103 / 151
103
しおりを挟む
いろいろあった仮面舞踏会が無事に終わり、テセオニア王立学院は夏休みに入った。
宿題も出るけど、私たちは最終学年なので、あとは卒業論文ぐらいだ。
秋から春にかけては学校に通うのも自由で、大学みたいにカリキュラムを選んで受けるようになっている。
私は以前ユリウスと話していた、この国の医療体制の強化について調べて、論文にまとめようかなと思っていた。
前にも言ったけど、テセオニアは貴族の力が強いから、領国ごとに独立している状態に近い。
だから、対立やいざこざがあったり、場合によっては血の流れる争いになることもある。
そんなときに、お抱えの医師をどれだけ持っているか持っていないかで、軍人や市民の方々の命運が決まってしまうのは、やっぱりよくないと思う。
一番いいのは、領国同士いがみあわないことだけど――私一人の力では難しい。
何かできることはないかな……?
「失礼します」
書き物机で執筆しているところに、ユリウスが何かを持ってきた。
見ると、グラスにミントの葉を浮かべたハーブティーだ。
「執筆お疲れさまです。目の疲れに効くので、よろしければどうぞ」
「ありがとう」
一口飲むと、すーっと爽やかな清涼感に、ちゃんとシロップの甘味もあっておいしかった。
「熱心に取り組まれていますね」
感心したようにユリウスは言った。
「うん。イクスやマリーと話して思ったの。私も自分の道を決めて打ち込みたいなって」
「公爵様も奥方様も、応援しておられましたよ。知恵熱を出さないようにとのことです」
「……はあ。いつまでたっても子ども扱いなんだから」
まあ、二人とも無事に南部から戻ってきたんだから、それでいっか。
「卒業後の進路はどうなさるのですか?」
「それなんだよね~。できれば大学とか進みたいんだけど、ちょっと方向性が違うっていうか」
「大学ですか」
ユリウスは目を丸くした。
テセオニア王国でいう大学は、私の前世の大学とは意味合いが違う。
大学に行くのはほとんど男性で、彼らは政治や経済や法律について幅広く学び、王宮や各領国の政庁(政治をするところ)に入って、政務官になるのだ。
つまり、『大学=政務官を目指す人のための学校』なのだ。
「ローラ様が政務官にご興味があるとは知りませんでした」
「政務官に興味はないんだけど……まだやりたいことが固まってないって感じかな」
グラスの中でくるくる回るミントの葉を見つめて、私は言った。
宿題も出るけど、私たちは最終学年なので、あとは卒業論文ぐらいだ。
秋から春にかけては学校に通うのも自由で、大学みたいにカリキュラムを選んで受けるようになっている。
私は以前ユリウスと話していた、この国の医療体制の強化について調べて、論文にまとめようかなと思っていた。
前にも言ったけど、テセオニアは貴族の力が強いから、領国ごとに独立している状態に近い。
だから、対立やいざこざがあったり、場合によっては血の流れる争いになることもある。
そんなときに、お抱えの医師をどれだけ持っているか持っていないかで、軍人や市民の方々の命運が決まってしまうのは、やっぱりよくないと思う。
一番いいのは、領国同士いがみあわないことだけど――私一人の力では難しい。
何かできることはないかな……?
「失礼します」
書き物机で執筆しているところに、ユリウスが何かを持ってきた。
見ると、グラスにミントの葉を浮かべたハーブティーだ。
「執筆お疲れさまです。目の疲れに効くので、よろしければどうぞ」
「ありがとう」
一口飲むと、すーっと爽やかな清涼感に、ちゃんとシロップの甘味もあっておいしかった。
「熱心に取り組まれていますね」
感心したようにユリウスは言った。
「うん。イクスやマリーと話して思ったの。私も自分の道を決めて打ち込みたいなって」
「公爵様も奥方様も、応援しておられましたよ。知恵熱を出さないようにとのことです」
「……はあ。いつまでたっても子ども扱いなんだから」
まあ、二人とも無事に南部から戻ってきたんだから、それでいっか。
「卒業後の進路はどうなさるのですか?」
「それなんだよね~。できれば大学とか進みたいんだけど、ちょっと方向性が違うっていうか」
「大学ですか」
ユリウスは目を丸くした。
テセオニア王国でいう大学は、私の前世の大学とは意味合いが違う。
大学に行くのはほとんど男性で、彼らは政治や経済や法律について幅広く学び、王宮や各領国の政庁(政治をするところ)に入って、政務官になるのだ。
つまり、『大学=政務官を目指す人のための学校』なのだ。
「ローラ様が政務官にご興味があるとは知りませんでした」
「政務官に興味はないんだけど……まだやりたいことが固まってないって感じかな」
グラスの中でくるくる回るミントの葉を見つめて、私は言った。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
309
1 / 3
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる