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第一章 阿緒と天
⑤ 阿緒と天
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◇
天に頭からお湯を掛けられてしまったのでそのまま一緒にシャワーをさっと浴びる。
お互いに濡れた服を脱ぎ捨て裸になると、彼は意外と物凄く筋肉質な体をしていると発覚する。一切無駄がなく締まっている。そしてよく見ると全身に小さな傷痕がある。どう見ても一般人の体付きじゃない。
そのくせに猛烈な色気を放っている。
今まで男をそういう目で見た事はなかったけど、天はまた抱いてみたい。
「じっとしていて」
包帯が濡れて絡まったので天にハサミで切り取って貰う。この人にハサミを持って近くに立たれるとかなりの恐怖を感じたが無言の笑顔に威圧されてしまった。
包帯をスルスルと解くと刺された胸の所の傷が思っていたより綺麗に処理されて焼かれている。そこまでの痛みもない。妙な事にもう治癒が始まっている。
「さっきのお肉を血清で薬物混入したよ」
天の方を見ると事も無げに言ってのける。それに僅かに眉を顰める。
――――おい、俺の選択権はそこには存在しないのか
バンパイア血清は最近発見されたドラッグにも薬にもなるものだ。人が摂取すると強い痛み止めと回復増幅で治癒が爆破的に早まる。ただし摂取し過ぎると暫く精神異常をきたして思考力が落ちる副作用もある。俺は出来ればバンパイア関連の物はあまり体内に摂り込みたくない。
天にもう一度包帯を巻いて貰い、新しい服を用意される。もっと身長が高いかと思っていたら、彼は俺より数センチ高いぐらいだろうか。肌触りのいい生地が気持ちいい。気付いたら黒いズボンとシャツでペアルックを決めてしまっている。
「……で?」
天は俺の前に挽き立てのコーヒーを置く。その黒い液体に疑いの目を向けてしまう。
「これは薬でスパイクしてないよ?」
「そうじゃなくって! お前、俺の事、何知っている?」
「お兄さん、コレクターでしょう?」
自分の目付きが鋭くなる。
コーヒーカップを上から掴む。だが振り回すよりも速く、天が俺の手の上からコーヒーカップを抑える。少し微笑んでいるのに俺の手を抑える力は凄まじく、微動だにしない。中の液体は揺れているが一滴も零れていない。
「ダーメ。コーヒーなんか振り回したらお掃除が大変でしょう。流石にそれは面倒」
近距離で見る天の目は益々感情が読めずに不気味だ。真っ暗な底なし沼。
「商売道具を見ればすぐに分かるよ。もう、結構短気だなぁ」
ブツブツと笑顔で文句を言っているのだが何故か楽しそうだ。天の目が細くなる。
「他にもあるよね? 大きくって、体内に隠している秘密。ここに」
彼は俺の心臓を軽く指差す。腕に鳥肌が立つ。
「お前、本当になんなの」
――――普通の人間は気付けないはずなのに
それには答えず、彼がコーヒーコップを離してくれる。
「次のお仕事はいつ予定している?」
「一応今夜入っているけど」
「君の仕事に付いて行ってもいい?」
「え、ヤダよ。お前、絶対変になりそうじゃねぇか。あの路地裏にいた時みたいなのは勘弁」
「残念。じゃあ、いいよ。お楽しみは今度まで取って置くから。これ、持っていって」
手渡された鍵を見る。最新のセキュリティロックキーだ。
「不用心じゃね?」
「僕の家に何かするつもり?」
「いや、しない。あとが怖い」
ついぷるぷると首を振ってしまう。天は笑いながら俺の手に何か硬い物を渡してくる。見るといつもは服に忍ばせている俺のナイフと硬いケースに入った商売道具である。ナイフは研いでくれたのか、前回見たのよりももっと禍々しい輝きを放っている。
「他に必要な物はある?」
「ない」
「じゃあ、行ってらっしゃい。朝食楽しみにしていてね」
無理矢理玄関の方へと連れて行かれ、そのまま夕暮れの外へと追い出される。無碍にもドアが目の前でバタンと閉められる。
