通りすがりの龍喰らい

ヨルムンガンド

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第二章

テンプレ……かと思いきや?

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 「や、野盗だァァァァァァァァァァァ!!!!!」

 「!?」
 
  突如として、前方から悲鳴が上がった。

  俺は場違いながらも、またテンプレかと思ってしまった。

  でも、仕方ないことだろう。大きな街へと続く、幹線道路はだいたい野盗やら、山賊やらが居る。そして、人目のつかない森林へ連れ込み、襲う。

 俺のついた言い訳も、あんなド田舎でさえなければ通じたかもしれないと、少し思った。

 
 __行こう、ベルセルク。

 そんな、言葉掛けすらなかった。気づいた時には、ベルセルクは走り出していた。鬱蒼とした深い森林の中へと駆けていく。

 ぐんぐんと、悲鳴の根源との距離が縮まっていく。五日間の修行をもってしても、ベルセルクのスピードについていけなかった。
 
 やはり、龍である。身体能力が異常なんだな、これが。

 それでも、何とかベルセルクが現場についたのを確認することが、できた。


 「た、助けてぇくれぇぇぇぇぇぇぇ……」

 「くそっ、間に合わなかったか」

 俺が追いついた時には、 野盗に襲われたと見られる商人達は、襲われた後だった。馬車はひっくりかえり、中はもぬけの殻だった。

  商人達は、森の中にできた木のないエリア__確かギャップとかいった__にいた。数は、目測で二人。全員が男だ。

  「大丈夫ですか?」

 俺は歩み寄って声を掛けようとした。





 だが俺が近づこうとすると、商人がニヤリとした気がした。足を止めてしまう。





 「どうしたの、ライト?」

 ベルセルクはまだ気づいていない。いや、俺の方が考えすぎなのかもしれないが。

 「ちょっと、怪しい気がする」
 
 俺が正直に言うと、ベルセルクも表情を変える。

 「どこが?」

 「あいつら、かもしれない。近づくと、少し笑った気がしたんだ」

 「分かった。警戒しつつ、接近してみよう」

  今度は、ゆっくりとにじり寄っていく。そっと、何かをされても対応できるように、歩いていく。

 「は、早く助けてぇくれー!」

 商人は、助けを求める。声は上擦っている。

 「確かに、怪しいね。焦っているように感じるな」

 ベルセルクの指摘通り、商人達は、少し焦っているように見える。まるで、
 
 「もっとだぁ、もっと近づいてくれ!」

 「決まりだね」

 「ああ」

 答えは出た。あとは、行くだけだ。

 「今から行く!もう少しだけ待っててくれ」

 俺が、聞こえるように大きな声を出すと、商人達は安堵する。普通に考えれば、救出されることが分かったからだと思う。

 けれど、もう彼らの怪しさは、無視できないほどのものだった。

 「今から行っくよっと、龍式武術ドラゴマーシャル第壱式『縮地』!」

 体が消える。一瞬のことなので、彼らはまだ俺が跳んだことに気づかずに、安堵の表情のままだった。

 着地。

 「ひいいっ!」

 商人は理解がようやく追いつき、驚く。

 ドスッ。

 鈍い音がする。何かが、商人の手から落ちたのだ。

 「あっ……」

 商人から声が漏れる。いや、落ちたものから判断すると、そんなことも言えないだろう。
 
  それは、だったからだ。

 「これは、どうゆうことですかね?」

 助けてもらう側が、持つはずのものではなかった。

 「………ぐっっ、やれぇ、ビジェス!」
 
 「ようやく化けの皮が剥がれたか」

 「ライトの言う通り、か…」

 ビジェスと呼ばれた野党の片割れは、口を動かし何かを唱える。

 「ま、まずい。魔法だ、ライト!」

 「え?」

 予想外だった。まさか、こんな野盗が魔法を使えるなどと思わなかった。対応が遅れてしまう。

 しかし、

 「ふ、ふ炎球ファイアボール!」

 いかにも、下級魔法らしい技名が出てくる。ある意味驚いてしまう。

 「こんななのか……?」

 赤竜の炎攻撃に比べれば、大きさも速さも低レベルだった。

 「ははっ、そのまま燃え尽きろぉぉぉ!」

 野盗は、俺の発言を勘違いしていた。 恐怖のあまり体が動かないのだと、判断したのだろう。

 



 ポスゥ…

 



 俺の肌に触れたその炎球とやらは、情けない音を立て消えた。無論痛くも痒くもないし、火傷すらしない。

 「嘘、だろ……」

 魔法を放ったビジェスだけでなく、俺の目の前の奴まで放心状態だった。

 「ふーん、心配する程じゃなかったか」

 ベルセルクも、自分の考えが杞憂に終わったことを知り、安心する。

 「おいおい。この程度の魔法が効くとでも?雑草ならともかく、このザマじゃ木の一本すら、燃やせねぇぞ?」

 「た、助けてぇくれぇぇぇぇぇぇぇ……」

 奇しくも、俺たちをおびき寄せる時に使った台詞を吐く。だが、その声音は本当に震えており、恐怖がありありと表れていた。

 「どうっすかなぁ。なぁ、ベルセルク?」

 俺は、彼女に判断を委ねることにした。

 「縛って、ドナセスの役人に提出、かな」

 「りょうかーい」

 俺たちの会話を聞き、落胆したようで彼らは溜息をついた。




 しかし、





  「くっくっく、ばぁーか」

 「っ?!」

 
  突然、野盗は笑い出す。諦笑ではなく、嘲笑。勝利をまだ信じている。

 「ライト、上!」

 「!」

 今度こそ、焦って上を向く。


 そこには、一つの魔法陣が発生していた。色は、毒々しい紫。竜が出したほどの複雑さはないが、文字がびっしりだった。

 「こ、これは……」
 
 「ビジェスの得意魔法、毒針ポイズンニードルだ!」

 「そうか、ライトを人質にするつもりか!」

 ベルセルクは、その魔法の真意にいち早く気づく。毒で身動きの取れない俺を人質にしてしまえば、一気に形勢逆転できる。

 「まぁ、魔法が発動すればの話だけどね」

 「はあ?」

  「龍式武術ドラゴマーシャル第弐式『狂気』」

 俺は、頭上に発生した魔法陣に右手で触れる。

  ゴバァァァァァァァァァァァァァァッッッッッッッッッ!!!!!!!

  派手なものが割れる音がする。

 「な、なにぃ!?」

 有り得ないことではない。

 魔法を失敗ファンブルさせたり、詠唱そのものを中断させる詠唱破壊スペルブレイクは存在するとベルセルクは言っていた。

 「だ、だけど魔法陣破壊するなんて、出来んのかよぉっ!」

 野盗の言うことは最もだ。

 「しっかし、俺のこの技は気を大量に送り込むんだ。いくら、タイプが違うとはいえ、力は力。莫大な量の『気』によって、マナが歪められると思ってな。賭けだけど、上手くいってよかった」

 「くそっ」

 「終わりだ」

 野盗が見せた隙を、俺とベルセルクが見逃すわけがなかった。

 ベルセルクは魔法を使うビジェスの方を、俺は足元のやつをそれぞれ処理する。

 意識を刈り取られた二人は、地に力なく倒れる。

 ようやく、これで戦闘終了だろう。

 俺たちは、フゥと安堵の息をついた。
 

 
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