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第11話 万事不休のミッチーデ

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 吾輩の名はアギチ・ミッチーデ。
 ミッチーデ家は名門ノブナガ家の遠縁にあたる分家筋。
 ここ数代は主流ノブナガ家に小間使いの様に雑に扱われていた。

 しかしそんなお先真っ暗なミッチーデ家に転機が訪れる。
 どうもノブナガ家に双子が生まれたと言うのだ。我々の国では双子は忌み嫌うべき存在で、即座に片方を排除すべきなのだが、ノブナガ家の妻がその判断を渋っている模様。

 ならばと吾輩は言葉巧みに彼女に近づき、説得の上双子の姉、エッダの方を引き取る事に成功した。
 エッダは天才少女で、彼女の提唱する「科学」はこの時代遅れのまま時が止まった世界に革命を起こす思想であった。

 そして数年後、すっかり大人になって十分な知識を身につけた彼女を吾輩は世に送り出す。
 そしてノブナガ家にぶつけ、その権力を奪い取るつもりで。

 それは途中まで成功し、結果的に双子の妹と両親を処刑しノブナガ家を乗っ取る事に成功した……筈だったのに。
 気がつけば吾輩は、大事に育てた双子の姉の方にナイフで刺されていた。



「やあ、ボクはアマテラス。
 君のいた世界とは違う、正世界レギュラーワールドの神様だよ」

 吾輩の目の前で自己紹介をするのは、どうみても神様のイメージとは程遠い幼女。
 そして気になった単語、レギュラーワールド。
 正規 レギュラーがあるなら、異端イレギュラーもあるのか?

「ボクは誤世界エラーワールドって呼んでるけど、故あってその魂をこちらで引き取った」

 ほほう、引き取るだけの価値が吾輩にあると?それはお目が高い。

「当然だよアギチ・ミッチーデ。
 君は面白い」

 神様は吾輩の名前を呼んで、何やら文字の書かれた、半透明の板状の物を空中に表示させる。

「君の生き汚なさというか、性根の悪さは世界の良いスパイスになるだろう」

 む、あまり褒められた気がしないのだが気のせいか?

「うん気のせい気のせい。

 さて、そんな君には存在感ミッチーデ、「万事不休」を授けよう」

 ミッチーデ?万事不休?

「万事休すという言葉があるね?
 絶対絶命のピンチに陥って結局助からない状況だ」

 まさに死ぬ前の吾輩がそうであったな。

「君に与えた能力を使うことで、その状況を覆して生き延びる事が出来る。
 詳しくはそんな時が来たら、使って試してみると良い」
 
 それはありがたい様な、ありがたくない様な。まあ危機を回避する力ならあって困らないだろう。
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