激甘革命!マジパティ(分割版)

夜ノ森あかり

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勇者クラフティ編

第19話「ティラミスの葛藤!生徒会長はクリームパフ」①

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「助けを請うのがオグルだろうが、海坊主であろうが、誰であろうとも、マジパティの本来の目的はカオスイーツを浄化する事…」



 先刻のクリームパフの言葉が、何度も何度もティラミスの脳裏をよぎる…彼女の言っている事は、敵対の立場であるティラミスからしても、確かに正論だ。先ほどの戦いでカオスの力が底をついてしまったティラミスは、汀良瑞希てらみずきの姿のまま、休校となったサン・ジェルマン学園中等部に背を向けながら歩く。



「いつもは瞬間移動ですぐアジトへとたどり着けましたが、いざ歩くとなると、こんなに距離が離れていたなんて…」

 ふと見上げる青空…それは澄み切った空の色で、あの頃の業火に染まった空とは真逆の平穏を意味するような空…



「ぐ~きゅる~」



 静寂を遮るかの如く、瑞希の腹部から空腹を告げる音が鳴り響く。媒体に肉体自体が存在しないが、食事によるエネルギー補給も彼女には必要なのである。

「たまには…寄り道でもしますか…」

 時刻は正午を迎えようとしている…瑞希はふと財布の中を覗き込む。1食分の食事ならなんとかなりそうだ。そう確信した瑞希は、生徒会長が他の生徒と話していたカフェの扉に手をかける。



「カランカラン…」



「いらっしゃいませー」



 小洒落たカフェ…店頭の貼り紙には、オーナー不在による営業時間変更の知らせがあった。瑞希は中等部の養護教諭とよく似たあんず色の髪の女性に、カウンター席へ案内される。

「ご注文がお決まりでしたら、お知らせくださいね。」

 メニューを開き、どれにしようか考える…横文字は今でも苦手意識があるが、独特の言葉を放つ今の主の言葉よりはマシだと、瑞希は割り切っている。そんな彼女は、ふと目についたメニューを注文する。

「すみません…ランチメニューのライオンピラフを一つ…」

「ライオンピラフをおひとつですね…少々お待ちください。」



 2階の住居スペースから響く笑い声…どこかで聞き覚えのある声も少し混じっている気もするが、それは今の彼女にはどうでもいいことだ。



「お待たせしました。ライオンピラフです。」

 瑞希は、10分ほどで目の前にやって来たピラフに目を輝かせる。出来立てのピラフの周りを錦糸卵が囲んでおり、それはまさしくライオンのたてがみを意味しているようだ。

「いただきます…」

 まずはスプーンでピラフを少量すくいとり、口に運ぶ。ほんのりスパイスの効いたカレーピラフは、瑞希の口の中で程よい刺激と旨味を与え、出来立て独特の温かさが、彼女の空腹を少しずつ満たしていく…



『美味しい…』



 付け合わせのコンソメスープも、程よいバランスで、普段食べているコンビニ弁当とは比較してもしきれない美味しさだ。



「ご馳走様でした。」



 瑞希が料理を完食するのに、そう時間はかからなかった。会計を済ませ、店を出ると、彼女はある人物と鉢合わせをしてしまった。



 …生徒会長の白石玉菜しろいしたまなと、ユキ…そして、2年の高萩たかはぎあずきだ。

「あれ?汀良さん…?どうして、ここに?」

「わ、私は食事に来ただけですっ!!!そ、そういうあなたこそ…な、なぜ…店の入り口でないドアから…」

 瑞希が驚くのも無理はない。生徒会長が出てきたのは、店の出入り口ではなく、赤い車が止まっているガレージの真横にある玄関からだからだ。

「あぁ…「」と勉強会やってたんだ。そんで、飲み物切れちゃったから、ユキちゃんとあずきんと一緒に、近くのヴェルクで飲み物買うの頼まれちって…一緒に行く?」

「結構です!私はこれから自宅へ戻るところなので…」

 そう言いながら、瑞希は人差し指でメガネのブリッジをくいっと持ち上げる。

「汀良さん…くるみの地区だったよね?歩く方向…逆じゃない?そっち…瀬戌せいぬ駅の方角だけど…」

 生徒会長の指摘に、瑞希は慌てふためく。



「え、駅ビルの本屋で「鬼亡の刀きぼうのかたな」を買いに行こうと思って…」



 ますます怪しむ生徒会長の表情に、瑞希は思わず後ずさる。「鬼亡の刀」とは「週刊少年ヂャンプ」で連載していた今でも人気の作品で、連載が完結した今でも、中等部では劇場版やアニメの事でいつも話題となっている。

