激甘革命!マジパティ(分割版)

夜ノ森あかり

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勇者クラフティ編

第18話「勇者様は女子高生!迫る体育教師の魔の手」④

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「えっ…昨日の無言電話の犯人が分かった?」

 今日のカフェの営業が終了し、シュトーレンはトルテの隣で夕食を食べながら頷く。

「放課後、一悟の伯父さんに襲われた時、確信したの。一悟の伯父さんが無言電話の犯人だろうって…」

「それに、ここ数日カフェを覗いてきた事もあったし、保健室に盗聴器を仕掛けていたし、昨日に至っては双眼鏡でウチを覗いていたってエクレールが…」

 放課後の一件で、千葉先生がガレット達に向けて行っていた行為が芋づる式に明かされ、その話の数々に、トルテは思わずぞっとする。

「それに、一番の極めつけは…息子である涼也くんの言葉。恐らくだけど、彼のいなくなったお姉さんは先代のマジパティだった…彼の言う勇者がニコラスなら、先生が俺達をつけ狙うのも納得できる。」

「一悟の伯父さんはアタシの髪色を見て、「血の色」だの「汚らしい髪色」だの言ってたけど…おにぃは黒髪だったはず…」

 娘の言葉に、ガレットはうんと頷き、トルテは勇者の髪を引っ張った男に対して、獣人化するほど怒りを露わにする。



『問題は…涼也くんの心の傷なんだよな…』



 そう呟きながら、ガレットは放課後の涼也との話を思い出す。度々学校で教師に反抗的な態度を何度かとっている彼だが、話してみると、根っからの素行不良というワケではなかった。ただ単に…親である千葉先生への反発…あぁいう言葉を罵った以上、今夜は自宅には戻らないだろう…







「ピーンポーーーーーーーーーーン」



 その頃、雨の中氷見家の正門のチャイムが鳴り響く。

「どちら様でしょうか?」

 氷見家の使用人の1人がインターホン超しに応対する。チャイムを押した人物は、サン・ジェルマン学園中等部の冬服姿で、ずぶ濡れの状態で立っている。



「コンコン…」



 雪斗の部屋を誰かがノックする。藍色の浴衣に身を包み、ベッドで一悟からかりた「ミラクルマン」シリーズのライトノベルをガトーと一緒に読んでいた雪斗は、咄嗟に起き上がる。

「雪斗様、「同学年の千葉」と名乗る者が正門におられるのですが…」

 使用人の言葉に何かを感じ取った雪斗は、ドアを開け、インターホンのモニターのある部屋へと向かう。雪斗はずぶ濡れの人物が正門にいるのを確認すると、中へ通すように使用人に促す。玄関を開けると、そこに居たのは一悟と同じ髪色をした、雪斗と同じ背丈の少年だった。

「いちごん…じゃないな?お前はB組の千葉涼也の方だろ…」

 ずぶ濡れの人物は、雪斗にそう言われてフッと笑う。

「流石に一悟の友達にはバレるか…でも、今日は一悟には言わないで欲しいんだ…あの男にここに居る事がバレたら…」

 その言葉に、雪斗は当主である祖父に視線を送ると…

「事情があるのだろう…雪斗、一晩だけでも泊めてやりなさい。勿論、彼のご親族には内密にな。」

「はい…風邪をひくぞ。今、使用人にタオルを持ってこさせる。あとは使用人の指示に従って、僕の部屋に来い。」

 雪斗は涼也にそう言うと、使用人たちに指示を出す。その間に雪斗は部屋に戻り、涼也は氷見家の使用人に言われるがまま身体を拭き、浴室へと向かう。



 雪斗の部屋は8畳の和室に、机、ベッド、本棚、タンスの他、ユキ専用のワードロープがある。ワードロープに関しては、雪斗の祖父が「せめてユキに必要なものを」と、雪斗が治療で不在中に用意したものである。以前は一悟の隠し撮り写真を部屋の壁に貼っていたが、氷見家に戻ったその日に、ユキに「気持ち悪い」と罵られながらはがされ、代わりにそのスペースに「ミラクルマンゼロ」のポスターを貼る事になったのだった。本棚は参考書と弓道の本以外は、氷見家に戻って以降に揃えたもので、漫画やライトノベルなど、徐々に数を増やしている。因みにぬいぐるみは、ユキの趣味で飾ってある。

「えーと…確か88ページ…」

「ちょっと!僕、77ページから読んでないんだけど!!!」

「意識共有してるんだから、ぶつくさ言うな!」

 ユキとの口論もだんだん日常に溶け込みつつある。意識が雪斗の状態である時のユキの声は、雪斗にしか聞こえないため、ガトーを含む他の人や精霊たちからは雪斗が独り言を言っているようにしか見えない。



 暫くして、使用人に案内される形で涼也が雪斗の部屋に入って来る。カバンにはジャージが入っていたため、着替えは何とかなったようだ。そんな涼也に、雪斗は気がかりな事を口にする。

「従兄弟であるいちごんや、いちごんと家族ぐるみの付き合いがあるみるくの所にあえて行かないのはわかる。なぜ、僕の所に来たんだ?苔桃台こけももだい在住のあずきは無理だとしても、B組にも木苺ヶ丘在住の者は何人もいるはずだが…」

「お前が、木苺ヶ丘の大地主の孫…だから。」

「それだけか?僕はそれが建前にしか聞こえないが…」

 その言葉に、涼也は雪斗の前にピンクの宝石と白い羽飾りが付いた銀色のスプーンを見せる。その形状はまさしく…



「姉さんがいなくなった日…俺の頭上にこのスプーンが降ってきたんだ…」



「そのスプーンを持っているって事は…」

 涼也の持つスプーンを見た雪斗は、涼也が自分の所にやって来た理由を悟った。

「お前も…一悟も…みるくも…マジパティなんだろ?」

「なぜ…僕がマジパティだと…」

 雪斗がそう言うと、涼也の持つブレイブスプーンがガトーのいる場所に向かって光を放つ。

「俺…姉さんの形見であるこのスプーンを持ってから、勇者やマジパティが誰なのかも判るようになったし、精霊たちの姿も目に見えるようになったんだ。あの体育教師の耳に入らない場所でこの事を話せるのは…お前と、お前のもう1人の人格しかいないんだ!!!」

 そして、涼也は雪斗に行方不明の姉の事、姉の捜索中に海で遭難した兄の事を洗いざらい話す。勿論、行方不明の姉の事に集中してばかりで、トラブルを起こしてばかりの父親の事も忘れない。自分は父親の傍にいるのに、父親は姉の方に夢中…そんな寂しさに、雪斗は共に寄り添って泣くしかできなかった。それは、雪斗自身も父親に対しての寂しさを抱えていたからだ。精神的な事や、性的なはけ口としてではなく、1人の息子として…
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