護国の鳥

凪子

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終章

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「軍部はインフィニティの暴走を食い止めるため、あいつの記憶を奪い、友人を作らせて、情の力で縛りつけようとした。そして、あわよくば力を制御し、兵器として利用することも考えていた。
教官として赴任した俺たちは、全員がそのことを知らされていた」

「じゃあ、システィマとかいう奴の存在は知っていたんですか」

レッドが問いかけると、

「いや。軍も恐らく把握できていないだろう。次元の呪いや契約のことも、あのときに言われて初めて知った」

ルベリエは淀みなく答えたが、目の端に躊躇うような影がかすめたのをルートは見逃さなかった。

不安?懸念?それとも――憂慮だろうか。

「これからフィンはどうなるんですか」

ユリシスが言った。

「さあな。だが、殺されることはない。あいつは死ねないんだ」

ルベリエの言葉の持つ響きに、ルートは身震いした。

室内に沈黙が落ちると、夜の底で鳴く鳥の歌が聞こえてくる。

「『契約者』がいない限り、インフィニティを殺せない。遅かれ早かれ、軍部はそのことに気づくだろう」

ルベリエは声を潜めてルートに語りかけた。

「今の状態でお前を殺せば、インフィニティを殺すことのできる可能性はゼロになる。軍部は命がけでお前を守らざるを得ない」

「そして、『契約者』の名において、あいつを殺せと命じるわけですね」

ルートは落ちついた様子で言った。

「そうだ」

短くルベリエは応えた。

「どちらにせよ、お前たちにとって互いが切り札になる。二人とも揃っていれば殺されることはない。だが、ディンキン族の生き残りとインバースの首領の息子を、軍部が生かしておきたいと思うはずがない。
お前たちの存在は、どう転んでも危険分子でしかないのだから」

「おチビの力を使うのも止められるのも、ルート姫だけってことか」

レッドはやれやれと溜息をついた。

「大変なことになっちまったな、全く」

「父は」

と言いかけ、ユリシスは身を乗り出していたことに気づき、居ずまいを正した。

「軍上層部は、今回の件やディンキン族のことを明るみにするつもりはないのでしょうか。非を認めるべきところは認め、正すべきところは正していかなければ、この国は……」

言葉が続かず、眉を寄せて唇を噛みしめる。

その様子を見つめていたルベリエが、ゆっくりと口を開いた。
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