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秋の章
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「そういうことじゃねえんだよ」
「じゃ、どういうこと?」
フィンがたたみかけてくるのに、レッドはやや閉口気味に言った。
「俺とかチビは天才肌だからな。教えてもらわなくても最初からできるもんはできるし、あんまり実科で苦労した覚えないだろ。できる分野とできない分野の差は激しいけど」
「そうかなあ?」
とフィンはきょとんとしている。
「ユリシスは飲み込みも早いし覚えもいい。その上、努力家だ。座学でも実科でも、一通りそつなくこなしちまう。でも、だからこそ、そこで止まっちまうんだよ」
英才教育の弊害だな、とレッドは鋭い目で言った。
「器用貧乏っていうのかな。何でも問題なく、ある程度の水準までできるから、それ以上の成長が見込めない。壁にぶち当たらないから、伸びしろが少ない。何でもできるけど、これといって突き抜けた強みは得られない」
フィンは鼻に皺を寄せている。
「うーん。それって悪いこと?」
「別に悪いことじゃない。ただ、あいつは軍人に向いてないと思う。それだけだよ」
レッドの語り口は淡々としていた。
「軍はどう考えたって、頑張れば報われる世界じゃない。むしろ頑張れば頑張るほど、あいつの場合、自分を追い詰めることになりかねない。俺やお前みたいに、適当にサボったりするぐらいがちょうどいいんだ」
「じゃ、ルートは?」
「お姫様は大丈夫だろ」
レッドはあっさりと請け合った。
「あれだけ鋼鉄の精神と丈夫な心臓を持ってたら、まず間違いなく、人を殺すのに躊躇しないしな」
「そっか」
フィンはようやく腑に落ちた顔で、
「レッドはこう思ってるんだね。ユリシスに人は殺せないって」
呆気にとられ、レッドは唇を半開きにしたままフィンを見つめる。
――そうか。そういうことか。
ともあれ、結局はそれが決定打なのだ。
確かに、言われてみれば、これ以上当てはまる答えもない。
――間抜けだな、俺も。チビに言われて気づくなんて。
レッドはようやく、目の前にいる少年が少しだけつかめたような気がした。
「じゃ、どういうこと?」
フィンがたたみかけてくるのに、レッドはやや閉口気味に言った。
「俺とかチビは天才肌だからな。教えてもらわなくても最初からできるもんはできるし、あんまり実科で苦労した覚えないだろ。できる分野とできない分野の差は激しいけど」
「そうかなあ?」
とフィンはきょとんとしている。
「ユリシスは飲み込みも早いし覚えもいい。その上、努力家だ。座学でも実科でも、一通りそつなくこなしちまう。でも、だからこそ、そこで止まっちまうんだよ」
英才教育の弊害だな、とレッドは鋭い目で言った。
「器用貧乏っていうのかな。何でも問題なく、ある程度の水準までできるから、それ以上の成長が見込めない。壁にぶち当たらないから、伸びしろが少ない。何でもできるけど、これといって突き抜けた強みは得られない」
フィンは鼻に皺を寄せている。
「うーん。それって悪いこと?」
「別に悪いことじゃない。ただ、あいつは軍人に向いてないと思う。それだけだよ」
レッドの語り口は淡々としていた。
「軍はどう考えたって、頑張れば報われる世界じゃない。むしろ頑張れば頑張るほど、あいつの場合、自分を追い詰めることになりかねない。俺やお前みたいに、適当にサボったりするぐらいがちょうどいいんだ」
「じゃ、ルートは?」
「お姫様は大丈夫だろ」
レッドはあっさりと請け合った。
「あれだけ鋼鉄の精神と丈夫な心臓を持ってたら、まず間違いなく、人を殺すのに躊躇しないしな」
「そっか」
フィンはようやく腑に落ちた顔で、
「レッドはこう思ってるんだね。ユリシスに人は殺せないって」
呆気にとられ、レッドは唇を半開きにしたままフィンを見つめる。
――そうか。そういうことか。
ともあれ、結局はそれが決定打なのだ。
確かに、言われてみれば、これ以上当てはまる答えもない。
――間抜けだな、俺も。チビに言われて気づくなんて。
レッドはようやく、目の前にいる少年が少しだけつかめたような気がした。
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