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SEASON 1
反撃の時間
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俺たちは、新たな狙撃場所となる廃ビルへ到着した。入口は、シャッターが閉まっていたが、無理矢理蹴り開ける。
思いの外大きい音が鳴り、腕の中の体はビクッと震える。
「は、早く下ろしてください!」
不知火は、ビルに着くなり叫んだ。俺は彼女の機嫌を取るように、さっさと地面に下ろす。
「そんなに嫌だったのか……済まない」
「だから、そういう訳じゃ、ぅぅぅ」
「ん、なんか言ったか?」
「なんでもありません!」
《あー、どっちもダメダメだ、こりゃ》
ネクトは、顔は見えないが訳知り顔をしているような気がする。こちらとしては、意味不明なことに変わりはない。
もしかしたら、体臭がきついのだろうか。いや、今は依頼に集中すべきだ。
「ほら、早く上まで行くぞ。今何時だ、ネクト」
《今、ちょうど○時頃ですね。まだ間に合いますよー》
何とかあの時間までには、やれそうだ。すると、会話に置いてかれた不知火が、抗議の声を上げる。
「え、上行くってまさか」
「よいっしょ、すまんな不知火。少し我慢してくれ」
「は、はい……」
俺はもう一度、姫を抱えると、急いで階段を登った。
これからは、念入りに風呂に入ろうと思った。
__________________________________
「ガキのAI自身が、俺らにリークして来て…」
「どういう風の吹き回しだぁ?」
「俺も、分かりませんよォ……」
一度に、様々なことが起こりすぎた。
まず不知火の動きが、変だった。急に白羽の通知を切るように、ネクトに命じ、その後依頼を実質一人でこなした。
そして、ネクト自身がそのことをバラして来た。確かに、獸狩りのAIにとって、主以外の指令は絶対ではない。
けれども、あんなに人のいいネクトのことだ。余程のことがない限り、そんなことをしない。
(じゃあ、なんであいつはそんなことを……)
すると、部下が血相を変えて走ってきた。
「ぼ、ボス!た、たたたた、大変です!」
「どうした?」
「獸です!」
「ああ?どこが大変なんだよ。まさか、新種でもいたってかぁ?」
「そのまさかです!」
「おいおい、こんな時にかよ………………でも、そうか、あいつが、ネクトが気づいたからなのか!」
「ど、どうしましたボス?」
部下は、状況が分かっていない様子だ。懇切丁寧に説明してやる義理もない。
「お前は、メールを不知火に送れ。新種の獸が出たとな。後、該当者の欄は、不知火と白羽のガキの名前も入れろ」
「え、でもガキの通知はAIに切られてるって聞いたんですけど、、、」
「安心しろ、あいつは俺らより先に気づいているよ」
___________________________________
《結果として、良かったのでしょうか……》
白羽と不知火が、ビルとビルが移動する間に、ネクトは、思考していた。自分の行動は、最適なものだったのかと。
《獸の存在に気づいた時点で、情報を隠すことは事態を悪化させるだけだと、思っての行動だったのですが……》
せっかく、ネクト特有の能力により、獸の接近を感知できたのに。いくら、頼まれたからと言っても、白羽では無い人物からだ。
《しかも、直接主に伝えなければ、反故にしたことにはならないはずです》
不知火の望みは、白羽より依頼の存在を知り、白羽に認めてもらうことだ。最悪、白羽への通知を遅らせることだけでも、彼女の望みは叶うだろう。
《大丈夫ですよね。思い切って、今回のことバラしちゃっいましたけど》
これで、不知火は何らかの処罰はうけることにはなるだろう。それでも、主を裏切るよりマシだ。
《事実、不知火さんを助けることが出来たのですから》
リークがなかったら、木塚側も獣の存在に気づいても、白羽に通達する手段がなかっただろう。
《私が直接言っても、依頼が来るまで信用してくれるかは、分からなかったですしねー》
それが、白羽一平という存在だった。あの男は、AIを信用していない。ネクト自身は、むしろそれを好ましく思っている。
AIは、万能。AIは、絶対。そうなったら、終わりだと考えている。
技術的特異点が来た時、人類はAIに負ける。完全なAI管理社会となる。
それを白羽は、恐れているのだ。
