6 / 8
SEASON 1
その存在は、突然に。
しおりを挟む
「…依頼通知?」
<!緊急事態!至急現場に急行せよ。>
<未確認の新種の獸と思われる生命体が、○○市△△区◇◇通りに出現>
<体長およそ15メートル、次数は、4または5と思われる>
<担当者以下2名。不知火炎華。白羽一兵>
「嘘、、、でしょ、、」
こんな時に、新種の獣なんてあまりに間が悪い。
通知が切られてしまっている状態ということは、つまり白羽がその依頼の存在を認知できないということだ。
皮肉なことに、半分は彼女の望み通りだ。まるで、『悪魔の契約』だった。
「でも、私が行かないと!」
大きい声を出して、自身を鼓舞する。
窓を開け、寝間着のままで夜の世界へと飛び出した。
「はああっ!」
足元で炎を爆発させ、その威力で飛ぶ。ぐんぐん加速していく。周囲の気流を熱操作によって変えることで、加速に加速を重ねる。
家を飛び出してから、数秒で亜音速のレベルにまで到達していた。音速まで出さないのは、ソニックブームや、空気の破裂音を生み出さないためだった。
あっという間に、目的地の近くのビルの屋上へと降りる。
「あれが標的か…」
簡単に言えば、獅子だった。相違点と言えば、その大きさと、、、、
「水流装甲か…厄介ですね…」
獣の中には、アカムの弱点を学習したのかどうか不明だが、水流装甲を生み出す種が確認されている。
その獅子の体も、月光に煌めく透明な流体で覆われていた。
総称して、水使い。どこかの国の聖書で、水を意味するという。
(私の能力との相性は最悪……)
火をメインに使う自分にとって、これほど厄介なのはないだろう。悪魔はここにもいたようだ。
(…一瞬で莫大な熱を出せば、いけるか?)
他に方法がない。熱を操る自分には、これしかやりようがなかった。熱ではなく火を操る異能でなかっただけ、マシだろう。
とにかく、倒さなければならない。
近くの遊園地の観覧車に備え付けられている時計を見る。
(まだ23時か…間に合うな)
再度、飛ぶ。
ビルの隙間を縫うようにして、近づいていく。標的に接近を勘づかれないためだ。
(この攻撃は、一発勝負です。相手に気づかれずに、頭を狙うしか勝ち目はない!)
獅子の背後に回り込む。完全に死角だ。
いける。
弾丸のように頭を目掛けて、突っ込んでいく。
頭に触れるその瞬間、私は叫ぶ。
「大爆発!」
「?!」
獅子が異変に気づいたようだが、もう既に手遅れだ。
光り輝く。一瞬にして、摂氏2000度を軽く超えていく。この時点でも、鉄なんかはどろどろに融解する。
「まだまだぁっ!」
さらに温度が上がっていく。もう、地球のマントルと同じ温度になっているだろうか。勝利を確信し、熱源の中心で思わず笑みが零れる。
だけど、私は知らなかった。
液体である水が、急激に加熱されたらどうなるか?
答えは、『水蒸気爆発』だ。
一瞬に気化された水は、体積が約1700倍になる。その体積の膨張によって爆発が引き起こされる。
量によっては山体崩壊すら引き起こす、凶悪な一撃が目前で炸裂する。
「きゃあああああっっっ!!!!!!!!」
錐揉み状に墜落していく。ほとんど垂直に近い形で、地面に叩きつけられる。
すぐに起き上がり、二次被害を防ぐため、道路脇へ飛び込む。
着地の瞬間、左腕を折ったようだ。他にも、体の節々が痛む。打撲や捻挫は、数えきれないほどだろう。
「ぐっ、ど、どうなりました?」
身を呈して、放った一撃の成果や、いかに。
その頭部は、先程の爆発で完全に消失していた。
だか、体は消えない
「……ぇ、そ、んな」
グリュ、グリュッ!
