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第六章 銀細工のように練られる関係
57 異世界の移動手段
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◇◇
イーランの料理はやはり美味しい。
今回は土の中に住む獣の煮込み料理だ。獣といっても話を聞くとウナギの獣版みたいなイメージが沸く。だが相変わらず色が毒々しい。ターコイズと黄色の縞々模様の肉がホットピンクのスープに真珠みたいな球体と浮いている。球体はスパイス代わりの木の実だ。味はいいが、やはりビジュアルが半端ない。あとは食感。スパイスは始めマシュマロみたいな食感なのだが、噛めば噛むだけプチプチとした食感へと変化をする。
イリュも見慣れない食材らしく、頻りに匂いを嗅いでいる。彼がいた時代の動植物が進化してしまった物も多いらしい。俺も例えば朝顔がいきなり炭酸飲料を吐き出すような進化をしていたらびっくりする。
食後は赤いソファに移動してイリュに寄り掛かる。筋肉質で重い右腕を俺の肩に乗せる。彼の野生の香りに包まれながら硬い感触の胸に寄りかかる。
「……どうかしましたか?」
イーランが優しくソファの反対側から声を掛けてくる。触れていないと落ち着かないのか、俺の足を真っ直ぐ自分の方に引っ張って優しくマッサージしだす。
「ん……実は、王様から来城して欲しいって手紙が来たんだ」
「遅かれ早かれ招待状が届くとは思っていました。私も同行してもいいですか?」
「一緒にいてくれる方が嬉しい。イリュとニアも来てくれる?」
上からイリュが覗き込んで頷く。彼の前髪が動きに合わせて揺れる。
「ああ、何があるか分からんから行く」
「我も行こう。どんな子孫が王になったか興味がある」
イリュが鼻を鳴らし横柄に、ニアは面白そうに笑っている。アラカイはそれに頷く。
「では移動の手配をしよう。馬に乗って四日ほどの距離だ。ユエン、故郷の馬は乗りやすかったのか?」
「え、今まで乗った事ないよ」
一瞬、皆が静かになる。
「移動はどうしていたのだ?」
「自動で動く機械とかに乗っていた」
軽くアラカイに車や電車を説明すると非常に関心を持つ。特にあまり揺れない事や長距離移動中に寝る事も可能だと説明すると感心して唸る。
「是非ともその車や電車や飛行機というのが欲しいな。日中移動が可能になると国も大きく発展をするだろう」
「発展するのは別にいいけどよ、先ずは明日どうするんだ?」
「アラカイよ、我とユエン、そしてイリュがひと足先に王都へ行こう」
突然ニアがアラカイとイリュの会話を遮る。彼の金の瞳がアラカイに注がれる。
「我とイリュならば日中も動ける。早い方が飼い主には楽であろう。帰路はゆっくりでも良かろうが、行く時は心身ともに負担の少ない方が良い」
「でもみんな行くんだったら、どうせだったら一緒の方がいいんじゃないのか?」
俺の答えにアラカイは暫く無言でいたが、やがて頭を横に振る。
「いや、ニア様の言う通りだ。ユエンはあまり長く無理をしない方がいいだろう。疲れてくると血の香りが変わってしまう」
「疲れた香りだと問題があるの?」
「疲れた香りってよりも弱った香りが問題だ。そなたを利用したり疲れた隙に入り込もうとする輩が増えるぞ」
質問にはイリュが答える。アラカイは俺の手を取って頷く。
「イリリーユ国全体としては君に友好的だ。だが王都では野心の強い吸血鬼が多く集まっている。君のその誰よりも濃厚な香りと体液、そして古代種を探し出して目覚めされ、従わせる力。どちらも物凄く危険で魅力的だ。容易く国を動かせてしまうし何でも欲しい物が手に入る影響力がある。君を懐柔しようと争いになるかしれないし、君を引き込んだり誘惑をしようとするだろう。……ナーガ国王様とて、例外ではないはずだ」
イーランの料理はやはり美味しい。
今回は土の中に住む獣の煮込み料理だ。獣といっても話を聞くとウナギの獣版みたいなイメージが沸く。だが相変わらず色が毒々しい。ターコイズと黄色の縞々模様の肉がホットピンクのスープに真珠みたいな球体と浮いている。球体はスパイス代わりの木の実だ。味はいいが、やはりビジュアルが半端ない。あとは食感。スパイスは始めマシュマロみたいな食感なのだが、噛めば噛むだけプチプチとした食感へと変化をする。
イリュも見慣れない食材らしく、頻りに匂いを嗅いでいる。彼がいた時代の動植物が進化してしまった物も多いらしい。俺も例えば朝顔がいきなり炭酸飲料を吐き出すような進化をしていたらびっくりする。
食後は赤いソファに移動してイリュに寄り掛かる。筋肉質で重い右腕を俺の肩に乗せる。彼の野生の香りに包まれながら硬い感触の胸に寄りかかる。
「……どうかしましたか?」
イーランが優しくソファの反対側から声を掛けてくる。触れていないと落ち着かないのか、俺の足を真っ直ぐ自分の方に引っ張って優しくマッサージしだす。
「ん……実は、王様から来城して欲しいって手紙が来たんだ」
「遅かれ早かれ招待状が届くとは思っていました。私も同行してもいいですか?」
「一緒にいてくれる方が嬉しい。イリュとニアも来てくれる?」
上からイリュが覗き込んで頷く。彼の前髪が動きに合わせて揺れる。
「ああ、何があるか分からんから行く」
「我も行こう。どんな子孫が王になったか興味がある」
イリュが鼻を鳴らし横柄に、ニアは面白そうに笑っている。アラカイはそれに頷く。
「では移動の手配をしよう。馬に乗って四日ほどの距離だ。ユエン、故郷の馬は乗りやすかったのか?」
「え、今まで乗った事ないよ」
一瞬、皆が静かになる。
「移動はどうしていたのだ?」
「自動で動く機械とかに乗っていた」
軽くアラカイに車や電車を説明すると非常に関心を持つ。特にあまり揺れない事や長距離移動中に寝る事も可能だと説明すると感心して唸る。
「是非ともその車や電車や飛行機というのが欲しいな。日中移動が可能になると国も大きく発展をするだろう」
「発展するのは別にいいけどよ、先ずは明日どうするんだ?」
「アラカイよ、我とユエン、そしてイリュがひと足先に王都へ行こう」
突然ニアがアラカイとイリュの会話を遮る。彼の金の瞳がアラカイに注がれる。
「我とイリュならば日中も動ける。早い方が飼い主には楽であろう。帰路はゆっくりでも良かろうが、行く時は心身ともに負担の少ない方が良い」
「でもみんな行くんだったら、どうせだったら一緒の方がいいんじゃないのか?」
俺の答えにアラカイは暫く無言でいたが、やがて頭を横に振る。
「いや、ニア様の言う通りだ。ユエンはあまり長く無理をしない方がいいだろう。疲れてくると血の香りが変わってしまう」
「疲れた香りだと問題があるの?」
「疲れた香りってよりも弱った香りが問題だ。そなたを利用したり疲れた隙に入り込もうとする輩が増えるぞ」
質問にはイリュが答える。アラカイは俺の手を取って頷く。
「イリリーユ国全体としては君に友好的だ。だが王都では野心の強い吸血鬼が多く集まっている。君のその誰よりも濃厚な香りと体液、そして古代種を探し出して目覚めされ、従わせる力。どちらも物凄く危険で魅力的だ。容易く国を動かせてしまうし何でも欲しい物が手に入る影響力がある。君を懐柔しようと争いになるかしれないし、君を引き込んだり誘惑をしようとするだろう。……ナーガ国王様とて、例外ではないはずだ」
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