AIは完全ではない。かと言って、人間だって信用はできない。そのため、彼は総合的にどちらの情報も得て、最後に判断を委ねるのは自分自身にしているのだ。
__________________________________
「この階だな」
俺は、あえて目立つ屋上ではなく、その一階下の五階に狙撃ポイントを決めた。
ネクトの予想だと、屋上の方が良いと出ていたが、自己判断でこちらにした。
「ネクト。物体識別コード解読」
《了解。物体識別コード解読》
ポケットに入れてあった俺の端末が、光を放つ。
その光は地面へと当たり、まるで3Dプリンターのように形を作っていく。
現れたのは、一丁の銃。俺の得物だ。米国の対物ライフルに特殊改造を施し、獸用にしたものだ。
俺は、地面に現れた火力の塊を抱きかかえるように、うつ伏せになる。
「あの、私は何を……」
前のビルと同じようにデスクに寝かされている不知火が、訊いてくる。
「お前は、安静だ。とにかく体を休めろ」
「はい……」
俺はそう言うと、呼吸を整えていく。これは、狙撃の慣習だ。
呼吸を落ち着いてくると、俺の視界に赤く光るものが見える。場所は、窓から見える獅子の腹の中。核だ。
「ネクト、弾道計算」
《了解。弾道学、及び耐水弾の射程を考慮した計算を開始…………計算完了。いつでも、行けますよーっと》
俺は、スコープを覗く。スコープは無線で端末と繋がっており、ネクトが計算した弾道学が、白線として現れる。
白線を俺の視線の中だけにある赤い点に合わせる。綺麗にピタリと合う。数ミリのズレもないだろう。
元はこの弾道を予測する線は、赤い色だったのだが、点と同色のため変更した。
「すぅぅ……」
トリガーを握る。
轟!!!!!
爆風が吹き荒れる。近くの窓は衝撃波で粉々になり、コンクリートが小刻みに揺れる。
「きゃあっ!」
後ろから、不知火の悲鳴が上がる。彼女は、初めてだったか。俺も最初はこの音に驚いたものだった。
「不知火…獸を見てみろ」
「えっ……そんな。水流装甲を貫通してる…」
獅子は、苦悶の声を上げ身を捩っていた。
「これが、ウルヴの力だ」
「凄い……」
《損傷率100%、原生次元を回帰を確認》
俺は、それを聞くと一度深呼吸すると、立ちながら話し始める。これは、今までずっと聞きたかったことだ。
「それでな、不知火、ネクト」
「はい?」
《どうしました?》
「隠してる事ないか?」
思いの外大きい音が鳴り、腕の中の体はビクッと震える。
「は、早く下ろしてください!」
不知火は、ビルに着くなり叫んだ。俺は彼女の機嫌を取るように、さっさと地面に下ろす。
「そんなに嫌だったのか……済まない」
「だから、そういう訳じゃ、ぅぅぅ」
「ん、なんか言ったか?」
「なんでもありません!」
《あー、どっちもダメダメだ、こりゃ》
ネクトは、顔は見えないが訳知り顔をしているような気がする。こちらとしては、意味不明なことに変わりはない。
もしかしたら、体臭がきついのだろうか。いや、今は依頼に集中すべきだ。
「ほら、早く上まで行くぞ。今何時だ、ネクト」
《今、ちょうど○時頃ですね。まだ間に合いますよー》
何とかあの時間までには、やれそうだ。すると、会話に置いてかれた不知火が、抗議の声を上げる。
「え、上行くってまさか」
「よいっしょ、すまんな不知火。少し我慢してくれ」
「は、はい……」
俺はもう一度、姫を抱えると、急いで階段を登った。
これからは、念入りに風呂に入ろうと思った。
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「ガキのAI自身が、俺らにリークして来て…」
「どういう風の吹き回しだぁ?」
「俺も、分かりませんよォ……」
一度に、様々なことが起こりすぎた。
まず不知火の動きが、変だった。急に白羽の通知を切るように、ネクトに命じ、その後依頼を実質一人でこなした。
そして、ネクト自身がそのことをバラして来た。確かに、獸狩りのAIにとって、主以外の指令は絶対ではない。
けれども、あんなに人のいいネクトのことだ。余程のことがない限り、そんなことをしない。
(じゃあ、なんであいつはそんなことを……)
すると、部下が血相を変えて走ってきた。
「ぼ、ボス!た、たたたた、大変です!」
「どうした?」
「獸です!」
「ああ?どこが大変なんだよ。まさか、新種でもいたってかぁ?」
「そのまさかです!」
「おいおい、こんな時にかよ………………でも、そうか、あいつが、ネクトが気づいたからなのか!」
「ど、どうしましたボス?」
