護国の鳥

凪子

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終章

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「何が正しくて何が間違っているのか、俺には分からない。
十年前の反乱や、今回のラグランジュやインバースの連中にも、それなりの覚悟や信念があっただろう。軍部が腐敗しているというのも事実だ。
ただ、あまりにも性急に結果を求めすぎた。一年やそこらで変えられるほど、軍は甘くない。

軍部は軍部で守ってきた正義があり、行うべき務めがある。例えば十年前の反乱が成功していたら、今この国がよくなっていたかというと、そうは思えない。恐らく何百万という人間が殺され、路頭に迷い、治安は乱れ、経済も司法も物流も全てがパンクしていただろう」

訥々と語る表情に気負いは感じられない。

「反乱を起こした側が正しかったのか、鎮圧した側が正しかったのか。ディンキン族を殲滅した側が正しかったのか、殲滅された側が正しかったのか。どちらにせよ軍は、そう簡単に非を認めはしない。一度でき上がった体制、脈々と受け継がれてきたものを変えれば、積み上げてきた歴史を冒涜することになると固く信じている」

どっちもどっちだな、とルベリエは言葉を締めくくった。

「じゃあ今回の件も、真相は闇の中ですか」

ユリシスの非難めいた問いかけにレッドが苦笑し、宥めるように肩に手を置く。

「教官は悔しくないんですか。たくさんの仲間や生徒が死んで、ラグランジュ先生に裏切られて。なのに、誰にも知られず葬り去られてしまうなんて」

ユリシスの目の端がうっすら赤く染まっている。

ルベリエは目を細めた。

「死んでしまった彼らも教官も、僕らのために戦ってくれた英雄です。それを」

「いいんだ」

ルベリエは穏やかに遮った。

「何も知らなかった士官候補生は気の毒だが、俺たちは皆それを覚悟していた」

ルートがルベリエを見ると、彼は小さく頷いた。

「ともかく、今回の事件でよく分かった。軍上層部にもかなりの数、インバースの息のかかった残党がいる。そうでなければ、これほどあいつの思惑どおりに話が進むはずがない」

ルベリエは吹っ切れたような面差しで、

「俺は軍部の闇と戦う覚悟を決めた。ぬるま湯に浸かって、馬鹿の一つ覚えみたいに絶対的恒久平和ばかり唱え続けるボケ老人どもを、一人残らず追い払ってやる。で、お前らはどうする?」

「どうするもこうするも、ここまで来たら戻れっこないでしょう。教官も人が悪いな。俺たちを集めて、わざわざ試すようなこと言って」

レッドは芝居がかった仕草で肩をすくめた。

「僕の目的は最初から一つです」

ユリシスは凛然と言う。

「軍に入って、軍を内部から変えること。それが、死んでしまった人たちのために僕ができる唯一のことです。迷いはありません」

そうか、とルベリエは頷く。

そして真っすぐに向き直り、最後の一人の答えを待った。






















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