護国の鳥

凪子

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冬の章

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斧を振り下ろしたときの、義父の表情がまざまざと蘇る。

この世のありとあらゆる侮蔑と憎しみを注ぎこんだ、真っ黒な瞳。

反乱を煽動し、国家を転覆せしめんと企てた、史上最悪の犯罪者の血を継ぐ者。

だからこそ、自分はあれほど憎まれ、嫌われ、存在を否定され続けてきたのだ。

祝福など少しも与えられず、呪いばかりをこの手に受け取ってきた、ようやく今その理由が分かった。

「血は争えないね。一目見ただけですぐに分かった。君は恐ろしいほど父上に似ているよ。まるで生き写しだ」

愛おしく目を細め、ラグランジュは悼むように言った。

「十年前、僕は君の父上と出会った。そして軍籍にいながら秘密裡にインバースの支援を行い、全てが終わるとなったときに父上から託されたんだ。インバースを引き継ぎ、いつか君を迎えに行ってほしいと」

ルートは戦慄していた。

「その約束を果たすためだけに、僕は十年間の全てを注ぎ込んだ。インバースは君のお父さんが君のために用意した、ただ一つの居場所なんだよ」

――居場所……。

立ちすくむ足の下で、硬く白い雪が鳴いている。

帰る場所なんてどこにもない。そう思っていた。

義姉を喪い、義父を殺し、飛び出してきた寒村は故郷とはなり得なかった。

サイクロイドを卒業できなければ、再び路頭に迷うことになる。

後ろ盾も支えも、身寄りもよすがも何もない。

その自分に、亡き父が与えてくれた唯一のもの。

恋い焦がれ、喉から手が出るほど欲しながらも、見向きもせずに必死で封じてきたもの。

「君の父親は軍に殺され、存在すら抹消された。僕はそれを知っている。およそ非道なんて言葉じゃ言い表せないほどの大虐殺だった」

燃え尽きた炎の名残が、黒い煙となってあちこちに立ち昇っている。

「今まではナユタの村で身を潜めて生きてきたから、危険が及ぶことはなかった。けど、これからは違う。軍は君の素性をよく知っている。インバースの首領の息子を、ほかの誰よりも警戒している。このまま入軍すれば、何かしらの理由をつけて殺されるよ。危険の芽は早く摘むに越したことはないからね」

ラグランジュの口調は確信的だった。

「インバースに入れば、君の生涯にわたる生活全般と身の安全は保証する。危険な目には遭わせないし、何不自由ない暮らしが送れるよう手筈も整えてある。君さえ承諾してくれれば、今すぐにでも構成員は君にこうべを垂れて忠誠を誓うだろう。この国の王は君なんだ」

ルートは睫毛を伏せた。

――軍に入って殺されるか、インバースへの加入を断って殺されるか。

どちらにせよ、選択肢はさほど多くない。

だったら。
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