激甘革命!マジパティ(分割版)

夜ノ森あかり

文字の大きさ
160 / 248
レインボーポット編

第39話「大勇者の危機!!!カルマン少年と勇者モンブラン」⑤

しおりを挟む
 理科室に避難したフットサルチームの面々は、化け物に襲われる勇者と、それを嘲笑う女豹に恐怖を覚える。そんな中、雪斗とよく似た小学生は、咄嗟に窓を開け、大きく息を吸い込み…

「負けるなーーーーーっ!!!勇者ーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!」

 勇者に向かって、叫び始めたのだった。自分が化け物にされた時、双子の妹から聞いた事、母親が仕事でないのに一晩帰って来られなかった事…彼の頭の中に思い浮かんだのが、勇者とマジパティだったからだ。戦隊ヒーローが大好きな氷見冷斗ひみれいとにとって、最近の兄の言動の違和感から、兄がマジパティとして勇者と共に戦っている事に薄々気づいていた。もし、兄がそうであるなら…彼は、一縷の望みを勇者に託したのだった。
「化け物を…僕達の優しい蘭ちゃんに戻してーーーーーーーーーー!!!!!」
 その叫びに、他のメンバーたちも一緒になり、冷斗と共に勇者に声援を送り始めた。その様子に、瑞希は友菓に目を向ける。
「友菓…行けますね?」
「あたぼーよ!勇者の知性が黙ってないさ♪」

 校舎から響く勇者への声援…それに動かされたのは、シュトーレンや友菓だけではなかった。
「ばあちゃん…俺…守りたいものがあるんだ…だから…」
 震える腕…すくむ足…それでも、カオスイーツから抜け出ようとする未来の娘を守りたい…祖母が刺客から自分を逃がすために大剣を託し、命を落としたと言うなら…

「俺に…力をかしてくれ!!!!!」

 叫びと共に、カルマン少年は祖母の形見の大剣の鞘を抜き始めた。

 カルマン少年が鞘から大剣を抜いたと同時に、剣から白い光が放たれ、グラウンド全体が一瞬にして白い光に包まれる。
「ぐあっ…なんだ、この光は…」
 白い光が放たれると、女勇者はカオスイーツから瞬く間に引きはがされ、満身創痍のまま自分の大剣を拾い上げた。

「ヒタム…勇者ガレットを侮辱しただけではなく、アタシの大切な僧侶様を痛めつけた罪…償ってもらうわ!!!」

 息をきらしながらそう話す女勇者は、全身に黄金のオーラを纏わせ始めるが、纏ったオーラは一瞬にして赤い光に変わり、女勇者の全身は何事もなかったかのように回復した。
「えっ…これ…って…?」
 きょとんとする女勇者の目の前に赤い光の葉っぱと、レインボーポットが現れ、ポットは女勇者の手元に降りる。
「レインボーポット?」

「それは、「勇気のリーフ」…子供たちの声援と、勇者の力に目覚めたばかりの過去の俺…そして、お前のカオスイーツを浄化したいという気持ちが一つになった事で、生まれたんだ。おめでとう…勇者シュトーレン!」

 突然現れた真紅の甲冑姿の父親の姿に気づいた女勇者は、レインボーポットの蓋を開ける。勇気のリーフは瞬く間にポットの中に入り込み、ポットの底から赤い光がまるで水のように湧き上がり、マジパティの紋章に女の勇者の横顔をかたどったレリーフが赤い光を放つ。
「それから、これはお前とトルテの愛の結晶…「トルテジュエル」だ。セーラ…母さんに、結婚の事報告しような?」
「そうだね…親父。」
 女勇者の父親がさし出した淡い緑色の宝石は、女勇者の大剣にたどり着くと、大剣の飾りとして装着される。

 トルテジュエルが女勇者の大剣の飾りとなったと同時に、白い光は収まり、そこには大勇者だけでなく、勇者クラフティとソルベが2人…勇者クラフティの手元には、レインボーポットが水色の光を放っている。
「くそっ…あの時、暴走車に轢かれたはず…」
「残念でしたー!あんなへなちょこミサイルで、子供遺したままカミさんの所へいけるかよっ!!!いったらいったで、延々と説教コースだよ…」
 大勇者の言葉に、女豹は苛立ちを覚える。

「くそっ…カオスイーツ!!!勇者もろとも、学校全体をのみこ…」

「ソルベストリーム!!!!!」
 女豹のセリフを遮るかの如く、友菓が回転させた長弓から強い水圧の海水が解き放たれ、練り飴のカオスイーツは体育倉庫付近まで後退する。
「雪斗の弟がいる手前、これ以上カオスイーツの好き勝手にはさせないっ!!!」
 ユキはそう言いながら、長弓を回転させ冷気を放ち、カオスイーツは身動きが取れなくなった。

「今だよ、勇者様っ!!!」

 己のマジパティの言葉に、女勇者は大剣を構え、カオスイーツの前で大きく振り上げ…

「ブレイブストライク!!!!!」

 カオスイーツは勇者の大剣によって一刀両断され、光の粒子と共に本来の姿へと戻っていく…
「わっ…蘭丸ちゃんだったのぉ?」
「蘭丸って…玉菜の弟の?」
 ユキが勇者の質問に頷くと、女勇者は驚きの声を上げた。

