護国の鳥

凪子

文字の大きさ
171 / 174
終章

169

しおりを挟む
四人は再び打ち揃うと、皇帝に向かって一礼する。

するとウラディミールが前触れなく、

「護国の鳥よ、なんじが成すべき務めを果たせ」

その瞬間、室内が最も大きくざわめいた。

「陛下」

傍に控えていた家臣の一人が、やんわりとした目つきで咎める。

皇帝が公の場で発する言葉は、しきたりによって一言一句全て決まっている。

叙任式で新人士官に向かって直接お言葉を賜るのは、エスペラント軍創始以来、初めてのことであった。

前代未聞の騒ぎに、アヴァロン総帥は愉快そうに口髭を撫でて呟く。

「面白そうな奴らじゃねえの」

耳にした言葉が信じられず、ユリシスは礼儀も忘れてぽかんと皇帝を見上げている。

レッドも驚き、動揺しているようだった。

ルートは冷ややかなほど落ちついて事のなりゆきを見つめ、フィンだけが異常事態に気づかずにこにこしている。

「これをもって、叙任の儀を終了する」

アレクシスの言葉の叱責するような強さに気づき、ユリシスは我に返って敬礼した。

合わせて、ルートとレッドも敬礼する。

ともかく儀式を終えたのだから、速やかにこの場を去らねばならない。

ルートを先頭として四人は謁見の間を辞し、ユリシスは決して振り向くことはできずに父を思った。

父と、父を越えて果てしなく広がっている、進むべき未来を。

辿りつけるかどうか分からなくとも、自分たちはもう、境界線の向こう側へ走り出してしまった。

吹き抜ける風を手のひらに握りしめ、ユリシスは小さく願う。

――どうか僕ら四人の道が、いつまでも分かたれぬことを。
























しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

エレンディア王国記

火燈スズ
ファンタジー
不慮の事故で命を落とした小学校教師・大河は、 「選ばれた魂」として、奇妙な小部屋で目を覚ます。 導かれるように辿り着いたのは、 魔法と貴族が支配する、どこか現実とは異なる世界。 王家の十八男として生まれ、誰からも期待されず辺境送り―― だが、彼は諦めない。かつての教え子たちに向けて語った言葉を胸に。 「なんとかなるさ。生きてればな」 手にしたのは、心を視る目と、なかなか花開かぬ“器”。 教師として、王子として、そして何者かとして。 これは、“教える者”が世界を変えていく物語。

『まて』をやめました【完結】

かみい
恋愛
私、クラウディアという名前らしい。 朧気にある記憶は、ニホンジンという意識だけ。でも名前もな~んにも憶えていない。でもここはニホンじゃないよね。記憶がない私に周りは優しく、なくなった記憶なら新しく作ればいい。なんてポジティブな家族。そ~ねそ~よねと過ごしているうちに見たクラウディアが以前に付けていた日記。 時代錯誤な傲慢な婚約者に我慢ばかりを強いられていた生活。え~っ、そんな最低男のどこがよかったの?顔?顔なの? 超絶美形婚約者からの『まて』はもう嫌! 恋心も忘れてしまった私は、新しい人生を歩みます。 貴方以上の美人と出会って、私の今、充実、幸せです。 だから、もう縋って来ないでね。 本編、番外編含め完結しました。ありがとうございます ※小説になろうさんにも、別名で載せています

結婚前夜に婚約破棄されたけど、おかげでポイントがたまって溺愛されて最高に幸せです❤

凪子
恋愛
私はローラ・クイーンズ、16歳。前世は喪女、現世はクイーンズ公爵家の公爵令嬢です。 幼いころからの婚約者・アレックス様との結婚間近……だったのだけど、従妹のアンナにあの手この手で奪われてしまい、婚約破棄になってしまいました。 でも、大丈夫。私には秘密の『ポイント帳』があるのです! ポイントがたまると、『いいこと』がたくさん起こって……?

異世界転移したと思ったら、実は乙女ゲームの住人でした

冬野月子
恋愛
自分によく似た攻略対象がいるからと、親友に勧められて始めた乙女ゲームの世界に転移してしまった雫。 けれど実は、自分はそのゲームの世界の住人で攻略対象の妹「ロゼ」だったことを思い出した。 その世界でロゼは他の攻略対象、そしてヒロインと出会うが、そのヒロインは……。 ※小説家になろうにも投稿しています

行動あるのみです!

恋愛
※一部タイトル修正しました。 シェリ・オーンジュ公爵令嬢は、長年の婚約者レーヴが想いを寄せる名高い【聖女】と結ばれる為に身を引く決意をする。 自身の我儘のせいで好きでもない相手と婚約させられていたレーヴの為と思った行動。 これが実は勘違いだと、シェリは知らない。

緑の指を持つ娘

Moonshine
恋愛
べスは、田舎で粉ひきをして暮らしている地味な女の子、唯一の趣味は魔法使いの活躍する冒険の本を読むことくらいで、魔力もなければ学もない。ただ、ものすごく、植物を育てるのが得意な特技があった。 ある日幼馴染がべスの畑から勝手に薬草をもっていった事で、べスの静かな生活は大きくかわる・・ 俺様魔術師と、純朴な田舎の娘の異世界恋愛物語。 第1章は完結いたしました!第2章の温泉湯けむり編スタートです。 ちょっと投稿は不定期になりますが、頑張りますね。 疲れた人、癒されたい人、みんなべスの温室に遊びにきてください。温室で癒されたら、今度はベスの温泉に遊びにきてくださいね!作者と一緒に、みんなでいい温泉に入って癒されませんか?

世の中は意外と魔術で何とかなる

ものまねの実
ファンタジー
新しい人生が唐突に始まった男が一人。目覚めた場所は人のいない森の中の廃村。生きるのに精一杯で、大層な目標もない。しかしある日の出会いから物語は動き出す。 神様の土下座・謝罪もない、スキル特典もレベル制もない、転生トラックもそれほど走ってない。突然の転生に戸惑うも、前世での経験があるおかげで図太く生きられる。生きるのに『隠してたけど実は最強』も『パーティから追放されたから復讐する』とかの設定も必要ない。人はただ明日を目指して歩くだけで十分なんだ。 『王道とは歩むものではなく、その隣にある少しずれた道を歩くためのガイドにするくらいが丁度いい』 平凡な生き方をしているつもりが、結局騒ぎを起こしてしまう男の冒険譚。困ったときの魔術頼み!大丈夫、俺上手に魔術使えますから。※主人公は結構ズルをします。正々堂々がお好きな方はご注意ください。

転生ガチャで悪役令嬢になりました

みおな
恋愛
 前世で死んだと思ったら、乙女ゲームの中に転生してました。 なんていうのが、一般的だと思うのだけど。  気がついたら、神様の前に立っていました。 神様が言うには、転生先はガチャで決めるらしいです。  初めて聞きました、そんなこと。 で、なんで何度回しても、悪役令嬢としかでないんですか?

処理中です...