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第三章 天職と野獣
③ 天職と野獣
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◇
その大きな屋敷は暗い水路に面していた。セキュリティがしっかりしている門が厳重に幾十にも鍵がかけられている。高い門の上には有刺鉄線が張り巡らされている。
天は水路の方から壁に沿って物凄く早いスピードで登っていく。掌に納まる小さな円形のネイルガンらしき物でどんどん小さな釘を壁に打ち込み、それを軸にして登るよりも垂直な壁を走り上がっている。
身体能力の凄さは圧巻だ。俺は何とかギリギリ追いかけている状態でちょっとでも気を抜いたら置いて行かれる。いつもはあの薄っすらと笑っている顔が、今は無表情で目だけが大きく爛々としている。
壁の一番上まで行くといつの間にかネイルガンの代わりに持っているクリッパーで有刺鉄線を躊躇なくパチンパチンと切っていく。そのままひらりと塀を乗り越えて向こう側に飛び降りる。
俺が塀の上に辿り着く頃には彼はもうすでに庭を建物添いに突っ切っている。彼が窓の一つを撫でるだけでガラスが切れたみたいに外れる。動作の一つ一つは流れるようで無駄がない。そのまま部屋に入っていく。
俺が中に入った頃にはもうすでにそこは戦場の痕のようだ。
その部屋には三遺体がある。三人とも首が胴体から離れて転がっている。
廊下の方で悲鳴が上がる。
俺は急いでドアを開け、暗い廊下に出る。床一面に散らばった電球やライトの破片。
廊下の突き当りで天が素手で喉を引き裂いているように見える。短い刃のナイフを握っているのだろうか。
「ひゃははははははは!」
例の天の狂った笑い声が聞こえてくる。天は目を見開き口が耳まで広がっていそうなぐらい狂ったように笑っている。両手の爪を指の力を凶器にして、人間を裂いているような錯覚を受ける。その周りで悲鳴が絶えない。
「あはははははははは」
ブシュッ
顔に大量の返り血を浴びている。その中で目と笑っている口元が異様に目立つ。真っ赤に染まっている、笑う赤い狂人。
「……あ」
こいつのコードネーム、今、分かってしまった。
――――血に飢えた狂人、血と遺体を食い荒らす『餓鬼』だ!
鳥肌が一気に全身に立つ。項の毛が逆立つ。
――――めちゃめちゃクソヤバいって事で有名な上位キラーじゃねぇかよ!
喉がヒュッと鳴る。
その瞬間、天がこっちを見る。目だけがぎらついている。顔から血が滴る。頭をゆっくり、ゆっくり傾ける。そして無言で左を指差す。
指した方を見ると若い女性が立っている。怖がって震えているのがここまで見て取れる。
天は笑顔のまま身動きせずに俺を見ている。観察をしている。
――――試しているのか
俺は黙って針を手にする。そのまま彼女の前まで行くと恐怖に怯えた目を向けてくる。必死に目で命乞いをしている。
――――ごめんね
無言で手を振り上げて首の頸動脈に針を突き刺す。
急いで輸血袋をセットし、次々と血を収集していく。どんどん血の流れが弱くなる。
後ろの方で悲鳴が上がる。俺は最後の袋を取ってベストに仕舞う。動かなくなった首から針を抜く。
彼女の首を支えている手に男の手がするんと重なる。ビクッとして手を離すと女の身体が音を立てて落ちる。
背後から天の濡れた手が俺の首を撫でてくる。滑り回る彼の長い指にぞくぞくした感覚で顎が上がる。鼓動が激しい。背中に触れている彼の体温が熱い。天がいつもよりも欲望に塗れた声で、耳元でねっとりと笑う。
「二階」
そのまま離れた彼に付いて行き、突き当りの階段を上がって行く。壁を撫でながら天が上る。まるで壁に愛撫しているかのように愛おしそうに触れる。指紋は気にしていないのだろうか。とても嬉しそうに、踊るように階段を上がる。
