7 / 8
SEASON 1
先輩としての威厳
しおりを挟む
ここで一旦、獸について整理しておこう。
西暦2000年頃に出現した、異形の怪物である獸。彼らは、多次元論により、他の次元から人間の暮らす三次元に襲来する、と考えられている。
彼らには、対獸物質、通称アカムが有効である。その正体は、ごく限られた場所でしか採掘のできない鉱物であり、水に弱い性質を持つ。
また、獸達はその弱点を認知しているのかは不明だが、獸の中には水を纏い、水流装甲を作り出す種、水使いが存在する。
さて、ここまでは復習だ。
では、水に弱いという性質をどう補填するか?
これは、研究者たちにとっても、それを扱う獸狩りにとっても重要な課題だった。
水流装甲のついた獸だけ、放っておくことも出来ない。
そこで登場したのが『耐水弾(ウラヴ)』だった。獸には対抗し、水に耐久する。そんな理想的な弾薬が製造された当初は、獸関連の者全てが興奮の渦に包まれた。
一度、アカムを耐水性がある金属で包む。その金属は、飛翔中に発生する摩擦熱により、標的に当たる刹那に融解しきるような薄さに加工される。
しかしやはり、そんな画期的なヒーローにも欠点は存在した。
まず第一に、高価であること。
新商品ということもあり、価格は通常の2~3倍ほどが相場だ。基本的に弾薬や、銃器等の武具のメンテナンスは、獸狩りの自己負担である。
いくら耐水性を持つとはいえ、おいそれと購入できるハンターはごく少数だ。
次に、射程。
前述の通り、この弾は当たる直前に融解しきることが、必須条件だ。それより早くても、遅くても効果が薄れてしまう。
そのため、弾道計算がより複雑になることが予想される。
また射程距離も制限されるので、元からその距離に慣れている者で無ければ、射撃感覚を合わせるのにも苦労することになるだろう。
以上の理由から、その高性能を鑑みたとしても『耐水弾』ウルヴの人気は芳しくなかった。
しかし、逆に言えば、
その弱点さえ克服してしまえば、耐水弾は獸にとっておぞましいほどの威力を発揮する。
___________________________________
《主、大丈夫なんですか?こんな高い弾、10発も買っちゃって。あんなオンボロアパートの家賃すら、払えなくなるかもですよ》
「ばーか。あれは、偽装だよ。あんな所に、稼ぎのいい獸狩りがいるなんて、思わねぇだろ?」
《主の通帳だけは、見ないようにしようと心に決めていましたが、ちょっと興味が出てきました。少し、覗いてみますね》
「っておい、弾道計算をとっととやれ!」
《うっひょー!スゲーな、こりゃ。個人で持つ額じゃねぇぞ、これ!》
「興奮のあまり、語尾が変わっちゃってますよ、ネクトさん……」
ここは、またまたとある廃ビルの一室。屋上は、あのライオン擬きに見つかる可能性があるため、屋内にひっそりと隠れチャンスを伺うことにした。
その策が功を奏したのか、獅子ちゃんは辺りを見渡し、必死に自分たちを探している。少し、可愛い。
不知火はあちらこちらに包帯が巻かれ、元は会社のデスクであったはずの横机に、寝かされていた。しかし、血色が悪く戦える状況では無かった。
《すみません、すみません。つい興奮してしまいまして。じゃあ、計算始めます。弾道学に基づく計算に加え、耐水弾の射程距離を考慮して演算開始。、、、、、演算終了。結果、あと約200mの接近が必要》
「まだ近寄らないと、ダメか……」
俺は、溜息をつく。この距離でも充分危険な距離だと言うのに、まだ近づかないといけないなんて。ただでさえ、前衛が使い物にならないというのに。
「すみません、私のせいで……」
「あーあー、そういうのは後回しだ。今は、戦闘に集中しろ。お前がやれることは、炎剣を出すことだけではないだろう?」
「……はい!」
「歩けるか?」
「何とか」
《__演算終了。只今、安全に目標地点まで行くことの出来る最短ルートを割り出しました!》
「ナイスだ、ネクト。よし、あの野郎に一発かますとするか!」
その目は、獣狩りの名に恥じない、狩人のそれだった。
__________________________________
夜の街を一つの影が、踊る。ビルとビルの間を駆ける。獅子の死角になるようなルートを、素早く移動していく。
「ちょ、ちょっと、白羽先輩!?こ、この格好は流石に……くぅぅ……」
「少しは我慢しろ。怪我をしたのは、お前だろ」
「そうですけど……」
不知火は、所謂「お姫様抱っこ」状態だった。足を怪我し、歩くことが難しいと判断した白羽によって、この格好になった。
《あと数分で目的地のビルに着きますよー》
「えっ、もう着いちゃうの…」
「嫌じゃなかったのか?」
「えっと、嫌なわけ、いや、嫌じゃないっていうか、ええと……」
「?」
《ニヤニヤ、心拍数の上昇を感知しましたよぉ、不知火さぁーん?》
「ネクトさんは、黙っててください!」
よく分からないが、きっと色んなことが同時に起きたことで、混乱しているのだろう。
俺はスピードを上げて、一刻も早く到着することを目指した。
「きゃっ、まだスピード上がるんですかっ!もう!」
西暦2000年頃に出現した、異形の怪物である獸。彼らは、多次元論により、他の次元から人間の暮らす三次元に襲来する、と考えられている。
彼らには、対獸物質、通称アカムが有効である。その正体は、ごく限られた場所でしか採掘のできない鉱物であり、水に弱い性質を持つ。
また、獸達はその弱点を認知しているのかは不明だが、獸の中には水を纏い、水流装甲を作り出す種、水使いが存在する。
さて、ここまでは復習だ。
では、水に弱いという性質をどう補填するか?
