激甘革命!マジパティ(分割版)

夜ノ森あかり

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レインボーポット編

第37話「ひれ伏しなさい!お嬢様は魔法使いですのよ!!!」③

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 その頃、大勇者ガレットは自身のアルトフルートについているモチーフに耳をあてがいながら、ある話を聞いていた。
「マリーがいなくなったァ!?」
「そうなんだよ、父さん…1人になったスキを突いて、転移の祠に…」
 大勇者の話し相手は、息子であるアラン・キルシュ・シュヴァリエで、どうやら大勇者の次女マリアが異世界へとつながる転移の祠へ向かったようだ。
「転移の祠って事は…」
「もしかすると、父さん達の所へ向かったのかもしれないって思って…あいつ、父さんや姉さんに会いたがっていたから…」
 息子の話を聞いている大勇者は、焦りの表情を見せる。幸いにもシュトーレンは部屋で着替えており、トルテに至っては厨房で仕込みの真っ最中だ。
「父さん、もしマリーを見かけたら…」

「バウワウワウワウワウッ!!!!!」

 カフェの外で犬が吠える声がして、ガレットは咄嗟にベランダから顔を出す。そこには明日香あすかの父親がものすごい勢いでカフェからくるみの地区方面へ逃走しており、吠えたと思われる犬は土佐犬で、その土佐犬の周りには見慣れた人物たちの姿…
「アラン…確か、マリーは…」
 2人同時に「はぁ…」とため息をつきながら、大勇者ガレットは住居スペースの階段を降り、玄関へと赴く。

「ガチャッ…」

「あ、大勇者様…おはようございます。」
「お、おはようございます…」
 赤いデミオの背後から、明日香と雪斗の姿…先ほどの明日香の父親からして、身を隠していたのだろう。ガレージの目の前では…

「ご、ゴールデンが…土佐…犬…」
「いっくん、しっかりしてっ!!!」
 混乱する一悟と、そんな一悟を支えるみるく…そして、撫子色の髪の少女の姿と左耳に白いリボンを付けた土佐犬…
「クソゴリラ…カフェに近づくなって言われてんのに…懲りない奴ぅー」
 ガレットの声に気づいた土佐犬は、くるっと玄関の方に身体を向けると、徐々に人間の少女へ姿を変えながらガレットに飛びついた。

「パパちゃまーっ!!!久しブリーーーーーっ!!!!!」

 炎のような赤い髪の一部を左側に寄せ、白いリボンでまとめた青い瞳の少女…彼女こそ、大勇者ガレットの次女・マリア・タタン・シュヴァリエなのである。



「こっちの撫子色の髪の子が、ゆっきーのはとこの…」
「姫路あかねと申します。魔導義塾まどうぎじゅく高等学校の2年生ですわ。」
 開店準備中という事もあり、着替えを済ませた一悟達はカフェのホールへ集められた。なお、あかねとマリアの服装はカフェに来た時のままである。
「そんで、こいつは俺の娘で、セーラの妹のマリア。」
「マリアよ!マリーって呼んでね?」
 無邪気に一悟達に自己紹介をする次女に、ガレットは再びため息をついた。
「俺…雪斗のじーちゃんから姫路グループのお嬢様が訪問に来るって事だけ、聞いてたんだけど?」
「こんな可愛い娘がはるばるスイーツ界から来たのに、そんな事言う?」
「俺の娘、ゲリラ訪問しないもーん♪」
 娘に対しての塩対応っぷりに、マリアは両頬をフグのように膨らませる。

「ガチャッ…」

「親父…マリーはアタシが何とかするから、姫路グループのお嬢様と話…さっさとした方がいいんじゃない?」
 住居スペースからメイド服姿のシュトーレンがやって来て、父親にアルトフルートを手渡すと、女勇者は妹をカフェの事務スペースへ連れていった。
「雪斗のじーちゃん絡みの話だから、あとの開店準備は任せたからね?」
 大勇者はそう言うと、一悟達をカフェへ残し、あかねを連れて住居スペースへ行ってしまった。

「ねぇ、マリー…アランから聞いたけど、あなた…グラッセと大喧嘩したんですって?」
 おぞましいオーラを放つ姉の姿に、マリアは黙って頷いた。シュトーレンは、父親が玄関に放置していたアルトフルート越しに、弟から妹がやって来た理由を聞いていたようだ。
「お兄ちゃんやブランシュ卿と約束してたのよね?グラッセとは仲良く過ごすって…どうして、約束守れなかったの?」
 姉の質問に、マリアは両肩を震わせながら、2枚の写真を革製のボストンバッグから取り出す。2枚の写真は少々汚れがあり、シュトーレンは妹にとって約束を破らざるを得ない状況で会ったことを悟る。

「守る…つもりだった…もん…でも…あのウサギ…」

 マリアの頬から大粒の涙が伝って落ちる。母親のセレーネが戦争で亡くなる前の家族写真と、少女セーラとしての最後の姉弟同士の写真…それらをスイーツ界で持ってきたという事は、グラッセはマリアにとって大切なものを壊してしまった…そう読み取れる。
「私…今まで、いい子でお留守番…頑張ったのに…ずっと…おうちを守ってきたのに…パパのお部屋も…お姉ちゃんと私の部屋も…お兄ちゃんたちの部屋も…台所も…お風呂場も…みんな…あのウサギが…」

 2歳で母親を亡くし、7歳で父親が行方をくらませ、姉は勇者として旅立った…幼き妹にとって、まだ甘えていたい時期に兄以外の家族が家に戻らなくなったのは過酷だった…
「ごめん…寂しい想いをさせてごめんね…マリー…」
 女勇者は姉として、泣いている妹を優しく抱きしめるしかできなかった。
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