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第二章
評価
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「はい、勿論殺しは禁止なのでね?」
ルクは、少し凄みのある笑顔で言う。完全に立場が逆転していた。
エイコスは倒れたままの姿勢で、腕を目に当てている。
そして、
「くく、クハァ、アハッハッハッハッハッハッハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!」
堰を切ったように笑いだした。目尻には、涙すら出ている。多分、悔しさからではないだろう。負けたはずなのに、まるで宝を得たかのような声音だった。
「「「「「「「「うおおおおおおおおおおおおぉぉおおおおおっっっっっっっっっっ!!!!!!!!!」」」」」」」」
エイコスの笑い声を合図に、場は歓声と熱狂にに包まれる。
「すっ、すげぇ!初心者殺しを倒しちまったぞ、新人がよ!」
「あの新人何者だよ。あいつを倒せるのは、この中にも数人しかいないっつうのに」
「これ、所謂千年に一人の逸材とかいうやつじゃね?」
どうやら、好評価を頂けているらしい。それほどまでに、このエイコスとやらは、強い相手なのだろうか。
(正直、弱い部類なんですけどね……それとも、ガランドさんや師匠と比べるのが間違ってるんでしょうか……?)
ルクが自問していると、ムクっと対戦相手は起き上がった。土埃塗れだが、その表情は晴れやかだった。
「いや、あの時は済まなかった」
ルクにとって、まず初めに出てきたのが謝罪の言葉なのは、驚きだった。彼のことをそこら辺のチンピラの上位互換ぐらいにしか、考えていなかったからだ。
「俺は、いつも新人が入ると覚悟と実力を試すために、こうやって勝負を嗾けているのさ。どちらが欠けていても、このギルドにいるだけ邪魔だということだ」
「そうだったんですね、こちらもついカッとなってしまい、申し訳ありませんでした」
いくら喧嘩を売ってきたのはあちらだとしても、こちらも買ったことは事実である。
さらに、すぐに煽りに乗って感情的になるなど、ハンター失格だ。気付かぬうちに、自分の常套手段を逆に仕掛けられていたようだ。
「いや、仲間を馬鹿にされて平然としてられる方が、俺はどうかと思うぞ?」
「そう言って貰えると助かります」
これにて、新人いびりもとい試験は終了した。
__________________________________
ギルド内に設置された酒場にて。
「アズノベルト出身かー、わざわざこんなことを辺鄙なとこまでようこそ、ってとこだな!」
先程まで戦っていた二人は、酒を酌み交わしていた。ここ、ベセノムは15歳いじょうの飲酒・喫煙を認めている。自己責任であることには、変わりはないが。
エイコスは古くからスサム区で製造が続けられている地酒、ルクは世界中で嗜まれているエールを頂いていた。因みに、エイコスの奢りだ。
「いえいえ、僕の地元はもっと田舎の方にありますよ」
「ってことは、ルベマ村辺りか?」
「いや、ルベマ村からさらに山を二つ超えたところにある村ですよ」
本当はそんな村などない。もし万が一調べられても、地図に載らないような小さな村だといえば、意外とそれで通ってしまう。
「いやぁ、大変なところから来たんだなぁ。それにしても、どうやったらあんなに強くなれんだよ、修行でもしたのか?」
「そんなところです。師匠と慕う女性がいるのですよ…今は、故郷の方で元気に暮らしているでしょう」
これに嘘はない。確かに師匠はいる。ルクの育ての親でもあり、良き友のような存在でもあった。
(でも、あの人のことだから、放浪の旅にでも出てるのかもしれないな…)
ルクは自分の師匠が、何度も世界中を旅していることを知っていた。本人曰く、知識と見聞を高めるためだと言っていた。
「是非、俺も教えてもらいたいもんだ。あの動きは、そう簡単には身につけられないことぐらいは、俺にも分かった。お前さんがかなりの鍛錬を積んできたこともな!」
そう言って、快活に笑う。あの戦いで、随分と彼の中でのルクの株が上がったようだった。
彼からは、あの取っ付きにくい感じは消え失せ、親しみやすさすら感じる。やはりあの時は、半分演技だったのだろう。
「ありがとうこざいます。、、、っと、もうこんな時間ですか。あなたと話していると、時間を忘れてしまいますね」
「おっ、嬉しいこと言ってくれるねぇ!ところで、なんか用事でもあるのか?」
「ちょっと今からクリネさんと一緒に、依頼を受けてこようかと。クリネさんが上級入りしたことで、受けられる依頼が増えたのでね」
「おお、そうかそうか。精が出るな……あ、そういえば」
エイコスはやる気に満ちた若者を送り出そうとしたが、突然何かを思い出したようだった。
「どうしたんですか?」
「お前、知ってるか、最近噂になってる『アレ』」
「と言いますと?」
「ほら、最近よく聞く『アレ』だよ、ええとなんだったけな…………………あ!そうそう、喪失者達だ!」
全く聞き覚えのない単語に、首を傾げるルクであった。
※以下、筆者の独り言です。今度から、新シリーズ入ります。 名付けるならば喪失者達編ですね。
えっ、そのままだろって?気にしない気にしない。
今回は短めになってしまい、申し訳ないです。繋ぎ回のため、バトルシーンも皆無になってしまいました。(ここで、字数を稼ぐしかねええええええええええええええ!!!!!!!!!)
フォロー、応援コメ、ハート等、もし良かったらよろしくお願いします。
ルクは、少し凄みのある笑顔で言う。完全に立場が逆転していた。
エイコスは倒れたままの姿勢で、腕を目に当てている。
そして、
「くく、クハァ、アハッハッハッハッハッハッハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!」
堰を切ったように笑いだした。目尻には、涙すら出ている。多分、悔しさからではないだろう。負けたはずなのに、まるで宝を得たかのような声音だった。
「「「「「「「「うおおおおおおおおおおおおぉぉおおおおおっっっっっっっっっっ!!!!!!!!!」」」」」」」」
エイコスの笑い声を合図に、場は歓声と熱狂にに包まれる。
「すっ、すげぇ!初心者殺しを倒しちまったぞ、新人がよ!」
「あの新人何者だよ。あいつを倒せるのは、この中にも数人しかいないっつうのに」
「これ、所謂千年に一人の逸材とかいうやつじゃね?」
どうやら、好評価を頂けているらしい。それほどまでに、このエイコスとやらは、強い相手なのだろうか。
(正直、弱い部類なんですけどね……それとも、ガランドさんや師匠と比べるのが間違ってるんでしょうか……?)
ルクが自問していると、ムクっと対戦相手は起き上がった。土埃塗れだが、その表情は晴れやかだった。
「いや、あの時は済まなかった」
ルクにとって、まず初めに出てきたのが謝罪の言葉なのは、驚きだった。彼のことをそこら辺のチンピラの上位互換ぐらいにしか、考えていなかったからだ。
「俺は、いつも新人が入ると覚悟と実力を試すために、こうやって勝負を嗾けているのさ。どちらが欠けていても、このギルドにいるだけ邪魔だということだ」
「そうだったんですね、こちらもついカッとなってしまい、申し訳ありませんでした」
いくら喧嘩を売ってきたのはあちらだとしても、こちらも買ったことは事実である。
さらに、すぐに煽りに乗って感情的になるなど、ハンター失格だ。気付かぬうちに、自分の常套手段を逆に仕掛けられていたようだ。
「いや、仲間を馬鹿にされて平然としてられる方が、俺はどうかと思うぞ?」
「そう言って貰えると助かります」
これにて、新人いびりもとい試験は終了した。
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ギルド内に設置された酒場にて。
「アズノベルト出身かー、わざわざこんなことを辺鄙なとこまでようこそ、ってとこだな!」
先程まで戦っていた二人は、酒を酌み交わしていた。ここ、ベセノムは15歳いじょうの飲酒・喫煙を認めている。自己責任であることには、変わりはないが。
エイコスは古くからスサム区で製造が続けられている地酒、ルクは世界中で嗜まれているエールを頂いていた。因みに、エイコスの奢りだ。
「いえいえ、僕の地元はもっと田舎の方にありますよ」
「ってことは、ルベマ村辺りか?」
「いや、ルベマ村からさらに山を二つ超えたところにある村ですよ」
本当はそんな村などない。もし万が一調べられても、地図に載らないような小さな村だといえば、意外とそれで通ってしまう。
「いやぁ、大変なところから来たんだなぁ。それにしても、どうやったらあんなに強くなれんだよ、修行でもしたのか?」
「そんなところです。師匠と慕う女性がいるのですよ…今は、故郷の方で元気に暮らしているでしょう」
これに嘘はない。確かに師匠はいる。ルクの育ての親でもあり、良き友のような存在でもあった。
(でも、あの人のことだから、放浪の旅にでも出てるのかもしれないな…)
ルクは自分の師匠が、何度も世界中を旅していることを知っていた。本人曰く、知識と見聞を高めるためだと言っていた。
「是非、俺も教えてもらいたいもんだ。あの動きは、そう簡単には身につけられないことぐらいは、俺にも分かった。お前さんがかなりの鍛錬を積んできたこともな!」
そう言って、快活に笑う。あの戦いで、随分と彼の中でのルクの株が上がったようだった。
彼からは、あの取っ付きにくい感じは消え失せ、親しみやすさすら感じる。やはりあの時は、半分演技だったのだろう。
「ありがとうこざいます。、、、っと、もうこんな時間ですか。あなたと話していると、時間を忘れてしまいますね」
「おっ、嬉しいこと言ってくれるねぇ!ところで、なんか用事でもあるのか?」
「ちょっと今からクリネさんと一緒に、依頼を受けてこようかと。クリネさんが上級入りしたことで、受けられる依頼が増えたのでね」
「おお、そうかそうか。精が出るな……あ、そういえば」
エイコスはやる気に満ちた若者を送り出そうとしたが、突然何かを思い出したようだった。
「どうしたんですか?」
「お前、知ってるか、最近噂になってる『アレ』」
「と言いますと?」
「ほら、最近よく聞く『アレ』だよ、ええとなんだったけな…………………あ!そうそう、喪失者達だ!」
全く聞き覚えのない単語に、首を傾げるルクであった。
※以下、筆者の独り言です。今度から、新シリーズ入ります。 名付けるならば喪失者達編ですね。
えっ、そのままだろって?気にしない気にしない。
今回は短めになってしまい、申し訳ないです。繋ぎ回のため、バトルシーンも皆無になってしまいました。(ここで、字数を稼ぐしかねええええええええええええええ!!!!!!!!!)
フォロー、応援コメ、ハート等、もし良かったらよろしくお願いします。
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