それどころか、傷口が不気味に蠢いたと思った瞬間、不快な音を立てながら、急速に肉塊が形成されていく。
ものの数秒で、元通りだった。
つまり、この現象からこのような結論が導き出される。
「……核は頭じゃない?」
正確な位置は、どこぞの先輩のように分かるわけではなかった。
けれど、生物において最も大切なのは頭だと信じている自分にとっては、完全破壊にも関わらず数秒で再生するなど、予想外だった。
「ごぉるるるるぅぅぅぅ?」
「まずい!」
しまった。思考に耽けるあまり、肝心の獅子のことを忘れていた。相手は、頭に一発食らって怒り心頭だろう。
視線を向けた時には、既に眼前まで獅子の雄々しき爪が迫ってきていた。
死ぬ。
自分に迫っているのは、爪ではなく、避けられない死だとすら思った。
自分の誇示のために、愚かな真似をした。それが自身に帰ってきた。
ただそれだけ。自業自得。世の中の当然の摂理。
全てを投げ出し、目を閉じたその刹那。
「おい、どこにバカ後輩を犬死させる先輩がいるんだよ。勝手に諦めてんじゃねぇっ!」
「えっ!」
上の方から声がする。多分ビルの屋上だろう。
信じられなかった。来るはずのない存在。
誰よりも来て欲しくなくて、来て欲しかった存在。
「後で、話は聞かせてもらう。今はこの野郎をぶちのめすぞ」
そして、頼りになる先輩
「はい!」
真の戦いの幕開けだと言わんばかりに、その先輩もとい白羽一兵は、空へと一発の弾丸を放った。
<!緊急事態!至急現場に急行せよ。>
<未確認の新種の獸と思われる生命体が、○○市△△区◇◇通りに出現>
<体長およそ15メートル、次数は、4または5と思われる>
<担当者以下2名。不知火炎華。白羽一兵>
「嘘、、、でしょ、、」
こんな時に、新種の獣なんてあまりに間が悪い。
通知が切られてしまっている状態ということは、つまり白羽がその依頼の存在を認知できないということだ。
皮肉なことに、半分は彼女の望み通りだ。まるで、『悪魔の契約』だった。
「でも、私が行かないと!」
大きい声を出して、自身を鼓舞する。
窓を開け、寝間着のままで夜の世界へと飛び出した。
「はああっ!」
足元で炎を爆発させ、その威力で飛ぶ。ぐんぐん加速していく。周囲の気流を熱操作によって変えることで、加速に加速を重ねる。
家を飛び出してから、数秒で亜音速のレベルにまで到達していた。音速まで出さないのは、ソニックブームや、空気の破裂音を生み出さないためだった。
あっという間に、目的地の近くのビルの屋上へと降りる。
「あれが標的か…」
簡単に言えば、獅子だった。相違点と言えば、その大きさと、、、、
「水流装甲か…厄介ですね…」
獣の中には、アカムの弱点を学習したのかどうか不明だが、水流装甲を生み出す種が確認されている。
その獅子の体も、月光に煌めく透明な流体で覆われていた。
総称して、水使い。どこかの国の聖書で、水を意味するという。
(私の能力との相性は最悪……)
火をメインに使う自分にとって、これほど厄介なのはないだろう。悪魔はここにもいたようだ。
(…一瞬で莫大な熱を出せば、いけるか?)
他に方法がない。熱を操る自分には、これしかやりようがなかった。熱ではなく火を操る異能でなかっただけ、マシだろう。
とにかく、倒さなければならない。
近くの遊園地の観覧車に備え付けられている時計を見る。
(まだ23時か…間に合うな)
再度、飛ぶ。
ビルの隙間を縫うようにして、近づいていく。標的に接近を勘づかれないためだ。
(この攻撃は、一発勝負です。相手に気づかれずに、頭を狙うしか勝ち目はない!)
獅子の背後に回り込む。完全に死角だ。
いける。
弾丸のように頭を目掛けて、突っ込んでいく。
頭に触れるその瞬間、私は叫ぶ。
「大爆発!」
「?!」
獅子が異変に気づいたようだが、もう既に手遅れだ。
光り輝く。一瞬にして、摂氏2000度を軽く超えていく。この時点でも、鉄なんかはどろどろに融解する。
「まだまだぁっ!」
さらに温度が上がっていく。もう、地球のマントルと同じ温度になっているだろうか。勝利を確信し、熱源の中心で思わず笑みが零れる。
だけど、私は知らなかった。
液体である水が、急激に加熱されたらどうなるか?
答えは、『水蒸気爆発』だ。
一瞬に気化された水は、体積が約1700倍になる。その体積の膨張によって爆発が引き起こされる。
量によっては山体崩壊すら引き起こす、凶悪な一撃が目前で炸裂する。
「きゃあああああっっっ!!!!!!!!」
錐揉み状に墜落していく。ほとんど垂直に近い形で、地面に叩きつけられる。
すぐに起き上がり、二次被害を防ぐため、道路脇へ飛び込む。
着地の瞬間、左腕を折ったようだ。他にも、体の節々が痛む。打撲や捻挫は、数えきれないほどだろう。
「ぐっ、ど、どうなりました?」
身を呈して、放った一撃の成果や、いかに。
その頭部は、先程の爆発で完全に消失していた。
だか、体は消えない
「……ぇ、そ、んな」
グリュ、グリュッ!
それどころか、傷口が不気味に蠢いたと思った瞬間、不快な音を立てながら、急速に肉塊が形成されていく。
ものの数秒で、元通りだった。
つまり、この現象からこのような結論が導き出される。
「……核は頭じゃない?」
正確な位置は、どこぞの先輩のように分かるわけではなかった。
けれど、生物において最も大切なのは頭だと信じている自分にとっては、完全破壊にも関わらず数秒で再生するなど、予想外だった。
「ごぉるるるるぅぅぅぅ?」
「まずい!」
しまった。思考に耽けるあまり、肝心の獅子のことを忘れていた。相手は、頭に一発食らって怒り心頭だろう。
視線を向けた時には、既に眼前まで獅子の雄々しき爪が迫ってきていた。
死ぬ。
自分に迫っているのは、爪ではなく、避けられない死だとすら思った。
自分の誇示のために、愚かな真似をした。それが自身に帰ってきた。
ただそれだけ。自業自得。世の中の当然の摂理。
全てを投げ出し、目を閉じたその刹那。
「おい、どこにバカ後輩を犬死させる先輩がいるんだよ。勝手に諦めてんじゃねぇっ!」
「えっ!」
上の方から声がする。多分ビルの屋上だろう。
信じられなかった。来るはずのない存在。
誰よりも来て欲しくなくて、来て欲しかった存在。
「後で、話は聞かせてもらう。今はこの野郎をぶちのめすぞ」
そして、頼りになる先輩
「はい!」
真の戦いの幕開けだと言わんばかりに、その先輩もとい白羽一兵は、空へと一発の弾丸を放った。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる