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第30話
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「ご気分どないです?少しはマシになりました?」
「はい……ご迷惑をおかけして本当に申し訳ありません」
空いたグラスを一葉の手から取り、目の前の男は首を振った。
「こんなんご迷惑のうちに入りませんて。しかし、保胤の奥様となると初日から大変ですねぇ。色んな人と付き合うていかなあかんから」
“保胤”と呼び捨てにする口調から親しげな仲なのだと一葉は察した。
「ごめんなさい。ご挨拶が遅れました。あの……お名前をお聞きしても?」
「僕? 堂薗と言います」
「堂薗様。いつも主人がお世話になっております。今日はお越しいただきありがとうございます」
「お世話やなんて! 僕の方こそ保胤には世話になりっぱなしです。お馴染みのよしみで色々仕事ももろてるし」
「そうなのですか?」
(この方もご学友かしら)
その割に、堂薗は保胤よりも歳が上に見えた。
保胤と同じぐらいに長身で、礼装の上からその体格の良さが分かるほどがっしりとした体つきをしている。太い血管が浮き骨ばった手の甲はその逞しさをさらに引き立たせている。黒髪を後ろに撫でつけ、目鼻立ちがはっきりとした爽やかな好青年。その見た目から受ける印象とは異なり語り口はゆっくりで柔和だった。
「うちみたいな京都の中小企業に色々と発注してもろてるんです。ほんまに義理堅いというか……あんなに漢気のあるやつおりません」
一葉は笑顔で相槌を打ったが少し困惑した。保胤は仕事に関して一切の私情を挟まない人間だと慶一郎から聞いている。それに、養父と保胤の会話を盗み聞きした時、彼の商人としての一面を一葉自身も肌で感じていたため堂薗が抱いている保胤の仕事姿と大分印象が異なっていた。
(きっとそれだけ保胤さんとお付き合いが長い方なのね)
「ほら、今度緒方商会で製鉄所建設が予定されてるでしょ? あれにも一枚うちが噛まさしてもろてるんですよ」
「……!」
思ってもいない言葉が堂薗の口から出て、一葉は酔いが一気に醒める思いがした。
一葉はこほんと咳ばらいをして、堂薗に尋ねる。
「そ、そうなのですね。でも、保胤さんはあまり製鉄所建設に乗り気ではないようですが……」
「まあ、日本での鉄鋼事業は色んな事情が入り組んでるしね。国内における鉄需要が高まってるからこそ計画が立ち上がったわけやけど、重工業に関しては保胤は慎重にならざるを得んでしょう」
「どうして?」
「……どうして?」
堂薗が一葉に尋ねる。まさか逆に質問されるとは思わず、一葉は言葉に詰まった。
「あ……ごめんなさい……! 私なんかが立ち入った真似を……」
「いやいや! いいんですよ! まぁ、別に保胤の奥さんやったら話しても問題ないでしょう!」
うんうんと堂薗は頷き、一葉の目の前で突然指をVの字にして見せた。
「あ……あの? これは……?」
「膨大な資金と外国人技術者の雇入れ。この二つを同時に出来る会社が日本にどれぐらいあると思います?」
「……もしかして、ない?」
「おしい! 半分正解半分間違い。現状はない。せやけど出来るかもしれん会社はある。それが緒方商会です。紅茶等の食品業で英国、鉄鉱石の原産地である中国ともよう取引してるから建設にあたって必要なパイプはある。欧米の技師の確保もそれほど難しくない。ただ、それでもその緒方商会ですら勝算が読めんこともあるしね。まあ、そのあたりはうちの会社がうまいことやらせもらうから心配ないけど」
(やっぱりこの人が何か鍵を握っているのね……! その情報が手に入れば喜多治家が先回りして手が打てるかも)
「あの……堂薗様はどのような形で事業に携わっていらっしゃるのですか?」
「一葉さん、ここにいたんだ」
その声に驚き一葉が振り返ると明るい室内から保胤がバルコニーへと出てきた。
「一葉さんには僕とお喋りしてもろててん」
「そうなのかい? 堂薗の話はつまらないでしょう?」
「い、いえ……そんなことは……」
「二人で何の話をしてたの?」
一葉は焦った。バルコニーから出てきたばかりだから堂薗との会話までは聞かれていないかもしれないが、自分が製鉄所建設について探りを入れていることは知られたくない。
「無粋な男やなぁ。奥さんやからって何でも夫に報告せなアカンことないですよねぇ?」
「あ……」
(もしかして庇おうとしてくれてる……?)