その大きな屋敷は暗い水路に面していた。セキュリティがしっかりしている門が厳重に幾十にも鍵がかけられている。高い門の上には有刺鉄線が張り巡らされている。
天は水路の方から壁に沿って物凄く早いスピードで登っていく。掌に納まる小さな円形のネイルガンらしき物でどんどん小さな釘を壁に打ち込み、それを軸にして登るよりも垂直な壁を走り上がっている。
身体能力の凄さは圧巻だ。俺は何とかギリギリ追いかけている状態でちょっとでも気を抜いたら置いて行かれる。いつもはあの薄っすらと笑っている顔が、今は無表情で目だけが大きく爛々としている。
壁の一番上まで行くといつの間にかネイルガンの代わりに持っているクリッパーで有刺鉄線を躊躇なくパチンパチンと切っていく。そのままひらりと塀を乗り越えて向こう側に飛び降りる。
俺が塀の上に辿り着く頃には彼はもうすでに庭を建物添いに突っ切っている。彼が窓の一つを撫でるだけでガラスが切れたみたいに外れる。動作の一つ一つは流れるようで無駄がない。そのまま部屋に入っていく。
俺が中に入った頃にはもうすでにそこは戦場の痕のようだ。
その部屋には三遺体がある。三人とも首が胴体から離れて転がっている。
廊下の方で悲鳴が上がる。
俺は急いでドアを開け、暗い廊下に出る。床一面に散らばった電球やライトの破片。
廊下の突き当りで天が素手で喉を引き裂いているように見える。短い刃のナイフを握っているのだろうか。
「ひゃははははははは!」
例の天の狂った笑い声が聞こえてくる。天は目を見開き口が耳まで広がっていそうなぐらい狂ったように笑っている。両手の爪を指の力を凶器にして、人間を裂いているような錯覚を受ける。その周りで悲鳴が絶えない。
「あはははははははは」
ブシュッ
顔に大量の返り血を浴びている。その中で目と笑っている口元が異様に目立つ。真っ赤に染まっている、笑う赤い狂人。
「……あ」
こいつのコードネーム、今、分かってしまった。
――――血に飢えた狂人、血と遺体を食い荒らす『餓鬼』だ!
鳥肌が一気に全身に立つ。項の毛が逆立つ。
――――めちゃめちゃクソヤバいって事で有名な上位キラーじゃねぇかよ!
喉がヒュッと鳴る。
その瞬間、天がこっちを見る。目だけがぎらついている。顔から血が滴る。頭をゆっくり、ゆっくり傾ける。そして無言で左を指差す。
指した方を見ると若い女性が立っている。怖がって震えているのがここまで見て取れる。
天は笑顔のまま身動きせずに俺を見ている。観察をしている。
――――試しているのか
俺は黙って針を手にする。そのまま彼女の前まで行くと恐怖に怯えた目を向けてくる。必死に目で命乞いをしている。
――――ごめんね
無言で手を振り上げて首の頸動脈に針を突き刺す。
急いで輸血袋をセットし、次々と血を収集していく。どんどん血の流れが弱くなる。
後ろの方で悲鳴が上がる。俺は最後の袋を取ってベストに仕舞う。動かなくなった首から針を抜く。
彼女の首を支えている手に男の手がするんと重なる。ビクッとして手を離すと女の身体が音を立てて落ちる。
背後から天の濡れた手が俺の首を撫でてくる。滑り回る彼の長い指にぞくぞくした感覚で顎が上がる。鼓動が激しい。背中に触れている彼の体温が熱い。天がいつもよりも欲望に塗れた声で、耳元でねっとりと笑う。
「二階」
そのまま離れた彼に付いて行き、突き当りの階段を上がって行く。壁を撫でながら天が上る。まるで壁に愛撫しているかのように愛おしそうに触れる。指紋は気にしていないのだろうか。とても嬉しそうに、踊るように階段を上がる。
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