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本編
5月25日 有無の日とミドリパイナップルマティーニ
しおりを挟む「62代の村上天皇というのがいましてね」
といきなりアレナコさんが唐突に話題を振ってくるのは、いつのもの事だが。
「今日はそれにちなんだ有無の日です」
と言い放ち会話を終えようとした。
「いやいやアレナコさんや、流石に説明不足にも程が有るだろう」
「だってデカ山さんが、私が色々説明するの嫌がるから」
とアレナコさんは頬を膨らませてそう言う。
確かにいつもそんな感じで俺が止めに入ってるのは間違ってはいないが、それにしたって極端に走り過ぎだ。
「流石にその説明だと、何も分からんのだが?」
「……仕方がないですねえ」
とアレナコさんはニヤリと笑う。
「村上天皇は西暦で言うと946年から967年まで在位した天皇です。
歴史で言うと鎌倉時代の少し前ですね」
ふむふむ。
「同じ時代に生きた人間としては関東の平将門に瀬戸内海の藤原純友。
彼らが起こした承平天慶の乱で、国の財政がひっ迫し、天皇も倹約するようになったと言います。
あと鶯宿梅の逸話が有名です」
オウシュクバイ?
「元々村上天皇の庭にあった梅が枯れてしまい、代わりを探していたら都の外に立派な梅があり、それを譲って貰った所、木には短冊がぶら下がっていたのですが」
ですが?
「七夕じゃないが願い事でも書かれてたのかい?」
「当たらずとも遠からずで、そこには和歌が書かれており、
『梅が移動した事で毎年ここに来ていた鶯はどうなるのだろう』的な内容で」
とアレナコさんは言い、
「しかも和歌を書いたのが、あの有名な歌人、紀貫之の娘だったというオチです」
ほう、紀貫之は知ってるぞ。
柿本人麻呂や小野小町と並び称される三十六歌人の一人だ。
と言うか、有無の日の話がどこ行った?
「ちなみに今日5月25日は、その村上天皇の命日で、この天皇は余程の事が無い限り仕事しなかったという言い伝えにより設定されました」
なんだそりゃ、仕事しない天皇の記念日?
「政治の仕事はあまりしなかったですが、清涼記という儀式書を編纂したり、後撰和歌集の編集を命令したりしてます」
いや天皇の仕事しろよ!
よく分からない記念日だな。
「さて、そんな今日の誕生酒は
ミドリパイナップル マティーニ
酒言葉は
メルヘンチックな世界に憧れる人」
「また随分トロピカルと言うか、楽園チックなカクテルと酒言葉だな、おい」
有る意味、仕事しない天皇の記念日といい勝負だわ。
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