部下は、状況が分かっていない様子だ。懇切丁寧に説明してやる義理もない。
「お前は、メールを不知火に送れ。新種の獸が出たとな。後、該当者の欄は、不知火と白羽のガキの名前も入れろ」
「え、でもガキの通知はAIに切られてるって聞いたんですけど、、、」
「安心しろ、あいつは俺らより先に気づいているよ」
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《結果として、良かったのでしょうか……》
白羽と不知火が、ビルとビルが移動する間に、ネクトは、思考していた。自分の行動は、最適なものだったのかと。
《獸の存在に気づいた時点で、情報を隠すことは事態を悪化させるだけだと、思っての行動だったのですが……》
せっかく、ネクト特有の能力により、獸の接近を感知できたのに。いくら、頼まれたからと言っても、白羽では無い人物からだ。
《しかも、直接主に伝えなければ、反故にしたことにはならないはずです》
不知火の望みは、白羽より依頼の存在を知り、白羽に認めてもらうことだ。最悪、白羽への通知を遅らせることだけでも、彼女の望みは叶うだろう。
《大丈夫ですよね。思い切って、今回のことバラしちゃっいましたけど》
これで、不知火は何らかの処罰はうけることにはなるだろう。それでも、主を裏切るよりマシだ。
《事実、不知火さんを助けることが出来たのですから》
リークがなかったら、木塚側も獣の存在に気づいても、白羽に通達する手段がなかっただろう。
《私が直接言っても、依頼が来るまで信用してくれるかは、分からなかったですしねー》
それが、白羽一平という存在だった。あの男は、AIを信用していない。ネクト自身は、むしろそれを好ましく思っている。
AIは、万能。AIは、絶対。そうなったら、終わりだと考えている。
技術的特異点が来た時、人類はAIに負ける。完全なAI管理社会となる。
それを白羽は、恐れているのだ。
AIは完全ではない。かと言って、人間だって信用はできない。そのため、彼は総合的にどちらの情報も得て、最後に判断を委ねるのは自分自身にしているのだ。
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「この階だな」
俺は、あえて目立つ屋上ではなく、その一階下の五階に狙撃ポイントを決めた。
ネクトの予想だと、屋上の方が良いと出ていたが、自己判断でこちらにした。
「ネクト。物体識別コード解読」
《了解。物体識別コード解読》
ポケットに入れてあった俺の端末が、光を放つ。
その光は地面へと当たり、まるで3Dプリンターのように形を作っていく。
現れたのは、一丁の銃。俺の得物だ。米国の対物ライフルに特殊改造を施し、獸用にしたものだ。
俺は、地面に現れた火力の塊を抱きかかえるように、うつ伏せになる。
「あの、私は何を……」
前のビルと同じようにデスクに寝かされている不知火が、訊いてくる。
「お前は、安静だ。とにかく体を休めろ」
「はい……」
俺はそう言うと、呼吸を整えていく。これは、狙撃の慣習だ。
呼吸を落ち着いてくると、俺の視界に赤く光るものが見える。場所は、窓から見える獅子の腹の中。核だ。
「ネクト、弾道計算」
《了解。弾道学、及び耐水弾の射程を考慮した計算を開始…………計算完了。いつでも、行けますよーっと》
俺は、スコープを覗く。スコープは無線で端末と繋がっており、ネクトが計算した弾道学が、白線として現れる。
白線を俺の視線の中だけにある赤い点に合わせる。綺麗にピタリと合う。数ミリのズレもないだろう。
元はこの弾道を予測する線は、赤い色だったのだが、点と同色のため変更した。
「すぅぅ……」
トリガーを握る。
轟!!!!!
爆風が吹き荒れる。近くの窓は衝撃波で粉々になり、コンクリートが小刻みに揺れる。
「きゃあっ!」
後ろから、不知火の悲鳴が上がる。彼女は、初めてだったか。俺も最初はこの音に驚いたものだった。
「不知火…獸を見てみろ」
「えっ……そんな。水流装甲を貫通してる…」
獅子は、苦悶の声を上げ身を捩っていた。
「これが、ウルヴの力だ」
「凄い……」
《損傷率100%、原生次元を回帰を確認》
俺は、それを聞くと一度深呼吸すると、立ちながら話し始める。これは、今までずっと聞きたかったことだ。
「それでな、不知火、ネクト」
「はい?」
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