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冬の章
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「素晴らしい」
感激に打ち震えているのはモレルだった。
「ようやく手に入った最強の兵器だ。これさえあれば、怖いものは何もない」
「そうだね」
とラグランジュは笑う。
「じゃ、まずはここにいる、くたばり損ないを始末してもらおうか」
フィンは頷くと、迷いなくモレルを一撃で斬り殺した。返り血で顔が真っ赤に染まる。
「ぐああああああっ!!」
何が起こったか分からず混乱する黒装束の連中の間を駆け抜け、フィンは全員の息の根を止めていく。
断末魔が上がるのを、ラグランジュは楽しそうに聞いていた。
ルベリエは虫の息、レッドとユリシスは瀕死の重体、フィンは敵の手中に落ちた。
この状況下で、ルートは何とか冷静であろうと必死だった。
予想はしていた。
恐らくラグランジュは、フィンの毒に対する耐性を試すだけではなく、医務室で眠っている間に強力な催眠をかけたのだ。
ルベリエとの勝負はただ、その効果が現れるための時間稼ぎにすぎない。
「よくやった。お利口さんだね」
よしよしと頭を撫でられ、フィンは虚ろな目で大人しくしている。
「どうして味方を殺させた」
ルートは剣を抜いて構えた。
「味方?」
ラグランジュはきょとんとしていたが、「ああ」と腑に落ちたのか、横たわる黒装束の連中を見下ろした。
「インフィニティは重要機密だ。気の毒だが、外部に秘密を漏らすわけにはいかない」
とフィンの頭を抱きかかえて自分の手元に引き寄せる。
「そいつは敵味方の区別がついてないぞ」
ルートは目を鋭くして言った。
「何かの拍子で、あんたのことだって簡単に殺しかねない」
「それは僕と君で、これからおいおい教えていけばいい」
ラグランジュはにっこり微笑んだ。
「フィンにも君のことは攻撃させないよ。大切な旗頭だからね」
「……何だと?」
ルートは眉を寄せた。
「ねえ、ルート。君の父親が誰なのか、教えてあげようか」
ラグランジュは胸元のFの文字、血に汚れたその字をルートに見せつけた。
「君の父上の名はルートヴィヒ・フォン・アロンダイト。革命義勇軍インバースの生みの親であり、十年前の『名もなき革命』を起こした首謀者だ」
呑んだ息が、喉の奥に突き刺さる。一瞬で目の前が真っ白になった。
「ね、分かっただろう。争う理由なんか一つもない。僕たちは仲間なんだよ」
ルートは顔色を失った。
「……知ってたのか」
押し殺された声が言った。
「あんたもルベリエも、知ってて俺をここに入れたのか」
「決定権は僕らにはないけれどね」
ラグランジュはルートの髪に積もった雪を払ってやる。
信じられなかった。
彼の言葉が真実であるという証拠など一つもない。
けれど同時に、深く納得している自分もいた。
感激に打ち震えているのはモレルだった。
「ようやく手に入った最強の兵器だ。これさえあれば、怖いものは何もない」
「そうだね」
とラグランジュは笑う。
「じゃ、まずはここにいる、くたばり損ないを始末してもらおうか」
フィンは頷くと、迷いなくモレルを一撃で斬り殺した。返り血で顔が真っ赤に染まる。
「ぐああああああっ!!」
何が起こったか分からず混乱する黒装束の連中の間を駆け抜け、フィンは全員の息の根を止めていく。
断末魔が上がるのを、ラグランジュは楽しそうに聞いていた。
ルベリエは虫の息、レッドとユリシスは瀕死の重体、フィンは敵の手中に落ちた。
この状況下で、ルートは何とか冷静であろうと必死だった。
予想はしていた。
恐らくラグランジュは、フィンの毒に対する耐性を試すだけではなく、医務室で眠っている間に強力な催眠をかけたのだ。
ルベリエとの勝負はただ、その効果が現れるための時間稼ぎにすぎない。
「よくやった。お利口さんだね」
よしよしと頭を撫でられ、フィンは虚ろな目で大人しくしている。
「どうして味方を殺させた」
ルートは剣を抜いて構えた。
「味方?」
ラグランジュはきょとんとしていたが、「ああ」と腑に落ちたのか、横たわる黒装束の連中を見下ろした。
「インフィニティは重要機密だ。気の毒だが、外部に秘密を漏らすわけにはいかない」
とフィンの頭を抱きかかえて自分の手元に引き寄せる。
「そいつは敵味方の区別がついてないぞ」
ルートは目を鋭くして言った。
「何かの拍子で、あんたのことだって簡単に殺しかねない」
「それは僕と君で、これからおいおい教えていけばいい」
ラグランジュはにっこり微笑んだ。
「フィンにも君のことは攻撃させないよ。大切な旗頭だからね」
「……何だと?」
ルートは眉を寄せた。
「ねえ、ルート。君の父親が誰なのか、教えてあげようか」
ラグランジュは胸元のFの文字、血に汚れたその字をルートに見せつけた。
「君の父上の名はルートヴィヒ・フォン・アロンダイト。革命義勇軍インバースの生みの親であり、十年前の『名もなき革命』を起こした首謀者だ」
呑んだ息が、喉の奥に突き刺さる。一瞬で目の前が真っ白になった。
「ね、分かっただろう。争う理由なんか一つもない。僕たちは仲間なんだよ」
ルートは顔色を失った。
「……知ってたのか」
押し殺された声が言った。
「あんたもルベリエも、知ってて俺をここに入れたのか」
「決定権は僕らにはないけれどね」
ラグランジュはルートの髪に積もった雪を払ってやる。
信じられなかった。
彼の言葉が真実であるという証拠など一つもない。
けれど同時に、深く納得している自分もいた。
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