予期せぬ堂薗の言動に拍子抜けしたが、今はとにかくありがたい。その手に乗ることにした。
「わ、私が少しお酒に酔ってしまって堂薗様がお水をくださったのです」
「……おや。それなら尚のこともう部屋に戻りましょう」
「でも、お客様をお見送りしないと」
「もう既に何組かお帰りになられていますよ。気にする必要はありません」
「でも……!」
「一葉さん」
きゅっと保胤の目が細くなる。なんだかそれ以上何も言えなくなって一葉は素直に頷いた。
「堂薗様、本当にありがとうございました。今日はこちらで失礼いたします」
「一葉さん、またお会いしましょ~!」
堂薗はひらひらと手を振り一葉を見送った。
給仕がバルコニーへ出てきて、ワイングラスを持って保胤と堂薗に近づく。堂薗は琥珀色のグラスを手に取り、一気に飲み干す。
「なぁ、保胤」
「なんだ?」
保胤は手に持っていた空のグラスを給仕のトレイに乗せた。給仕は頭を下げ二人の元を去っていく。見計らっていたかのように堂薗は保胤に尋ねた。
「お前の嫁はん。あれ、諜報員やろ?」
「はい……ご迷惑をおかけして本当に申し訳ありません」
空いたグラスを一葉の手から取り、目の前の男は首を振った。
「こんなんご迷惑のうちに入りませんて。しかし、保胤の奥様となると初日から大変ですねぇ。色んな人と付き合うていかなあかんから」
“保胤”と呼び捨てにする口調から親しげな仲なのだと一葉は察した。
「ごめんなさい。ご挨拶が遅れました。あの……お名前をお聞きしても?」
「僕? 堂薗と言います」
「堂薗様。いつも主人がお世話になっております。今日はお越しいただきありがとうございます」
「お世話やなんて! 僕の方こそ保胤には世話になりっぱなしです。お馴染みのよしみで色々仕事ももろてるし」
「そうなのですか?」
(この方もご学友かしら)
その割に、堂薗は保胤よりも歳が上に見えた。
保胤と同じぐらいに長身で、礼装の上からその体格の良さが分かるほどがっしりとした体つきをしている。太い血管が浮き骨ばった手の甲はその逞しさをさらに引き立たせている。黒髪を後ろに撫でつけ、目鼻立ちがはっきりとした爽やかな好青年。その見た目から受ける印象とは異なり語り口はゆっくりで柔和だった。
「うちみたいな京都の中小企業に色々と発注してもろてるんです。ほんまに義理堅いというか……あんなに漢気のあるやつおりません」
一葉は笑顔で相槌を打ったが少し困惑した。保胤は仕事に関して一切の私情を挟まない人間だと慶一郎から聞いている。それに、養父と保胤の会話を盗み聞きした時、彼の商人としての一面を一葉自身も肌で感じていたため堂薗が抱いている保胤の仕事姿と大分印象が異なっていた。
(きっとそれだけ保胤さんとお付き合いが長い方なのね)
「ほら、今度緒方商会で製鉄所建設が予定されてるでしょ? あれにも一枚うちが噛まさしてもろてるんですよ」
「……!」
思ってもいない言葉が堂薗の口から出て、一葉は酔いが一気に醒める思いがした。
一葉はこほんと咳ばらいをして、堂薗に尋ねる。
「そ、そうなのですね。でも、保胤さんはあまり製鉄所建設に乗り気ではないようですが……」
「まあ、日本での鉄鋼事業は色んな事情が入り組んでるしね。国内における鉄需要が高まってるからこそ計画が立ち上がったわけやけど、重工業に関しては保胤は慎重にならざるを得んでしょう」
「どうして?」
「……どうして?」
堂薗が一葉に尋ねる。まさか逆に質問されるとは思わず、一葉は言葉に詰まった。
「あ……ごめんなさい……! 私なんかが立ち入った真似を……」
「いやいや! いいんですよ! まぁ、別に保胤の奥さんやったら話しても問題ないでしょう!」
うんうんと堂薗は頷き、一葉の目の前で突然指をVの字にして見せた。
「あ……あの? これは……?」
「膨大な資金と外国人技術者の雇入れ。この二つを同時に出来る会社が日本にどれぐらいあると思います?」
「……もしかして、ない?」
「おしい! 半分正解半分間違い。現状はない。せやけど出来るかもしれん会社はある。それが緒方商会です。紅茶等の食品業で英国、鉄鉱石の原産地である中国ともよう取引してるから建設にあたって必要なパイプはある。欧米の技師の確保もそれほど難しくない。ただ、それでもその緒方商会ですら勝算が読めんこともあるしね。まあ、そのあたりはうちの会社がうまいことやらせもらうから心配ないけど」
(やっぱりこの人が何か鍵を握っているのね……! その情報が手に入れば喜多治家が先回りして手が打てるかも)
「あの……堂薗様はどのような形で事業に携わっていらっしゃるのですか?」
「一葉さん、ここにいたんだ」
その声に驚き一葉が振り返ると明るい室内から保胤がバルコニーへと出てきた。
「一葉さんには僕とお喋りしてもろててん」
「そうなのかい? 堂薗の話はつまらないでしょう?」
「い、いえ……そんなことは……」
「二人で何の話をしてたの?」
一葉は焦った。バルコニーから出てきたばかりだから堂薗との会話までは聞かれていないかもしれないが、自分が製鉄所建設について探りを入れていることは知られたくない。
「無粋な男やなぁ。奥さんやからって何でも夫に報告せなアカンことないですよねぇ?」
「あ……」
(もしかして庇おうとしてくれてる……?)
予期せぬ堂薗の言動に拍子抜けしたが、今はとにかくありがたい。その手に乗ることにした。
「わ、私が少しお酒に酔ってしまって堂薗様がお水をくださったのです」
「……おや。それなら尚のこともう部屋に戻りましょう」
「でも、お客様をお見送りしないと」
「もう既に何組かお帰りになられていますよ。気にする必要はありません」
「でも……!」
「一葉さん」
きゅっと保胤の目が細くなる。なんだかそれ以上何も言えなくなって一葉は素直に頷いた。
「堂薗様、本当にありがとうございました。今日はこちらで失礼いたします」
「一葉さん、またお会いしましょ~!」
堂薗はひらひらと手を振り一葉を見送った。
給仕がバルコニーへ出てきて、ワイングラスを持って保胤と堂薗に近づく。堂薗は琥珀色のグラスを手に取り、一気に飲み干す。
「なぁ、保胤」
「なんだ?」
保胤は手に持っていた空のグラスを給仕のトレイに乗せた。給仕は頭を下げ二人の元を去っていく。見計らっていたかのように堂薗は保胤に尋ねた。
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