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秋の章
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その日は朝から鉛色の雲が重く垂れこめ、老いた太陽の光が薄く白く途切れかかった、陰鬱な日だった。
起き抜けの寝床で身を震わせたユリシスは、冴えた大気を自覚して思わず腕をさする。
吐く息が白い塊となるのを見て、ますます実感を強める。
――とうとう冬がやって来たんだな。
秋の日は短く、名残を惜しむ気持ちなど待ってくれずに過ぎてゆく。
これからサイクロイドに、最後の季節が訪れるのだ。
着慣れた制服に袖を通し、身なりを整える。
既に横で待機しているレッドには、できる限り注意を払わないよう努めていた。
部屋を替えてくれと申し出たのだが、理由がないために却下されていた。
ほかのメンバーは退学者が出るたびに一人部屋になり、今では二人で部屋を使っているのはルートたちとユリシスたちの二組だけのようだった。
食堂に赴くと、ギルベルトが真っ先に席を立って手を振る。
「おはよう、ユリシス」
「おはよう」
笑顔で応じて席につくと、翼の会の面々もそれぞれに挨拶し会釈する。
そのとき、ふとユリシスは違和感に気づいて目を細めた。
――教官たちがいない。
宿舎は別だが、食堂は候補生だけでなく教官や他の職員も交替で使っている。
多少時間がずれることもあるが、この時間帯に一人の姿もないというのは今までにないことだった。
きょろきょろと目を動かしているユリシスの耳元で、
「チビとお姫様がいないな」
ささやいたレッドのほうを、思わず振り向く。
光の加減か、彼の顔色はあまり良くないように見えた。
「ちょっと捜してくる。お前はここにいろ」
「僕に指図するな」
ユリシスははねのけて席を立った。
「班員の行動を把握するのは、班長である僕の義務だ」
レッドが処置なしと肩をすくめる。
同時に、始業開始前の鐘が鳴り響いた。
途端に飯をかき込んでいた候補生たちが、どやどやと食堂の出入り口に殺到する。
――今から捜したんじゃ、点呼の時間に間に合わないな。
ユリシスは諦め、減点覚悟で教室に向かった。
起き抜けの寝床で身を震わせたユリシスは、冴えた大気を自覚して思わず腕をさする。
吐く息が白い塊となるのを見て、ますます実感を強める。
――とうとう冬がやって来たんだな。
秋の日は短く、名残を惜しむ気持ちなど待ってくれずに過ぎてゆく。
これからサイクロイドに、最後の季節が訪れるのだ。
着慣れた制服に袖を通し、身なりを整える。
既に横で待機しているレッドには、できる限り注意を払わないよう努めていた。
部屋を替えてくれと申し出たのだが、理由がないために却下されていた。
ほかのメンバーは退学者が出るたびに一人部屋になり、今では二人で部屋を使っているのはルートたちとユリシスたちの二組だけのようだった。
食堂に赴くと、ギルベルトが真っ先に席を立って手を振る。
「おはよう、ユリシス」
「おはよう」
笑顔で応じて席につくと、翼の会の面々もそれぞれに挨拶し会釈する。
そのとき、ふとユリシスは違和感に気づいて目を細めた。
――教官たちがいない。
宿舎は別だが、食堂は候補生だけでなく教官や他の職員も交替で使っている。
多少時間がずれることもあるが、この時間帯に一人の姿もないというのは今までにないことだった。
きょろきょろと目を動かしているユリシスの耳元で、
「チビとお姫様がいないな」
ささやいたレッドのほうを、思わず振り向く。
光の加減か、彼の顔色はあまり良くないように見えた。
「ちょっと捜してくる。お前はここにいろ」
「僕に指図するな」
ユリシスははねのけて席を立った。
「班員の行動を把握するのは、班長である僕の義務だ」
レッドが処置なしと肩をすくめる。
同時に、始業開始前の鐘が鳴り響いた。
途端に飯をかき込んでいた候補生たちが、どやどやと食堂の出入り口に殺到する。
――今から捜したんじゃ、点呼の時間に間に合わないな。
ユリシスは諦め、減点覚悟で教室に向かった。
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