護国の鳥

凪子

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冬の章

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フィンの目は据わっており、踊るようにして回転し、飛び、殺しながら走り回っている。

その様子は、真夜中に早口で喋りつづけたときの、あの不気味な感触によく似ていた。

「あんた、あいつをどうするつもりだ」

尋ねてみたが、ルベリエの答えはない。

ルートは立ち上がり、木陰から歩き出した。

「おい、待て」

制止しようとするルベリエを振り返り、静かな目で告げる。

「あんたはどうあっても話すつもりはないんだろう。だったら、直接あいつに聞く」

「ルート?」

黒装束連中を肉塊に変えたフィンが、返り血に染まった顔をこちらに向けた。

据わっていた目が、普段どおりの無邪気なものに戻ってゆく。

「やっぱりルートだ。ルート!」

笑いながら走ってきて、何の躊躇いもなく腕に飛び込んでいく。

その下に屍さえ転がっていなければ、のどかな風景だと言えなくもなかった。

ルベリエは舌打ちし、仕方なく後に続く。

不気味なほど時計台の中は静まり返っている。

「よう、久しぶりだな」

と言って別方向から現れたのは、レッドとユリシスの二人だった。

「生きてたのか」

目を瞠って素朴な感想を口にすると、レッドは苦笑した。

「死んでたほうがよかったか?お姫様」

「別に」

「相変わらずつれないねえ。この状況で」

レッドはぎこちなく足を引きずって近づき、ルートの顔を覗き込む。

「俺はルート姫が生きてて嬉しいよ」

「ルベリエ教官」

ユリシスは信頼できる大人を発見した安心感を目にみなぎらせ、駆け寄ってきて敬礼した。

「救援を呼んでください。インバースの連中が、ここを占拠して」

ルベリエが答える前に、よく通る声が響き渡った。

「どうやら、これで役者は全て揃ったようだね」

時計塔の中から現れたのは、エトワル・ラグランジュその人と、先ほどの殺戮に巻き込まれなかった黒装束が五十人ほどだった。

「ラグランジュ先生」

ユリシスはうろたえた様子で、

「これは一体、どういう……」

「どうもこうもねえよ」

レッドが強い眼差しで言った。

「下がってろ、ユリシス」

「勘がよすぎるのも考えものだね。レッド」

誘うように手を伸ばし、ラグランジュは言った。

「ここにいる君たちを殺す機会は、それこそ何百回もあった。君たちは僕に生かされて、今ここに立っているんだ」

傍に控えている黒装束の中には、モレルの姿もある。

歯を剥き出して何か言おうとしたレッドを手でかばい、ルベリエは四人の前に出た。

「お前ら、そいつを連れて島の外に出ろ」

顎の先でフィンを示し、三人に言い含める。

「今なら徒歩で渡れる。責任は俺が取る」

頷くルートと、厳しい表情のレッド、ユリシスが戸惑ったように、「しかし」と口を入れた。
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