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恋愛編

-2℉ (魔除けと距離感)

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「おはようございます、気持ち悪いレンくん」

 大学に行くと、朝からそう声をかけて来る六華宮ろっかのみや 霙子えいこ内親王殿下。
 なんだその呼称?

「あれ、聞こえませんでしたか?
 凄く気持ち悪いレンくん」
「だから、誰が気持ち悪いレンくんだよ!」
 流石に我慢出来ずに、僕は声を張り上げるが、

「ああ済みません、説明不足でした」
 気にせず涼しい顔で六華宮が返答する。

「私にとって、理解できない事は気持ち悪い事なのです」

 今の説明でなんとなく分かったけど、言い方は選んでくれるかな?
 無個性で平凡て言われるのは日常茶飯事だが、流石に面と向かってキモいと言われたことはないから。

 ……キモくないよな?

 本当はキモいけど、気を遣って誰も言わないとかないよな?

「何をさっきからブツブツと、気持ち悪い」
「えーと今までの話の流れからすると、そのは僕の独り言が理解できなかったって意味?」
「いえ、今のは普通にキモかったです」

 そっちは言葉通りかよ!

「と言うか六華宮さん、僕の何が気持ち悪……理解出来ないって?」
「色々ありますが、魔除けが効かないのが大きいです」
「魔除け?」

 そう言えば、前もそんな事を言っていて気になってたんだ。

「まともな神経の持ち主であれば、私の様に毒を吐く人間とは仲良くなりたいと思いませんし、私も余計な友人を求めてないので、それで良いと思っていました」
「つまりわざと嫌われる言動をして友達を作らなかったって事?」

 ああそれで魔除け、か。

 僕の言葉に六華宮さんが無言でうなづいたので、そういう事なのだと確信する。

「まあわざと嫌われる、は少し違いますけど。
 私、無意識に悪口を吐く体質らしく」
「めちゃくちゃ迷惑かつ誤解されやすい体質だなそれ!」

 逆にどういう日常を送ったらそんな体質になれるか興味あるぞ!

「なので改めてお聞きします、田中レンくん。
 私と、友達になりたいと思いますか?」
「逆に聞くけど六華宮さん、僕みたいな平凡な奴が友人でいいの?」
「……エイコです」

 はい?

「本当に友人になるなら下の名前で呼び合うものでしょう?」
「いやいやいや!」

 ああ、何となくわかってきたぞ彼女の性格が。
 多分この子、友達付き合いが皆無で距離感がバグってるんだ。
 だから簡単に頬にキスしたり、下の名前で呼び合うとか提案してくる。
 遠慮ない物言いも、その辺りが関係してるのかも。

「君の知識だとどうだか知らないけど、
 一般的には同性と異性では友達の距離感が違うんだ」
「……そうなのですか?」

 と本気で聞いてくるので、僕の仮説は半ば証明された格好だ。

「君の要求してくる友達関係は女同士だとアリだけど、男女だと恋人の距離感なんだよ」
「こっ、恋人っ!?」

 あ、普段冷静な彼女が珍しく動揺してる。

「それ、は、ちょっと考え、させっ、てくれ、ますか?」

 何か変な息継ぎで彼女がそう言う。

「うんゆっくり考えていいと思う。
 でもね?」
「……何でしょう?」
が嫌じゃなければ、僕らはもう既に友達だから」
「……レンくん」
 エイコさんはそう言うと、

「凄く、気持ち悪いです」
 空気を読まない台無しな発言をしたのだった。
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