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終章
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叙勲を受ける四名は謁見の間中央に立ち、周囲には貴族を中心とした参列者がずらりと居並び、穴が開くほど彼らを凝視していた。
中央玉座はいまだ空だが、そこに座するは『エスペラントの獅子』と綽名される若き皇帝、ウラディミール・エフ・エスペラント十九世。
その左に軍機大臣、アレクシス・ド・モルガン。
右にはエスペラント軍総帥、ジェームズ・アヴァロンの予定であった。
謁見の間に入場した四人は、矢のように突き刺さる視線の洗礼を受けた。
「あれが首席の少年。何て美しいの。白磁の肌に、紫水晶のような瞳、それに漆黒の髪。人形にして飾っておきたいくらい」
「モルガン家の御子息も、ご立派になられたことだ」
「隣にいる赤毛の少年、あれはフラクタル家の跡継ぎだな。鋼鉄の忠誠心と呼ばれたアーサー殿と比べ、浮ついた噂が多いが」
「それより見て。あの小さな男の子、まるで天使みたい。本当に士官なんて務まるのかしら」
不躾な注目と、無秩序な噂話が乱れ飛ぶ。
その後にルベリエが入場し、末席に並ぶと、今度は一斉に視線がそちらに注がれる。
「この度、ルベリエ様は功を認められて中佐に任じられたとか」
「二階級特進?殉職でもないのに、一体何をしたのかね」
「鳴り物入りで入軍したのが十三年ほど前でしたか。尉官止まりかと言われていたのに、驚いたこと」
「中佐は最年少じゃないか?」
「いやいや、あの方がいますから。ほら、シャルロック卿」
「ああ……確かピンカートン中将のところの秘蔵っ子の」
送られる視線の熱とざわめきの大きさが、人気の高さをあらわしている。
新米士官に負けず劣らず、ルベリエは彼らの注目の的であるらしい。
「ねえ、ルート」
フィンは列から外れてルートの袖を引く。
「俺、お腹すいちゃったよ」
その声が場違いに大きかったため、周囲から失笑が漏れる。
「フィン」
ユリシスがフィンの口を手で押さえ、耳打ちする。
「頼むよ。少しの間だけ我慢してくれ」
「しまらねえやつだな、全く」
両腕を頭の後ろに回し、ちゃらんぽらんな姿勢でレッドは言う。
「陛下のご入場です」
合図があった途端、あたりは水を打ったように静まり返った。
観音開きの扉が開かれ、エスペラント皇帝ウラディミール、軍機大臣アレクシス、アヴァロン総帥らが入場する。
全員が粛然とこうべを垂れる中、フィンだけがエスペラント皇帝の姿を憚らず直視していた。
しっかりと目が合い、どちらも逸らさずに見つめ合う。
たっぷり三秒ほどの間があった。
ウラディミールは薄く微笑むと、「顔を上げよ」とよく通る声で命じた。
中央玉座はいまだ空だが、そこに座するは『エスペラントの獅子』と綽名される若き皇帝、ウラディミール・エフ・エスペラント十九世。
その左に軍機大臣、アレクシス・ド・モルガン。
右にはエスペラント軍総帥、ジェームズ・アヴァロンの予定であった。
謁見の間に入場した四人は、矢のように突き刺さる視線の洗礼を受けた。
「あれが首席の少年。何て美しいの。白磁の肌に、紫水晶のような瞳、それに漆黒の髪。人形にして飾っておきたいくらい」
「モルガン家の御子息も、ご立派になられたことだ」
「隣にいる赤毛の少年、あれはフラクタル家の跡継ぎだな。鋼鉄の忠誠心と呼ばれたアーサー殿と比べ、浮ついた噂が多いが」
「それより見て。あの小さな男の子、まるで天使みたい。本当に士官なんて務まるのかしら」
不躾な注目と、無秩序な噂話が乱れ飛ぶ。
その後にルベリエが入場し、末席に並ぶと、今度は一斉に視線がそちらに注がれる。
「この度、ルベリエ様は功を認められて中佐に任じられたとか」
「二階級特進?殉職でもないのに、一体何をしたのかね」
「鳴り物入りで入軍したのが十三年ほど前でしたか。尉官止まりかと言われていたのに、驚いたこと」
「中佐は最年少じゃないか?」
「いやいや、あの方がいますから。ほら、シャルロック卿」
「ああ……確かピンカートン中将のところの秘蔵っ子の」
送られる視線の熱とざわめきの大きさが、人気の高さをあらわしている。
新米士官に負けず劣らず、ルベリエは彼らの注目の的であるらしい。
「ねえ、ルート」
フィンは列から外れてルートの袖を引く。
「俺、お腹すいちゃったよ」
その声が場違いに大きかったため、周囲から失笑が漏れる。
「フィン」
ユリシスがフィンの口を手で押さえ、耳打ちする。
「頼むよ。少しの間だけ我慢してくれ」
「しまらねえやつだな、全く」
両腕を頭の後ろに回し、ちゃらんぽらんな姿勢でレッドは言う。
「陛下のご入場です」
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観音開きの扉が開かれ、エスペラント皇帝ウラディミール、軍機大臣アレクシス、アヴァロン総帥らが入場する。
全員が粛然とこうべを垂れる中、フィンだけがエスペラント皇帝の姿を憚らず直視していた。
しっかりと目が合い、どちらも逸らさずに見つめ合う。
たっぷり三秒ほどの間があった。
ウラディミールは薄く微笑むと、「顔を上げよ」とよく通る声で命じた。
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