護国の鳥

凪子

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春の章

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「そんじゃ、ま、とりあえず何で女の子が男装してここにいるのか聞こうか。うちのご主人様は、それが知りたくてしょうがないみたいだからさ」

レッドが尋ねると、彼女は自分の名をユージェニーと名乗った。

「兄であるフランツ・クレプトは一年前、あなたたちと同じように士官候補生としてこの学校に入校しました。
でも、四ヶ月後に死んだという知らせが来て……」

『訓練中の事故による死亡』

紙切れ一枚で、兄の死は片づけられた。

ごく簡単に。まるで何事もなかったかのように。

「海に落ちて流されたとかで、体も返してもらえなかった。残された私たちは、空の棺で葬儀をしたんです」

「……お気の毒だったね」

慰めたユリシスを、ユージェニーはきっと睨みつけた。

「嘘に決まってる」

「え?」

「兄さんが訓練で死ぬはずがない。私には分かる。兄さんは殺されたのよ」

「だから男としてサイクロイドに忍び込んだ。兄の死の真相を突き止めるために。そういうことか」

ルートが要約し、ユージェニーは肝の据わった目つきで頷いた。

「通報したければしてください。覚悟はできています」

ユリシスは首を振った。

「言っただろう。僕たちは、君のことを誰にも告げ口するつもりはないよ。約束する」

「そのかわり」

口を入れたのはレッドだった。

「俺らに飯を提供してくんねえかな。今、食堂使えなくて困ってるんだよ。掃除でも力仕事でも芋の皮むきでも何でもするからさ、あのおっかないおっさんに俺らを雇うよう頼んでくれよ。な?お願い」

両手を合わせて拝み込まれ、ユージェニーは視線をさまよわせた。

「……断ったらどうなるの」

「お前が一番よく分かってるはずだ」

ルートはごく静かに答えた。

ユージェニーはうつむいていたが、やがて意を決したようにこうべを上げた。

「分かったわ。私からゴモラさんにお願いしてみる」

ユリシスはほっとして、暖かい両手で彼女の手を握りしめた。

「よかった。ありがとう、ユージェニー」

ユージェニーは頬を赤らめて目を伏せる。
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