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第一章
成長
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次の日、クリネはほんの僅かな不安を抱きつつ、集合場所となっていた公園へと足を運んだ。
樹木が道に沿って植えられ、広場や、噴水、スポーツのできるスタジアムなど、豊富な設備が地域住民に好評である。
クリネの自宅は、この公園に近く、この場所を提案したのも彼女だった。
因みに、彼女は私服を着ていた。
そこには、予定時間の5分前に着いたというのに、やはりこちらも私服のルクの姿があった。
「あっ、待ちました?」
「大丈夫です。俺も今来たばっかですよ」
このやり取りは、傍から見ると付き合っている男女と思われるのを2人は気づいていない。
「それで、どうだったんですか?ハンターにはなれたんですか?」
どうしても少し嫌味っぽく声音になってしまう。それくらい、ハンターとは一朝一夕になれるものでは無い。
だが、彼の反応はクリネの予想を遥かに裏切るものだった。
「ええ、勿論なれましたよ。それにクリネさんと同じ上級ハンターとやらにも選ばれました」
軽く言葉を失うクリネ。目の前の少年は、「朝食にパンを食べました」と言うくらいの気軽さでものを言っている。
(わ、私のあの努力はなんだったの?)
現実が受け入れられなくて、困惑するクリネ。
「?」
その様子にルクは、訳が分からないと言わんばかりに首を傾げる。
「い、いえ………よ、よ、良かったですね!(上級)ハンターになれて」
「でも、駆け出しなことには変わりないです。いろいろ教えてくださいね!」
突っ込みたい気持ちは山々だが、ここは先輩として我慢し、覚悟を決める。
「………分かりました!これも何かの縁です。一緒に頑張りましょう!」
「よろしくお願いしまーす!」
「あ、旅に行く約束もお忘れなく」
「は、はい……」
この約束も世間一般から見れば、デートの約束と呼ばれるものであるということに2人は気づかないのであった。
___ だが、上級ハンター少女の受難は幕を開けたばかりだった。
市街地にて、
「え、国の地図は全部頭に入ったってどういうことですか!?」
「ベセノムだけじゃなくて、このルーベルニア大陸全てですよ」
今度こそ理解不可能な領域に、彼女は突入した。
世界地図を暗記する。その事がどれほど無謀なことかは初等学校生だって分かる。
今日、この世界には地図がある。国選魔導学者達が様々な技術を駆使して地図を描いている。毎年改定も行われ、精度も向上している。
「そもそも、そんなことする必要あります?」
「まぁ、道楽の一つですよ」
「えぇ……」
彼にとってはきっと、容易いことなのだろう。彼と出会ってまだ1日しか経っていないが、驚かされてばかりである。
出会いの時も、何故あんなところから現れたのか、分からずじまいだ。
時には、クリネの心を見透かしたかのような、鋭い質問をすることもあった。
「そういえば、クリネさんはなんでハンターの装備があんなに、えっと、その………古風なんですか?」
「ああ、それはですね…」
当然の疑問だろう。この世界は魔導を発見してからというもの、驚異的なスピードで成長した。しかも、あの転生者が居たおかげで、昔存在していたアルカナにも対抗できた。
それと同時に、ハンター装備も充実するようになった。軽量かつ防御力、伸縮力の高いファイバー製スーツや、不可能とされてきた携帯電磁砲など初心者でも安心して狩猟の出来る装備が整っている。
しかし、クリネはそんな最新装備には目もくれず、古き良き、オリハルコン製メイルに身を包み、魔鋼と鉄の合金でできた特注の剣を握り、戦う。
理由はクリネ本人にもよく分からなかった。1つ挙げるとするなら、物心がつく始めた頃の記憶である。
__いいか、クリネ。お前は誇り高き*なんだ。誰がなんと言おうと、我が家の伝統を捨ててはならない。我が家は代々剣と鎧を好んで使ってきた、分かるな?
曖昧な記憶である。
誰に、何のために、いつ言われたのか、覚えていない。
だけど、不思議に頭に残っている。何故か、ぞんざいに出来なかった。してはならない気がした。
その為、敢えて効率の悪い装備を身につけている。
別にどこのメーカーがいいとかいう、こだわりは無い。兎に角、オリハルコン製の軽鎧と剣であれば、自然と馴染む。
「へぇ、なんかいいな~」
「なんでそう思うんですか?」
「僕、小さい頃のこと、あんま覚えてなくて…」
「___」
彼の過去がとても気になるのがクリネの本心だ。彼の特異な能力といい、彼には謎なことが多すぎる。
すると、
「あ、いたいた!新人さーーん!ん?あれれ?なんでクリネさんもいるんだ?」
前方の道から誰かが明るい声で此方に駆けてくる。
猫耳で、背が低く童顔。髪はブロンズのショート。そして特徴ある制服から察するに……
「おっはようございまーす!いつでも元気なギルド職員、ラムレットちゃんでーす☆」
樹木が道に沿って植えられ、広場や、噴水、スポーツのできるスタジアムなど、豊富な設備が地域住民に好評である。
クリネの自宅は、この公園に近く、この場所を提案したのも彼女だった。
因みに、彼女は私服を着ていた。
そこには、予定時間の5分前に着いたというのに、やはりこちらも私服のルクの姿があった。
「あっ、待ちました?」
「大丈夫です。俺も今来たばっかですよ」
このやり取りは、傍から見ると付き合っている男女と思われるのを2人は気づいていない。
「それで、どうだったんですか?ハンターにはなれたんですか?」
どうしても少し嫌味っぽく声音になってしまう。それくらい、ハンターとは一朝一夕になれるものでは無い。
だが、彼の反応はクリネの予想を遥かに裏切るものだった。
「ええ、勿論なれましたよ。それにクリネさんと同じ上級ハンターとやらにも選ばれました」
軽く言葉を失うクリネ。目の前の少年は、「朝食にパンを食べました」と言うくらいの気軽さでものを言っている。
(わ、私のあの努力はなんだったの?)
現実が受け入れられなくて、困惑するクリネ。
「?」
その様子にルクは、訳が分からないと言わんばかりに首を傾げる。
「い、いえ………よ、よ、良かったですね!(上級)ハンターになれて」
「でも、駆け出しなことには変わりないです。いろいろ教えてくださいね!」
突っ込みたい気持ちは山々だが、ここは先輩として我慢し、覚悟を決める。
「………分かりました!これも何かの縁です。一緒に頑張りましょう!」
「よろしくお願いしまーす!」
「あ、旅に行く約束もお忘れなく」
「は、はい……」
この約束も世間一般から見れば、デートの約束と呼ばれるものであるということに2人は気づかないのであった。
___ だが、上級ハンター少女の受難は幕を開けたばかりだった。
市街地にて、
「え、国の地図は全部頭に入ったってどういうことですか!?」
「ベセノムだけじゃなくて、このルーベルニア大陸全てですよ」
今度こそ理解不可能な領域に、彼女は突入した。
世界地図を暗記する。その事がどれほど無謀なことかは初等学校生だって分かる。
今日、この世界には地図がある。国選魔導学者達が様々な技術を駆使して地図を描いている。毎年改定も行われ、精度も向上している。
「そもそも、そんなことする必要あります?」
「まぁ、道楽の一つですよ」
「えぇ……」
彼にとってはきっと、容易いことなのだろう。彼と出会ってまだ1日しか経っていないが、驚かされてばかりである。
出会いの時も、何故あんなところから現れたのか、分からずじまいだ。
時には、クリネの心を見透かしたかのような、鋭い質問をすることもあった。
「そういえば、クリネさんはなんでハンターの装備があんなに、えっと、その………古風なんですか?」
「ああ、それはですね…」
当然の疑問だろう。この世界は魔導を発見してからというもの、驚異的なスピードで成長した。しかも、あの転生者が居たおかげで、昔存在していたアルカナにも対抗できた。
それと同時に、ハンター装備も充実するようになった。軽量かつ防御力、伸縮力の高いファイバー製スーツや、不可能とされてきた携帯電磁砲など初心者でも安心して狩猟の出来る装備が整っている。
しかし、クリネはそんな最新装備には目もくれず、古き良き、オリハルコン製メイルに身を包み、魔鋼と鉄の合金でできた特注の剣を握り、戦う。
理由はクリネ本人にもよく分からなかった。1つ挙げるとするなら、物心がつく始めた頃の記憶である。
__いいか、クリネ。お前は誇り高き*なんだ。誰がなんと言おうと、我が家の伝統を捨ててはならない。我が家は代々剣と鎧を好んで使ってきた、分かるな?
曖昧な記憶である。
誰に、何のために、いつ言われたのか、覚えていない。
だけど、不思議に頭に残っている。何故か、ぞんざいに出来なかった。してはならない気がした。
その為、敢えて効率の悪い装備を身につけている。
別にどこのメーカーがいいとかいう、こだわりは無い。兎に角、オリハルコン製の軽鎧と剣であれば、自然と馴染む。
「へぇ、なんかいいな~」
「なんでそう思うんですか?」
「僕、小さい頃のこと、あんま覚えてなくて…」
「___」
彼の過去がとても気になるのがクリネの本心だ。彼の特異な能力といい、彼には謎なことが多すぎる。
すると、
「あ、いたいた!新人さーーん!ん?あれれ?なんでクリネさんもいるんだ?」
前方の道から誰かが明るい声で此方に駆けてくる。
猫耳で、背が低く童顔。髪はブロンズのショート。そして特徴ある制服から察するに……
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