前に手当したものだった。
少しばかり薄汚れていてずっと付けていたことが伺える。
気づいていなかったのか彼は目を瞬かせる。
その仕草は実に愛猫家として擽られるが、どうしても、ここで離れたくない。
そう思った私はもう一押しをかけてみた。
「私一人暮らしでさ、すごく寂しかったんだ。良かったらさ。うちに、来ない?」
動物とか飼ってなくてさ、いいかな?と苦笑いで尋ねると。
「え?」
瞬いていた青の水晶が大きく見開かれる。
いい、の?
ぽつりと、彼は呟いた。
思えば、本能に帰巣行動がなかったのも、アチラで1人きりの寂しい思いを避ける為だったのかもしれない。
猫のままでも。人間のままでも。
君となら、きっと生きていける気がするから。
「一緒に、いこう?」
もし人間に戻れなくても、この黒い少年とならやって行ける気がするから、僅かな不安を隠し手を差し伸べた。
何故か少し涙目に微笑む彼が
「仕方ないな。飼われてあげる。」
とつぶやく姿が
私にはとても愛しく思えた。
帰りたい本能のままに赤茶猫な私と黒猫のカカオはしっかり前脚をとりあい。
離さないようにぎゅっと絡めたまま、その1畳を超えた。
ふわと変な感覚の後、何かが変わる感触。何かが飲み込まれて、それを引き伸ばされる感覚。
地面に着いた頃、視線が高くなっていて、すっかり人間の姿になっていたことを悟った。
はしゃいだ私だったが、ふと、黒猫がいないことに気づいた。
カカオ?
呼びかけるも反応はない。
焦った。もしかしたら彼が言うところの歪みに引きずり込まれたのではと。
震える声で、2回目を呼びかけてみた。
「かか、」
「ちょっとまってそれ、もしかして僕の名前?」
面食らったような呆れたようなそんな声が私の後ろから聞こえた。
そう言えば、命名してから声に出して1度も呼んでいなかった。
というか決めた時くらいではないか?心の内で呼んだのは。
「毛の色が、チョコレートみたいだったから。だめかな?」
こてんと首を傾げると、
一呼吸置いたあと、カカオはいいんじゃない。と仏頂面で呟いた。
その際に少しだけ頬が赤くなったのを私は見逃してやるものか。
そして、違和感に気づいた。
「カカオ、なんで、人間になってるの……?」
「元人間の君が猫になってたからじゃない?戻す時にたまたま同じ種族の姿だった僕もいたりして、空間が誤認識、誤作動でも起こしたんでしょ。」
なんにでもなさげにカカオは呟く。
私の獣人化がまさかの原因だった。元に戻る際にカカオまで元人間としてご認識されたのか。
面食らった私だったが、
しかしまあ、と、カカオの容姿を見てみる。
黒のふわふわは男の子にしてはロングなショート。青くぱっちりした水晶のような瞳は、色はそのままにガラス玉のような瞳に。もふもふに包まれて日に焼けることをしらない肌は雪のような白い肌!!
。なんだこの美少年。
「ここはもう時期崩れる。急ぐよ。」
照れたのか彼の耳と尻尾はぶんぶんと忙しなく振られている。
しかし、彼の危うい発言に面食らった私を見て、彼はクスッと丸い瞳を3日月に歪めた。
いたずらなその表情を見て、あ、やばいと思ったが。その顔は、すでに隠しきれない程に赤くなってしまっていた。
《後日談》
「そういえばさ、カカオ、猫耳生えてない?なんで中途半端なのよ?」
「そう言われてみれば、君も同じ状況なんだけど?」
「え」
指をさされた場所、つまり頭部に掌を翳してみると、何かが指にあたって弾かれる感触。
「え、ぇええええっっ!?」
元人間の半獣、元獣の半人間。
この日を境に二人きりの秘密が出来た。
異世界のお土産は、可愛い黒猫でした。
「いやこれどうするよ。
隠すにも一苦労だよ!?」
「さぁ?見つかっても何とかなるんじゃない?」
そんなお気楽な……、と呆然とする私と、何処かご機嫌の彼は瞳を合わせ、
一周まわって面白くなったのかくすくすと2人笑いあった。
「あっみつかったとしても解剖だけは私嫌。」
「……かいぼう?なにそれ?」
きっとこの猫と共にいる限り忙しないまいにちになるんだろうな。
怪訝な顔をした猫を見て私は思うのだった。
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