「マジで……なんなんだよ」
酷く疲れた気がする。
天に頭からお湯を掛けられてしまったのでそのまま一緒にシャワーをさっと浴びる。
お互いに濡れた服を脱ぎ捨て裸になると、彼は意外と物凄く筋肉質な体をしていると発覚する。一切無駄がなく締まっている。そしてよく見ると全身に小さな傷痕がある。どう見ても一般人の体付きじゃない。
そのくせに猛烈な色気を放っている。
今まで男をそういう目で見た事はなかったけど、天はまた抱いてみたい。
「じっとしていて」
包帯が濡れて絡まったので天にハサミで切り取って貰う。この人にハサミを持って近くに立たれるとかなりの恐怖を感じたが無言の笑顔に威圧されてしまった。
包帯をスルスルと解くと刺された胸の所の傷が思っていたより綺麗に処理されて焼かれている。そこまでの痛みもない。妙な事にもう治癒が始まっている。
「さっきのお肉を血清で薬物混入したよ」
天の方を見ると事も無げに言ってのける。それに僅かに眉を顰める。
――――おい、俺の選択権はそこには存在しないのか
バンパイア血清は最近発見されたドラッグにも薬にもなるものだ。人が摂取すると強い痛み止めと回復増幅で治癒が爆破的に早まる。ただし摂取し過ぎると暫く精神異常をきたして思考力が落ちる副作用もある。俺は出来ればバンパイア関連の物はあまり体内に摂り込みたくない。
天にもう一度包帯を巻いて貰い、新しい服を用意される。もっと身長が高いかと思っていたら、彼は俺より数センチ高いぐらいだろうか。肌触りのいい生地が気持ちいい。気付いたら黒いズボンとシャツでペアルックを決めてしまっている。
「……で?」
天は俺の前に挽き立てのコーヒーを置く。その黒い液体に疑いの目を向けてしまう。
「これは薬でスパイクしてないよ?」
「そうじゃなくって! お前、俺の事、何知っている?」
「お兄さん、コレクターでしょう?」
自分の目付きが鋭くなる。
コーヒーカップを上から掴む。だが振り回すよりも速く、天が俺の手の上からコーヒーカップを抑える。少し微笑んでいるのに俺の手を抑える力は凄まじく、微動だにしない。中の液体は揺れているが一滴も零れていない。
「ダーメ。コーヒーなんか振り回したらお掃除が大変でしょう。流石にそれは面倒」
近距離で見る天の目は益々感情が読めずに不気味だ。真っ暗な底なし沼。
「商売道具を見ればすぐに分かるよ。もう、結構短気だなぁ」
ブツブツと笑顔で文句を言っているのだが何故か楽しそうだ。天の目が細くなる。
「他にもあるよね? 大きくって、体内に隠している秘密。ここに」
彼は俺の心臓を軽く指差す。腕に鳥肌が立つ。
「お前、本当になんなの」
――――普通の人間は気付けないはずなのに
それには答えず、彼がコーヒーコップを離してくれる。
「次のお仕事はいつ予定している?」
「一応今夜入っているけど」
「君の仕事に付いて行ってもいい?」
「え、ヤダよ。お前、絶対変になりそうじゃねぇか。あの路地裏にいた時みたいなのは勘弁」
「残念。じゃあ、いいよ。お楽しみは今度まで取って置くから。これ、持っていって」
手渡された鍵を見る。最新のセキュリティロックキーだ。
「不用心じゃね?」
「僕の家に何かするつもり?」
「いや、しない。あとが怖い」
ついぷるぷると首を振ってしまう。天は笑いながら俺の手に何か硬い物を渡してくる。見るといつもは服に忍ばせている俺のナイフと硬いケースに入った商売道具である。ナイフは研いでくれたのか、前回見たのよりももっと禍々しい輝きを放っている。
「他に必要な物はある?」
「ない」
「じゃあ、行ってらっしゃい。朝食楽しみにしていてね」
無理矢理玄関の方へと連れて行かれ、そのまま夕暮れの外へと追い出される。無碍にもドアが目の前でバタンと閉められる。
「マジで……なんなんだよ」
酷く疲れた気がする。
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