「かくなる上は…」
 まだ諦めていないのか、ヒタムの爪がカルマン少年に襲い掛かろうとするが…

「ザッ…」

「なんでこの時代に来たのか知らねぇが…勇者モンブランを殺めた以上、ヒタム…てめぇだけは絶対に封印してやる!!!」

 カルマン少年を守るかのように、未来のカルマン少年である大勇者がヒタムを大剣で斬りつけた。斬りつけただけでは事切れないのか、ヒタムは「チッ」と舌打ちした後、「フッ」と音を立てて消えてしまった。

 女豹が去り、カルマン少年は大勇者の前で祖母の形見である大剣を持つ。今度は抱きかかえず、左手でぎゅっと鞘を握る。
「勇者として目覚めた後は、きっと色んな困難に遭遇するだろう…でも、守りたい存在を見つけたお前は1人じゃねぇ!ヨハンもジュリアもいる。困ったときは2人から知恵をかりる…そうすりゃ、いずれはお前もいずれ巡り合う自分のマジパティと共にカオスと戦える。絶対にな…」
 未来の自分の言葉に、カルマン少年は決意に満ちた表情を見せる。
「はいっ!!!それから、俺の結婚相手って…」
「それは、自分の目で確かめろ!!でも…これだけは言っておく!誰かに自慢したくなるほど、素敵な女性だ!こんな可愛い娘が生まれるんだからなっ♪」
 大勇者と少年は大きな声で笑った。そして、少年は祖母の形見を持ったままスーッと、グラウンドから姿を消した。恐らく、29年前のスイーツ界へ帰ったのだろう…


 ………


 それから3日後の早朝。大勇者は子供達と弟、妹一家を連れて瀬戌メモリアルパークにある首藤しゅとう家の墓へやって来た。
「ばあさん…紹介するよ。長女のセーラ、長男のアランに次女のマリア…それから、ばあさんが死んだときまだ乳飲み子だったエレナとニコラス…そして、エレナの旦那のモーガンと、子供のカイルとカレン…」
 シュトーレンが墓に花束を生け、アランが墓に水をかける。マリアは父親と一緒にお墓に線香を添える。

「俺に残した手紙…確かに受け取った。もう俺達勇者の末裔は、スイーツ界に戻るつもりはない…ここで暮らすさ。ばあさんが愛した瀬戌の街で…歴代国王の本当の意図に逆らいながら…」

 墓前でそう話す大勇者の言葉に、卒塔婆の陰から勇者モンブランが微笑んでいる…そんな様子を、女勇者は感じ取った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】

山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。 失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。 そんな彼が交通事故にあった。 ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。 「どうしたものかな」 入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。 今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。 たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。 そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。 『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』 である。 50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。 ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。 俺もそちら側の人間だった。 年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。 「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」 これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。 注意事項 50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。 あらかじめご了承の上読み進めてください。 注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。 注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。

~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる

僧侶A
ファンタジー
沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。 スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。 だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。 それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。 色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。 しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。 ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。 一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。 土曜日以外は毎日投稿してます。

​『イージス艦長、インパール最前線へ。――牟田口廉也に転生した俺は、地獄の餓死作戦を「鉄壁の兵站要塞」に変える』

月神世一
SF
​【あらすじ】 ​「補給がなければ、戦場に立つ資格すらない」 ​ 坂上真一(さかがみ しんいち)、50歳。  かつてイージス艦長として鉄壁の防空網を指揮し、現在は海上自衛隊で次世代艦の兵站システムを設計する男。  背中には若き日の過ちである「仁王」の刺青を隠し持ち、北辰一刀流の達人でもある彼は、ある日、勤務中に仮眠をとる。 ​ 目が覚めると、そこは湿気と熱気に満ちた1944年のビルマだった。  鏡に映っていたのは、小太りで口髭の男――歴史の教科書で見た、あの「牟田口廉也」。 ​ しかも時期は、日本陸軍史上最悪の汚点とされる「インパール作戦」決行の直前。  部下たちは「必勝の精神論」を叫び、無謀な突撃を今か今かと待っている。 ​ (……ふざけるな。俺に、部下を餓死させろと言うのか?) ​ 現代の知識と、冷徹な計算、そして海自仕込みのロジスティクス能力。  すべてを駆使して、坂上(中身)は歴史への介入を開始する。  精神論を振りかざすふりをして上層部を欺き、現地改修で兵器を強化し、密かに撤退路を整備する。 ​ これは、「史上最も無能な指揮官」の皮を被った「現代の有能な指揮官」が、確定した敗北の運命をねじ伏せ、数万の命を救うために戦う、逆転の戦記ドラマ。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

マンションのオーナーは十六歳の不思議な青年 〜マンションの特別室は何故か女性で埋まってしまう〜

美鈴
ファンタジー
ホットランキング上位ありがとうございます😊  ストーカーの被害に遭うアイドル歌羽根天音。彼女は警察に真っ先に相談する事にしたのだが…結果を言えば解決には至っていない。途方にくれる天音。久しぶりに会った親友の美樹子に「──なんかあった?」と、聞かれてその件を伝える事に…。すると彼女から「なんでもっと早く言ってくれなかったの!?」と、そんな言葉とともに彼女は誰かに電話を掛け始め… ※カクヨム様にも投稿しています ※イラストはAIイラストを使用しています

処理中です...