「珍しいわね…鬼の風紀委員長が少年漫画を読むなんて…」

「実は「ヂャンプ」派だったんだねー…僕は「名探偵コニャン」が好きだから「サタデー」派だけど。」

「きっと…「鬼」のつく作品がお好きなのかと…会長、ユキさん…早くヴェルクへ参りましょう。」

「そうね!じゃーねー、汀良さん!私も、その人気作ちょっと読みたいからあとでかしてねー?」

 そう言いながら、生徒会長はスーパーマーケットの方角へと歩く。そんな彼女を見つめる瑞希は、彼女の真横からひょっこり現れる白いお皿と、まるでビスクドールのような姿の小さな少女の後ろ姿を目の当たりにしてしまう。



「…!?」



 どことなく、あのマジパティと一緒にいる精霊とよく似ている…いや、あんな小さな背丈の少女が人間なワケがない!



 先刻の涼也の姉がマジパティだった事といい、瑞希の脳裏に突然、不穏な空気がよぎる…



 信じたくない真実…それは…



「白銀のマジパティ・クリームパフは、白石玉菜である」



 …という事。







「涼ちゃん、いらっしゃーい!!!」

 涼也りょうや一悟いちごとみるくが玄関に入ってくるなり、一華いちかは涼也にヘッドロックをかける。

「やめろよ、一華っ!!!しつこい!」

「ごめんごめん…でも、これからは一緒に暮らすことになるんだね。」

 その言葉に、一悟達はしんみりとする。涼也の父親である伯父の処分については、まだ学校から連絡が来ていない。涼也は一悟達と共に玄関に上がり、リビングへ入る。そこにはイナバと虎太郎こたろうが座っていた。どうやら一華と勉強会をやっていたようだ。



 一悟達は姉や虎太郎達の話から、千葉先生は高等部に侵入した時の事を知らされる。高等部の教職員達の静止を振り切り、片っ端から教室1つ1つを回り、竹刀を振り回す…それはまさしく狂気の沙汰だろう。



「でもさぁ…食堂の首藤しゅとうさんに同じ年頃の娘がいたとか、誰もこの一華さまに話してくれなかったワケ?」

 一華の言葉に、一悟達は思わず拍子抜けする。

「一華ちゃん…まだ諦めてなかったの?」

「いやさぁ…まさかあの首藤さんに成人済の娘がいたのは知らなかったけどさぁ…カフェのマスターやってる息子さんもいるんだって?いやー…一華さまも一目会いたくってさぁ…」

「恋に破れる回数=(イコール)試合での勝利数」ただいま更新中の空手部のエースの言葉に、誰もが同じ確信を持った。



『また告る前に玉砕するぞ…コイツ…』

『いや…玉砕する以前の問題だろ…』



 なんと言っても…そのカフェのマスターこそ…現在、1週間限定で高等部1年C組に在籍している「首藤まりあ」もとい、勇者シュトーレンなのだからだ。





 ………





「い…いちごんの…ぷぷっ…お姉ちゃんが…ゆ…勇者さ…ぶほっ…」

「爆笑してんじゃねぇよ…こっちも爆笑したかったけどさ…」

 夜になり、一悟は雪斗と電話をしている。一悟の母が一悟に「涼也を泊めた件でお礼を言うように」告げられたのと、千葉先生の処分が決定したことの報告をしている最中だ。千葉先生は当初、「停職2週間及び、1週間の自宅謹慎」だったが、高等部で暴れまわった件で瀬戌市教育委員会から大目玉となり、「停職2か月及び、半年間の減俸」になった。そして、極めつけは「停職期間明け後、1か月の教員研修」を瀬戌市で受ける事になり、夏休み明けに復職するということになった。

「まぁ…免職は免れたって所だな。アレがなければ、教師としては申し分なかったから…」

「おじさん…あすちゃんの事、2度の流産の末に生まれたから、すっげー大事にしてたんだよなぁ…勇者クラフティに娘を取られたのが、よっぽど悔しかったと思う。」



 千葉明日香ちばあすかは、今、生きているとしたら23歳…勇者シュトーレンと同じ年齢だ。そんな娘と同じ年齢の娘を持つ大勇者ガレットに対して、常日頃からマウントを取るような発言をしていたのも、納得がいく。



 千葉先生にとって、自分の娘と同じ年頃の娘がいる首藤和真しゅとうかずまは「自分は娘に会いたくても会えないのに、アイツは自分の娘と一緒に暮らしている。気に入らない。」という、不快な存在にしか見えなかったのだ。



「ところで、涼也は部活…まだ入ってないんだよな?」

「部活の件は、上野原うえのはら先生と話つけて、明日から剣道部の朝練に行くってさ。委員会の方は、津田沼つだぬま先生の勧めで風紀委員。」

 涼也も、一悟と雪斗の知らない所で、動いていたようで、スンナリと部活と委員会を決めたようだ。
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