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第三章 天職と野獣
④ 天職と野獣
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パンッ
パンッ パンッ
ピシピシッ
すぐ横の壁の破片が小さく飛び散って頬が切れる。即座に頭を下げて残りの階段を掛け上がる。最上階では天が男の首を両手で絞めている。足元には打った拳銃が転がっている。横の壁沿いの動きに気付き俺はナイフを走らせる。
「ギィヤァァァア」
躊躇する事なくナイフを突き刺す。天をチラッと見ると彼ももう一人の男に飛び乗っている。
――――やっぱ早いな
俺は暴れる男の血を目の前に持ってきてスキャンする。ピピっと赤い警告が出る。
感染済みの使えない血。
横から手が伸びてきて天が男の喉を掴み潰す。
ボキッ
「あははははははは、この血はダーメ」
天が俺の首をベロンと舐める。その熱い舌の感覚にただでさえ興奮している体にぞくぞくとした快感が走る。
首を解放され、真っ直ぐに俺の目を見てにやりと笑う。その獣みたいな雰囲気に下半身が反応をする。
「最後のはちょっと……依頼が入っている。ここで待っていろ」
天の口元がヤバい。目も完全にイっている。彼は両手を広げて指をペキペキ鳴らす。体が一回り大きくなったように見える。
無音でドアを開け、そのまま入っていく。
「……」
彼はちらりと俺を見てから、静かにドアを閉める。
俺は疲れて階段の上に座って周りを見渡す。彼が通った場所だけ夥しい量の血が飛び散っている。
――――まさに『食い散らかす』、だな
暫くしてから部屋の中から物が壊れる音が聞こえてきた。そして天の狂ったような笑い声。非常に、楽しそうな。嫌な音が絶えず聞こえてくる。
そしてとても長く悲鳴が聞こえてきた。
俺は目を閉じ、それらの音を聞きながら、荒れた息を整える。
◇
暫くして部屋から出てきた天は完全にハイになっていた。
まるでさっきの状態が準備運動のようだ。ずっと麻薬中毒のように瞳孔が開いて呼吸が荒い。相変わらず顔は返り血で染まっている。
屋敷を出る前に球体の小型カメラで写真を撮る。死体は一体ずつ連写して時折血の跡の写真も入れる。これは、依頼を完了した証拠だろうか。最後の部屋のは天がもう写真を撮り終わったらしくドアを開ける事はなかった。
コレクターと違って証拠を提供するのは大変そうだ。彼の仕事についてはあまり分からない。でも、もし恨みを持った依頼人ならば彼のような徹底的なやり方は大歓迎だろう。
写真が終わると家の分電盤の漏電ブレーカーに何やら細工をする。そこから火花が飛び散り、煙が上がる。サージさせて爆発的な電流を流し、機械という機械が四方から爆発する。焦げ臭い、ブラスチックが溶けるような異臭。そして一斉に敷地中の電源が落ちる。
もう映像物は残っていないだろう。
窓からの月明かりだけで部屋から部屋へと移動する。小さな白い円盤のボタンを押してポイポイと遺体付近に投げ回る。一個一個から白っぽい酸霧がシューシュー飛び出す。フッ化水素酸で証拠の残った肉片や血等を破壊していくのだろうか。壁を素手で触っていたのを思い出す。骨は溶かさずに捨てて置く。物理的な証拠はこれでなくなる。
以前、餓鬼の仕事が終わった現場は見るに堪えないと聞いた事がある。それが非常によく分かる。死体が転がり、家も使えない物になっている。正直、こんなにぐちゃぐちゃな現場は見た事がない。バンパイアよりも酷い血液狂だ。血に慣れている俺でさえ直視したくない。
天は一通り仕事を終わらせると無言のまま俺の腕を掴み凄い力で引っ張って行く。抗議しても何も聞こえていないみたいに反応もない。
パンッ パンッ
ピシピシッ
すぐ横の壁の破片が小さく飛び散って頬が切れる。即座に頭を下げて残りの階段を掛け上がる。最上階では天が男の首を両手で絞めている。足元には打った拳銃が転がっている。横の壁沿いの動きに気付き俺はナイフを走らせる。
「ギィヤァァァア」
躊躇する事なくナイフを突き刺す。天をチラッと見ると彼ももう一人の男に飛び乗っている。
――――やっぱ早いな
俺は暴れる男の血を目の前に持ってきてスキャンする。ピピっと赤い警告が出る。
感染済みの使えない血。
横から手が伸びてきて天が男の喉を掴み潰す。
ボキッ
「あははははははは、この血はダーメ」
天が俺の首をベロンと舐める。その熱い舌の感覚にただでさえ興奮している体にぞくぞくとした快感が走る。
首を解放され、真っ直ぐに俺の目を見てにやりと笑う。その獣みたいな雰囲気に下半身が反応をする。
「最後のはちょっと……依頼が入っている。ここで待っていろ」
天の口元がヤバい。目も完全にイっている。彼は両手を広げて指をペキペキ鳴らす。体が一回り大きくなったように見える。
無音でドアを開け、そのまま入っていく。
「……」
彼はちらりと俺を見てから、静かにドアを閉める。
俺は疲れて階段の上に座って周りを見渡す。彼が通った場所だけ夥しい量の血が飛び散っている。
――――まさに『食い散らかす』、だな
暫くしてから部屋の中から物が壊れる音が聞こえてきた。そして天の狂ったような笑い声。非常に、楽しそうな。嫌な音が絶えず聞こえてくる。
そしてとても長く悲鳴が聞こえてきた。
俺は目を閉じ、それらの音を聞きながら、荒れた息を整える。
◇
暫くして部屋から出てきた天は完全にハイになっていた。
まるでさっきの状態が準備運動のようだ。ずっと麻薬中毒のように瞳孔が開いて呼吸が荒い。相変わらず顔は返り血で染まっている。
屋敷を出る前に球体の小型カメラで写真を撮る。死体は一体ずつ連写して時折血の跡の写真も入れる。これは、依頼を完了した証拠だろうか。最後の部屋のは天がもう写真を撮り終わったらしくドアを開ける事はなかった。
コレクターと違って証拠を提供するのは大変そうだ。彼の仕事についてはあまり分からない。でも、もし恨みを持った依頼人ならば彼のような徹底的なやり方は大歓迎だろう。
写真が終わると家の分電盤の漏電ブレーカーに何やら細工をする。そこから火花が飛び散り、煙が上がる。サージさせて爆発的な電流を流し、機械という機械が四方から爆発する。焦げ臭い、ブラスチックが溶けるような異臭。そして一斉に敷地中の電源が落ちる。
もう映像物は残っていないだろう。
窓からの月明かりだけで部屋から部屋へと移動する。小さな白い円盤のボタンを押してポイポイと遺体付近に投げ回る。一個一個から白っぽい酸霧がシューシュー飛び出す。フッ化水素酸で証拠の残った肉片や血等を破壊していくのだろうか。壁を素手で触っていたのを思い出す。骨は溶かさずに捨てて置く。物理的な証拠はこれでなくなる。
以前、餓鬼の仕事が終わった現場は見るに堪えないと聞いた事がある。それが非常によく分かる。死体が転がり、家も使えない物になっている。正直、こんなにぐちゃぐちゃな現場は見た事がない。バンパイアよりも酷い血液狂だ。血に慣れている俺でさえ直視したくない。
天は一通り仕事を終わらせると無言のまま俺の腕を掴み凄い力で引っ張って行く。抗議しても何も聞こえていないみたいに反応もない。
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