幸薄少女はチート(金づる)を手にする

くるら

文字の大きさ
1 / 1

運の悪い冒険者の話

しおりを挟む
最近、とても性能の良い剣を見つけた。
とても切れ味が良いだけではなく、軽くて耐久性もあり魔力伝導率も非常に良い。名をサテンという。

私はサテンに出会うまでゴブリンやオークなどの魔物を一対一で倒すくらいの戦力しかなかった。
しかし、この剣で戦った途端に、ゴブリン一匹どころか集落を単独で墜とすことが出来たのだ。

決して、奢っているわけではない。自分の実力は百も承知だ。

私には不正を使ってでもやり遂げなければならないことがあるのだ。



だが、そんな高性能な剣にも一つ問題がある。それは、


「嗚呼、僕はどんな美しい花よりも美しいものを見つけてしまった…。」

「へぇ」

「君さ。ルーシャ」

「とりあえず、黙って。振りにくいから」

「はっはっはっ。ツンデレだなルーシャは。仕方ない、君に振り回される人生m...」


構わず振った。そうしなければ、私は目の前のオーガの慰み者となっていただろう。


もう、お気づきだろう。この剣はよく喋る。

とんでもないほど喋る。


「今日も今日とてツンツンしてるルーシャは本当に可愛いなぁ!食べちゃいt…」

なんとか倒すことが出来た。
あとはお金になる素材を全部回収するだけ。

「今日も刺激的な振り方だったね。」

本当に煩い。
しかし、目的を達成するためには手段を選ぶことはできない。

例え、煩わしくてもサテンは高性能な剣なのだ。

さぁ、早めに町へ帰ろう。森は夜になると碌なことが無い。今から出ればギリギリ夕方には戻れる。

サテンを仕舞い、帰ろうとしたその時、

視線を送った先に白い明らかに異様な雰囲気を持った物体があった。

あれは、最近流行りの冷蔵庫だろうか?

これは関わってはいけないと足早に逃げようとした。だが、壁のようなものにぶつかったのだ。

「結界に入ってしまったみたいだね。誰だい、ルーシャのことを捕らえようとしてるのは」
「私、サテンのものでは無いんだけど」
「悲しいこと言うじゃないか。」


とりあえず、立ち止まってても仕方ないので、ふたたびサテンを引き出し構えながら冷蔵庫(仮)へ進むことにした。

近づいてみるとやはり人一人分くらいの大きさだった。
そして、あと十数歩で辿り着くというところで冷蔵庫が開いた。

中から冷気と共に所々腐敗してる人間が出てきた。
なぜ冷蔵庫に入ろうと思ったのだろうか。


「アンデッドだね。その中のゾンビかな。」

「死んでるの?」

「アン・デッドだから死んでないよ。寧ろ死ぬことが出来ないのさ。」

「そうなの。」

「…え、知らなかったのかい!?」


そうこうしている間にもアンデッドがこちらに向かってくる。

思ったんだけど、

「ねぇ、死ぬことが出来ないなら攻撃しても無意味じゃないの?」

逃げるしかないじゃない!勝てないので後退りしようとしたら、

「結界が張られているじゃないか。そんな天然なルーシャも可愛いけどね。」

そうだった。

「まぁ、僕で切れば浄化されて死ぬよ。さあ僕を使って♡」

死ねるじゃない。なんなのよ、キャン・デッドじゃない。
そう言っている間に切る。

キャンデッドは崩れながら灰となり消えていった。


安心したのも束の間、冷蔵庫から何体も出てきていた。

「ルーシャって案外、世間知らずな所もあるよね。まぁ、そんなところm……」

数十体倒したところで、キャンデッドは冷蔵庫から出なくなった。

「ルーシャ、何かが来るよ」

体勢を整えて冷蔵庫を警戒すると、黒い布に包まれた骨が出てきた。これは……何かしら?

「ちなみに、アンデッドのリッチだよ。」

キャンデッドのリッチらしい。確かにさっきのとは違う。すると

「カッカッカッ!人は皆永遠の命を欲しがる。お主も欲しそうな目をしておるのォ…。ワシに共にこの棺の中へと入り、心臓を渡せばその願い聞いてやらんこともないぞヨ。カッカッカッカッ!」

それ棺だったのね。
というかキャンデッドなんかになりたくないわ。

「…別にいいです」

「ルーシャ、そいつの言うことを信じてはいけないよ。そいつはそう言ってルーシャの正気を吸い取ろうとしてるのさ。」

「いや、信じてない。」

「カッカッカッ!そう言って本音では喉から手が出るほど欲しいのじゃろォ。正直に申せェ。カッカッカッカッ!」

なんでこんなにも言葉が通じないのか…

そうかリッチもサテンも人間じゃなかった。

「カッカッカッ!そういえば、お主の持っている剣、底知れぬ雰囲気を感じるな……ハッ!さてはっ……魔王様の魔剣ではないか!?なぜそんなものをお主のような貧弱な小娘が持っておるのだァッ!!」

「残念ながら不正解さ。君のような低脳な魔物に僕が分かってたまるものか。僕は、そう…。ルーシャの運命n…」

「喋ったじゃと!?……て、て、ててて低脳ではないわァアア!!!!ワシはリッチであるぞォ!お主が持つような代物ではないっ!返せ!」

「誰が好き好んで君に渡されるか。」

「なんじゃとォ!?」

私の存在無視されてない?
というか、リッチ、さっきから素に戻ってる?

「…嫌よ」

「だよね!だよね!だよね!…まぁ、もし万が一ルーシャがあいつに渡そうとしても僕はルーシャから離れないからね。」

クーリング・オフ出来ないじゃない。

「さぁ、僕とルーシャの愛を確かめ合ったところで、もうあいつに用ないし、切ろ?ルーシャ?」

「確かめ合ってないし、私はサテンのものじゃない。……わかった」

まだ何か喚いているリッチを切った。

「これはっ…。やはり魔王様の魔力!まさか、魔王様ご本人!?魔王様でいらっしゃいますk……」

死ななかったので、もう一発入れた。
そうすると、灰になり消えていった。

初めて一発で仕留められなかった。

「…私、魔王様じゃないんだけど。」

「あぁ、そんなこと僕が1番知ってるさ。」

私は正真正銘の中級冒険者だ、サテンによって簡単に倒せているだけ。

とりあえず、キャンデッドが落とした魔石を取る。

「魔石しか落とさないなんて…」

「効率悪いね。」

「運が悪かったわ。」

あらかた全部回収したところで、空を見上げると見事にオレンジ色になっていた。

「夕方だわ。」

「ルーシャは運が悪いよね。」

そうなのだ。

私はとことんついていない。
魔力が生まれつき人より少し少なかったり、両親が共に早く亡くなったり、普通に、いや寧ろ質素に孤児院で生活していただけなのにでっぷりとしている年老いた領主様に目をつけられて婚約を迫られたり、それを断って多額の賠償金を命じられたり、孤児院を追い出されたり……だけど

「だけど、サテンと出会えたことは私にとって幸運よ。」

おかげで借金の半分は消えた。安定した安全な生活も夢じゃないかもしれない。

「嬉しいな、僕が幸運なんて……」

煩いけどね、本当に。

「僕は君のものさ」

「ええそうね。あなたは私のもの」

大事な金づるよ。




ルーシャがサテンを魔王だと知るのはそう遠くない未来。


ルーシャが魔王のものとなる前の話。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

処理中です...