これは、研究者たちにとっても、それを扱う獸狩りにとっても重要な課題だった。
水流装甲のついた獸だけ、放っておくことも出来ない。
そこで登場したのが『耐水弾(ウラヴ)』だった。獸には対抗し、水に耐久する。そんな理想的な弾薬が製造された当初は、獸関連の者全てが興奮の渦に包まれた。
一度、アカムを耐水性がある金属で包む。その金属は、飛翔中に発生する摩擦熱により、標的に当たる刹那に融解しきるような薄さに加工される。
しかしやはり、そんな画期的なヒーローにも欠点は存在した。
まず第一に、高価であること。
新商品ということもあり、価格は通常の2~3倍ほどが相場だ。基本的に弾薬や、銃器等の武具のメンテナンスは、獸狩りの自己負担である。
いくら耐水性を持つとはいえ、おいそれと購入できるハンターはごく少数だ。
次に、射程。
前述の通り、この弾は当たる直前に融解しきることが、必須条件だ。それより早くても、遅くても効果が薄れてしまう。
そのため、弾道計算がより複雑になることが予想される。
また射程距離も制限されるので、元からその距離に慣れている者で無ければ、射撃感覚を合わせるのにも苦労することになるだろう。
以上の理由から、その高性能を鑑みたとしても『耐水弾』ウルヴの人気は芳しくなかった。
しかし、逆に言えば、
その弱点さえ克服してしまえば、耐水弾は獸にとっておぞましいほどの威力を発揮する。
___________________________________
《主、大丈夫なんですか?こんな高い弾、10発も買っちゃって。あんなオンボロアパートの家賃すら、払えなくなるかもですよ》
「ばーか。あれは、偽装だよ。あんな所に、稼ぎのいい獸狩りがいるなんて、思わねぇだろ?」
《主の通帳だけは、見ないようにしようと心に決めていましたが、ちょっと興味が出てきました。少し、覗いてみますね》
「っておい、弾道計算をとっととやれ!」
《うっひょー!スゲーな、こりゃ。個人で持つ額じゃねぇぞ、これ!》
「興奮のあまり、語尾が変わっちゃってますよ、ネクトさん……」
ここは、またまたとある廃ビルの一室。屋上は、あのライオン擬きに見つかる可能性があるため、屋内にひっそりと隠れチャンスを伺うことにした。
その策が功を奏したのか、獅子ちゃんは辺りを見渡し、必死に自分たちを探している。少し、可愛い。
不知火はあちらこちらに包帯が巻かれ、元は会社のデスクであったはずの横机に、寝かされていた。しかし、血色が悪く戦える状況では無かった。
《すみません、すみません。つい興奮してしまいまして。じゃあ、計算始めます。弾道学に基づく計算に加え、耐水弾の射程距離を考慮して演算開始。、、、、、演算終了。結果、あと約200mの接近が必要》
「まだ近寄らないと、ダメか……」
俺は、溜息をつく。この距離でも充分危険な距離だと言うのに、まだ近づかないといけないなんて。ただでさえ、前衛が使い物にならないというのに。
「すみません、私のせいで……」
「あーあー、そういうのは後回しだ。今は、戦闘に集中しろ。お前がやれることは、炎剣を出すことだけではないだろう?」
「……はい!」
「歩けるか?」
「何とか」
《__演算終了。只今、安全に目標地点まで行くことの出来る最短ルートを割り出しました!》
「ナイスだ、ネクト。よし、あの野郎に一発かますとするか!」
その目は、獣狩りの名に恥じない、狩人のそれだった。
__________________________________
夜の街を一つの影が、踊る。ビルとビルの間を駆ける。獅子の死角になるようなルートを、素早く移動していく。
「ちょ、ちょっと、白羽先輩!?こ、この格好は流石に……くぅぅ……」
「少しは我慢しろ。怪我をしたのは、お前だろ」
「そうですけど……」
不知火は、所謂「お姫様抱っこ」状態だった。足を怪我し、歩くことが難しいと判断した白羽によって、この格好になった。
《あと数分で目的地のビルに着きますよー》
「えっ、もう着いちゃうの…」
「嫌じゃなかったのか?」
「えっと、嫌なわけ、いや、嫌じゃないっていうか、ええと……」
「?」
《ニヤニヤ、心拍数の上昇を感知しましたよぉ、不知火さぁーん?》
「ネクトさんは、黙っててください!」
よく分からないが、きっと色んなことが同時に起きたことで、混乱しているのだろう。
俺はスピードを上げて、一刻も早く到着することを目指した。
「きゃっ、まだスピード上がるんですかっ!もう!」
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし
かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし
長屋シリーズ一作目。
第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。
十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。
頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。
一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
偽夫婦お家騒動始末記
紫紺
歴史・時代
【第10回歴史時代大賞、奨励賞受賞しました!】
故郷を捨て、江戸で寺子屋の先生を生業として暮らす篠宮隼(しのみやはやて)は、ある夜、茶屋から足抜けしてきた陰間と出会う。
紫音(しおん)という若い男との奇妙な共同生活が始まるのだが。
隼には胸に秘めた決意があり、紫音との生活はそれを遂げるための策の一つだ。だが、紫音の方にも実は裏があって……。
江戸を舞台に様々な陰謀が駆け巡る。敢えて裏街道を走る隼に、念願を叶える日はくるのだろうか。
そして、拾った陰間、紫音の正体は。
活劇と謎解き、そして恋心の長編エンタメ時代小説です。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる