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第十二話 一連托生

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 今日に限って戦場に暗殺レダを連れてきておらず、僕の部隊が敵に囲まれた。
 敵の二勢力からの同時攻撃で、レダはそっちに係りっきりなのだ。

「どうしよう、オズくん?」
 と聞いてくる魔女オリヴィア。

 レダの代わりにと彼女を同行させたは良いが、改変派の僕にしろ彼女にしろ、弱い存在感ノブナーガで正直戦闘向きの能力者ではない。
 いや、僕の存在感ノブナーガを使えば何とかこの場を切り抜けられそうな気もするが、出来ればまだ温存したいし、しかしなあ。

「とりあえず、オリヴィアの存在感ノブナーガ使うよ?」

 と魔女オリヴィア。
 確か彼女の存在感ノブナーガは「一蓮托生」だっけ。
 能力使うの見るのは初めてだな、そう言えば。

 オリヴィア、とりあえず僕は何をすればいい?
「じゃあオズくんは、殺されない程度にその辺の強そうな敵を挑発してくれる?」

 何だその曖昧な指示は!?
 まあ、やるけどさ。
 丁度目の前に、腕っぷしは強そうだが頭が悪そうな、棍棒を持った雑兵が一人いるし。

「おいウスノロ、こっちを向け」
「おいテメエ、まさか俺に言ったのか?」
 ウスノロ呼ばわりされて怒り心頭💢と言った表情の雑兵。

「他に誰がいるんだ。一太刀で切り捨ててくれるからかかってこい」

 僕もまあ、弱いくせに良く言葉が出て来るなあと自分に感心しながら、雑兵の棍棒攻撃を受けるが。

 ……ぐわ痛ぇ!!
 死なないまでも、しばらく動けんなコレ。と思っていると。

 攻撃をした側の雑兵、それだけでなく敵味方問わずその場の全員が僕と同じ様に、まるで自分が攻撃を喰らったかのように苦しみ出した。

「オズくん、今の内に逃げるよ?」
 オリヴィアがそう言い、ほぼ動けない僕に肩を貸して、足早にその場を脱出した。



 しばらく移動して、僕ら二人は安全と思われる場所、大木に空いた洞の中に逃げ延び、座り込む。

「私の『一蓮托生』は、同じ五感を周囲に共有化するの。
 例えば受けた痛みを、その場にいる全員に肩代わりしたりも出来るんだ」

 いや、そういう事は先に言って欲しかったな。

「もし言ったら、オズくん引き受けてくれた?」

 んー、確かにあんな痛い思いするなら断ったかも。
 だいたい、能力使った本人オリヴィアが無傷ってのが不公平だ……と思ってると。

 不意に彼女が吐血した。
 えっ?ええっ??

「言ったでしょオズくん、五感の共有はにって。
 私自身には少し遅れて来るだけで」

「しばらく動けそうもないし、あとはよろしく……」
 とオリヴィアは強引に僕の太ももを枕にして、そのまま眠ってしまった。

 まあ今回はお世話になったし、これくらいは良いか、と思った。
 気づけばそのまま僕も眠ってしまい、後で彼女の姉、賢者エッダに見つかって長々と説教される事になったけど。

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