護国の鳥

凪子

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冬の章

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「他の奴を騙すなら、その程度の三文芝居で十分だろうが、あいにく俺はテロリスト集団の主張に傾ける耳は持っていない」

「虐げられたまま死んでいけと?」

「そのとおりだ」

微塵もぶれない様子を見て、ラグランジュは吹き出した。

「やっぱり君は君だね、サーベラス。でも、それが弱味でもある」

どうして助けが来ないと思う?と手を広げて言う。

「君のやり方は敵を作りすぎるんだ。上層部には君を買っている面々と同じくらい、君に死んでほしいと思っている連中もいる。絶大な人望と実力を備え、内外に及ぼす影響力は非常に大きい。その上、野心がないから買収にも応じない。上にとって、これほど厄介な人間もいないだろう。君、相当煙たがられてるよ。
だからここに追い払って、ついでに消しておこうと考えたのさ。士官候補生を守って謎の襲撃者と戦い、人知れず死んだ、勇敢な英雄として」

「……外道が」

噛みしめた歯の奥から、低い声音が押し出される。

「君と遊ぶのは楽しかったよ。でも、それも今日で終わりだ。ここで君は――」

言いかけたラグランジュの前から、ルベリエが消えた。

細大漏らさず見つめていたルートの目でも、彼の姿を捉えることはできなかった。

消えたと思ったら、一瞬後にその場に現れたとしか言いようのない速さだった。

剣を打ち飛ばされ、決着は一撃でついた。

――強い……。

息を呑むルートの前で、ルベリエが怜悧な眼差しで剣を振り下ろす。

「――終わりだ」

その瞬間、一発の銃声が轟いた。

最初ルートは、撃ったのはラグランジュだと思った。

小細工抜きの真剣勝負と言いながら、ラグランジュは必ず策を巡らしている。

ルベリエもそれを承知の上で、隙を突かれないよう戦っていたはずだ。

しかし、その銃撃を放ったのはラグランジュではなく、彼の背後を固めた取り巻きでもなかった。

「ようやくお目覚めだね。さあ、こっちへおいで。インフィニティ」

ラグランジュは優雅な仕草で手を差し伸べた。

フィンが従順な態度で進み出るのを見て、反射的にユリシスがその手を引く。

剣を抜き、フィンはユリシスに斬りつけた。

肩口から首にかけて血が吹き出し、ユリシスがどうと雪の上へ倒れ込む。

「ユリシス!」

レッドが足を引きずって駆け寄るのを見て、フィンが躊躇いなく抜いた銃を撃つ。

「うっ」

うめき声を上げて、レッドが折り重なるようにしてユリシスの傍に倒れた。

ルベリエは銃弾に腹を貫かれ、流れ出た血が湯気を上げて真紅に雪を染めていた。
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